(1)はじめに

ゲームマスター「では、素人だけによるTRPGを試しにやってみようか」
一同「うぃーす」

 今回は、プレイヤーを全員初心者にしてセッションを執り行ってみた。とはいえ、一応彼らは
どんなTRPGがどんなものかは知っている。そして、興味も持ってくれている。彼らをいかにし
てこの世界に引きずり込むかは、TRPGの伝道師としての腕の見せ所。
 今回はシステムをオーソドックスに旧ロードス島戦記にした。また、シナリオも簡素にするた
め、ルールブックに付属品を用いた。あとは、ゲームマスターとしての裁き具合が全てである。

ゲームマスター(以下GMと略す)「さて…(キャラシーを見回して)ドワーフのウォリアー、ハーフ
エルフのスカウトは分かるが、どうしてエルフが坊主(プリースとのこと)なわけだ?」

 森の住人エルフは、たいていは僧侶にならない。ゲームシステムによっては僧侶になれなか
ったりする。本当はロードス島戦記では僧侶を選択できなかったするんだが、今回は素人衆だ
けなので、そういう細かいルールを使用していない。

GM「まあいいけどね。(地図を出して)はい、これがロードス島の地図です。君たちがいるのは
この北東にある、アラニアと呼ばれる国。千年王国とも呼ばれ、歴史の長い国です。この国の
端に、ノービスと呼ばれるアラニア第二の都市がありますが、ここにみんな集まっているわけで
す」
一同「ふむふむ」
GM「で、このノービスの一角に〈黄金のサンマ〉亭と呼ばれる宿屋がありまして、ここに皆集ま
っています。『仕事がないかな〜』とばかりに集まっているわけですね」
一同「ふ〜ん」
GM「と、いうところで話が始まりますが、皆初心者だから宿屋の様子とか、わからんと思うの
で、説明しておきましょう。まず、この世界の宿屋という奴ですが、一階が酒場で二階が宿屋と
いう構造です。それで、ここで仕事を紹介してもらうわけね。酒場のマスターとかに仕事を紹介
してもらうわけだ。それで、君たちがこの宿屋に入った所から話が始まるわけだよ。では、自己
紹介してくれ」
プレイヤーA「ええと、ドワーフのウォリアーで名前はボルド。Lvが1なのは言うまでもない」
GM「性格とか決めている?」
ボルド「う〜ん、たぶん、穏やかな性格じゃないかな(笑)」
GM「なるほどでは、次いこうか」
プレイヤーB「エルフ男のプリーストで、名前はメバエです」
GM「なぜ、エルフなのにプリーストなわけ?魔術師じゃないの?」
メバエ「いや、プリーストが好きだからプリーストになったんです」
ボルド「きっと始めにプリーストになることを決めて、キャラの絵まで描いたら、なんとなく種族を
エルフにしたいと思ったんだろう」
メバエ「そうそう」
GM「…まあ、いいけれどさ」
ボルド「絵の方がキャラより先だったわけだな」
GM「じゃあ、次、ラスト」
プレイヤーC「ハーフエルフのスカウトでマレイ〜ン」
ボルド「イの発音が伸びたな」
GM「それはエルフ訛りかい?」
ボルド「こ、細かい…」
GM「まあ、そういう所から雰囲気を出そうよ。では、三人、〈黄金のサンマ〉亭でたむろしている
所から始まる。では、好きにアクションを起こしてくれ」
一同「え?」
ボルド「アクションを起こしてくれって言われても、どうすればいい?」
GM「普通の生活で、君たちがやっているように行動してくれていいよ」
ボルド「なら、まずは宿取りかな」
GM「金持ってんの?」
ボルド「あ…ないや。あと20ゴールドだ」
GM「じゃあ、宿屋くらいは泊まれるよ」
メバエ「いきなり金を使い果してしまうのもどうかと思うけれど」
ボルド「なら、とりあえずは仕事探しかな」
マレイン「仕事探しだ〜」
GM「どうやって仕事探すの?」
ボルド「酒場の主人に聞いてみる」
GM「誰が聞くの?」
ボルド「あ、言っておくけれど私はあまり喋らんよ。メバエ、話通じそうだからお前が行って」
メバエ「え?俺?」
マレイン「オレ〜が話し掛けるよ」
GM「では、マレインが話し掛けるのね。では、〈黄金のサンマ〉亭のマスターは、赤黒い顔がテ
カテカとしたドワーフです」
一同「うわ〜」
GM「その気色悪い顔をマスターは近付けて『なんじゃい?』と言ってくるよ」
マレイン「あの〜、仕事を」
GM「『仕事?あるぞ』と言ってマスターはカウンターの下から貼り紙を出してきます。『今貼ろう
と思っていた所だ。丁度よかったな』」
ボルド「エルフお断わりとか書いてない?(笑)」
GM「いや、それは書いてないね。書いてあることはこうです。『信頼できる冒険者急募。食事
付、高給保障。ブルーノ男爵』」
マレイン「ブルーノ男爵?」
ボルド「なんか名前が気になるな」
GM「『もし、募集に応じるなら、男爵の屋敷に行けばいいぞ』」
マレイン「男爵のお家はどこ〜?」
GM「では、マスターが教えてくれる。ノービスの街の一角に、大きな屋敷を構えて住んでいる
ね」
マレイン「よ〜し、行こう」
GM「さっきから黙っているエルフはオッケーなの?」
ボルド「マレインが決めちゃったよ」
メバエ「うん、任せる(笑)」
GM「ではマスターが『なら、引き受けるでいいんだな。あ〜あ、せっかく作ったはり紙が無駄に
なった』とちょっと愚痴る」
一同(笑)
ボルド「じゃあ、行こうか」
マレイン「行くって…やっぱり、移動シーンとかもあるの?」
GM「ああ、それはカッ飛ばせるよ。では、皆は男爵の屋敷に向かうんだね」

(2)そして男爵の家

GM「街の南の方に男爵の屋敷はあるよ。煉瓦造りでいかにも貴族の家って感じだね。で、門
の所に護衛の兵士が二人立っている」
マレイン「俺の矢で殺る…(笑)」
ボルド「止めて。マジで殺ることになっちゃうから(苦笑)」
メバエ「おお、そこで、兵士に襲いかかるマレインをうち等が止めて、礼金をせしめるという
(笑)」
マレイン「お、俺が駄目じゃん」
GM「まあ、常識の範囲で行動してよ。普通に話し掛けるのが当然だと思うけれど」
マレイン「じゃあ、兵士に向かって『仕事で来た〜』」
ボルド「酒場で仕事募集の紙を見て来たんだけれど」
GM「『なるほど。お前等はそうだと分かったが、そこに一匹いるエルフは何だ?』」
メバエ「(甲高い声で)〜〜〜〜♪」
GM「(笑)」
ボルド「とりあえずマレインを指差しておこう」
マレイン「あ〜オレたち、仕事を受けに来た〜」
GM「『なんでたったそれだけの事を言うのに、お前等そんなに時間がかかる?まあ、いい。入
れ』」
ボルド「入ろう入ろう」
GM「入るの?では兵士がこういうぞ。『正面から行くな。裏口から入れ』と」
ボルド「裏口から行くか」
GM「裏口に回ると、『御用の方は御入りください』と書いたドアがある」
マレイン&メバエ「入ろう」
ボルド「おい、ノックとかあるだろう」
GM「ノックする?」
マレイン「いや、普通に入ろう」
GM「では、普通に入ろうとすると、ドアがガチャリと開いて、君たちと同じような格好をしたパー
ティーが、ガックリと肩を落として屋敷から出てくるぞ」
ボルド「あ、駄目だったらしいな」
GM「さて、ここで三人とも、盗賊スキルのチェックをしてみてくれ」

 ここでいよいよ、初めての判定が入る。ロードス島戦記の判定はとっても簡単。d100ダイス
でスキルの数値以下を出せばよいのである。ここではマレインのみ成功。

GM「では、すれ違った三人が、ボソリと『あ〜あ、駄目だったか。今夜の寝床と食い扶持はど
うしよう』と言ったのがマレインにのみ聞こえる」
マレイン「(笑)」
ボルド「なるほど、そういうお楽しみもありか(笑)!」
GM「そういうこと。こういう微妙なのがTRPGは楽しいのだよ。さて、どうする?」
マレイン「ブルーさんに会う〜」
GM「ブルーじゃない。ブルーノだっつーの(笑)。では、そうやっていると奥から執事のような人
が現われて来て『ご主人の名前はブルーノです。ブルーではありません』とか言うよ」
ボルド「いきなり怒られたぞ。仕事が受けられなくなるかも。あ、ひょっとして、仕事が受けられ
るかどうかもサイコロで決めるとか?」
GM「いや、今回は違うよ(そういうケースもあるけれどね)。執事さんは君たちを見ると『ふむ、
ドワーフにハーフエルフにエルフか。よろしい、君たちを採用しましょう』と言う」
一同「え〜!」
GM「『あなた方は人間でないですからね。採用しましょう。おっと、申し遅れました。私、ブルー
ノ男爵様の執事を務めているドルーンと申します』」
マレイン「ドルーン?」
GM「忘れないようにその辺にメモっておいてよ」

 TRPGでは、得た情報はキャラクターシートの端にでもメモッておくのが忘れなくて良いです。

GM「では、ドルーンさんは仕事の説明を始めます。『実は男爵様は最近結婚なさったのです
が、その奥様の護衛をして欲しいのです』」
一同「ほ〜お」
GM「『実は、この国で反乱が起きまして、男爵様は反乱軍を討伐するために戦場に赴くことに
なったのです』」
マレイン「不安な仕事だ〜」
ボルド「反乱軍の人が奥さんを掠うかもしれないわけだ」
GM「『そうです。また、奥様はたいへんお美しい方でございまして、そのため男爵様は心から
奥様のことを心配されています』」
ボルド「あ〜、女たらしがパーティーにおらんのが残念だ」
GM「『幸い、あなた方は人間はないので、奥様に不埒なことをする気遣いもございません。ぜ
ひ、あなた方に護衛をお願いしたいわけです。あなた方を雇いたい期間は、男爵様が戦場に
行って帰ってくるまでの一ヵ月間』」
ボルド「その間は飯が食えると」
GM「ちなみに報酬は一日につき20」
ボルド「一人20?」
GM「そうだね」
一同「おお〜!」
ボルド「一月ってことは六千貯まる?(←違うって)あ、六百か」
GM「『また、奥様の身に万一のことが起こって掠われた場合、あなた方には取り戻しに行って
もらわなければなりませんが、その場合は別に料金をお支払いします』」
ボルド「これは、まず掠わせておいて…」
マレイン「掠わすんか〜〜!」
ボルド「おっと、これ、内輪の話ね。ん、ま、私は腹黒いけれど、そういうキャラではないからね」
GM「ところで、エルフはさっきから黙っているけれど、何かアクション起こさないの?」
メバエ「いや、することもないし。話もふってくれないし」
GM「こういうとこでは自分からアクションを起こした方がいいよ」

 はっきりいってTRPGは「行動したもん勝ち」である。もっとも、あまり非常識でない行動であ
るのは当然だが。まあ、焦るな。ボチボチでいいから慣れてくれりゃいいさ。
 執事の、仕事内容及び、報酬に関しての説明も終わり、いよいよ一行は本格的に仕事を引
き受けることになった。

(3)謡うエルフ

GM「執事さんは『今晩、旦那様が戦場に出られる前の晩餐会を開きますので、どうぞ参加して
存分に飲み食いしてください』と言うぞ」
メバエ「分かりました。では、その席で私が謡いましょう」
GM「『おお、謡ってくださいますか。それはそれは楽しみです』」
メバエ「つきましては、報酬の件ですが」
ボルド&マレイン「(笑)」
GM「執事さんは渋い顔をして『報酬ですか。それはまあ、貴方が謡った結果に応じてお支払い
しましょう』と」
ボルド「ダイスの結果だな(笑)」
GM「まあ。、そういうことになるかな。それはさておき、特に何もしないなら晩餐会へと時間が
過ぎるけれどね。いいかい?」
一同「(うなづく)」
GM「では、男爵の屋敷でささやかながら晩餐会が始まります。始まってしばらくすると、頭がハ
ゲかかった五十歳くらいのオッサンが『おお、君たちが我が妻の護衛を引き受けてくれた者た
ちか。私がブルーノだ』と。ちなみに彼は奥さんを後に連れています。男爵は妻の肩を抱いて
『我が妻アルダだ』と紹介する」
一同「ふむふむ」
GM「そして男爵はメバエの方を向くと、『ところで君、この晩餐会のために歌を謡ってくれると
聞いたが』」
メバエ「ええ、では謡いましょう」
GM「『では、謡ってもらおうか』」
メバエ「あ〜地球の裏側〜(しばし続く甲高いメロデー)♪」
GM「では、上手く謡えたか判定だ。ここは集中力でチェックしてみてくれ」
メバエ「(ころころ)ふう、成功」
GM「では男爵が『なかなかのものだな』と言って、財布から金貨を9枚出してくる。『これで、我
が妻も、私が居ない間淋しさを紛らわすことができるだろう』」
ボルド「なにか芸があれば私もやってみたい」
GM「なにかあるの?」
マレイン「ふ〜、頭の上にリンゴを乗せて撃ち抜きましょ〜」
GM「誰の頭の上によ?」
マレイン「ドワーフ、ドワーフ〜」
ボルド「私かよ!」
一同(笑)
GM「なら、射撃でチェックしてみてくれ。攻撃スキルだね。外れたらドワーフに当たるぞ」
マレイン「(ころころ)や〜!」
GM「ああ、外れたな…矢はリンゴならずドワーフに当たるぞ(苦笑)」

 こうしてマレインとボルドの芸は失敗し、ボルドは矢を受けて二点のダメージを受けた。何を
やっていると突っ込みたい所だが、かなりプレイにも慣れてきたような三人である。

GM「男爵は奥さんの肩を抱いて『ははは、なかなか面白い奴らじゃないか、お前』と言う。奥さ
んは二十歳位の若さなんだが、オッサンにしがみついて『そうよね、あなた』とかベタベタしてい
ます」
一同「う〜ん」
ボルド「取り敢えず、取っておけるだけ食料を確保しておこう。食い扶持がなくなったら困るし。
日持ちの良さそうなものを選んで持ち帰ろう」
GM「取り敢えず、ボチボチ晩餐会も終わるよ。そして、君たちはそれぞれ、割り当てられた部
屋へと引き取るわけだ。まだ、何かアクションを起こすかい?」
一同「…」
GM「では、そのまま次の朝まで進むよ」

 こうして依頼人との顔合わせも終わった。翌日から、いよいよ任務の護衛開始である。

(4) 護衛開始

GM「では翌朝になりました。男爵は軍勢を引き連れて戦場に向かいます。奥さんは『うう…あ
なた…』とばかりにハンカチで涙を拭っています」
マレイン「よしっ、男爵を追おう!」
ボルド「違うって(苦笑)。いきなりパーティー分裂してどうする」
GM「そして、君たちと奥さんと執事と、何人かの召使が後に残されたわけだ。それでだな、こ
のノービスの街では危険かもしれないので、ここから少し離れた山の方にある男爵の別荘で、
戦争が終わるのを待つことになったのだ。奥さんと執事と召使は馬車に乗って、君たちは馬で
現地に向かうことになる」
ボルド「私は馬に乗れるのか?」
GM「まあ、ドワーフはロバに乗るかもしれん(笑)。エルフはどうする?」
メバエ「俺は歩く」
ボルド「あっ、わざわざ聞くってことは、落馬イベントとかがあるのかも…」
GM「う〜ん、残念。半日経つと無事に別荘に到着するよ」
メバエ「え〜、何も起こらないなら俺も馬に乗るよ」
GM「おっと、そうはいかない。こういう風に深読みした結果、損をするのもTRPGの魅力なんだ
な。したがってメバエはここまで徒歩で来たのだよ。さて、マップを書くと、こういう風に男爵の別
荘があるわけだ。さて、屋敷の人員配置だが」

 GMは屋敷の中に人員を配置する。屋敷は手狭で、西のブロックに奥さんと召使。東のブロ
ックに執事と一行。北のブロックは倉庫という簡単な作りである。

GM「執事さんが君たちに指示を出すよ。まず、基本的に奥さんはこの部屋から出ない。何か
あるとマズイからね。で、食事の世話なんかは召使が行なう。奥さんの部屋の鍵は執事のドル
ーンさんが持っている」
ボルド「メバエ、憶えておいてくれ」
メバエ「へ〜い」
GM「君たちの具体的な任務は、建物の内外をパトロールすることだ」
メバエ「ずっとアルダと一緒にいればいいんじゃないの?」
GM「奥さんは一人にしておかないといけないよ」
メバエ「まあ、これで一日20になるならいいか」
マレイン「と、なれば、最後の最後で…フッフッ…(←なにか不穏なことを考えているらしい)」

 マレインの、何か妙な笑いもあってGMとしては気になるが、皆もボチボチ慣れてきて、動き
に積極性が出てきた。
 三人は、それぞれが屋敷の各場所に付き、交替でアチコチを見回ることになった。

GM「では一日目(ころころ)。うん、何も起こらなかったので20もらえます」
マレイン「あ、そうか。もらえるんだ〜」
GM「(ころころ)二日目も何も起こらなかった。20もらえます」
マレイン「また20増えて、これで40増えて〜」
GM「何かしたいことがあったら、提案してくれていよ」
メバエ「じゃあ、召使と話そう」

 前半戦。無口だったメバエが、ここで行動にうって出た。この頃になると、随分と皆の動きも
なめらかになってきていて、GMとしても少し面白さが出てきた。

(5)さあ、聞き込みだ!

GM「メバエは召使と話すんだね。では、召使の頭が、『何の御用ですか?』と聞いてくるよ」
メバエ「取り敢えず、アルダさんと執事の関係を聞きたい」
GM「では、召使が話してくれる。まず、執事さんは長年男爵家に仕えた忠実な人であるという
こと。奥さんと執事さんには特に接点はない。奥さんはつい最近、ブルーノ男爵と結婚した、新
婚ホヤホヤということなどが分かる」
ボルド「奥さん本人が怪しい!」
マレイン「ボ、ボルド、それって〜」
メバエ「やはり、結婚は金目的かな?」
GM「『とんでもございません!奥様は男爵様を本気で愛していらっしゃいます。何しろそのた
めに、婚約者を捨ててまで、男爵様と結婚されたほどですから』と召使が言う」
メバエ「その婚約者はどうなった?」
GM「『薄汚い流れ者の騎士でした。奥様に捨てられたことがわかると、どこかに消えてしまい
ましたけれども』」
メバエ「と、なると、内部での確執ではないってわけか」
GM「どうする、?まだ何か聞く?」
メバエ「いや、取り敢えず今回はこれくらいでいいや」

 一応、初めての聞き込みも終わって、その後は時間が過ぎる。二日、三日と過ぎていき、六
日目に到達。随分懐も暖かくなってきたが、何も起こらず暇である。

ボルド「散策に出掛けてよろしいか?」
GM「どうぞ。どこに行く?」
ボルド「う〜ん、倉庫!」
GM「では、ボルドは倉庫に入った。倉庫には色々と家財道具が仕舞ってあるよ」
ボルド「家財道具か…(変わったところがなくて困惑)」
GM「そうだな。倉庫に入ったら、ボルドは魔術スキルでチェックしてみて」
ボルド「ま、魔術スキル!そんなの、私、全然ないぞ。(ころころ)全然駄目…」
GM「では、倉庫の床下に違和感を感じたけれど、その違和感が何かはわからない」
ボルド「あ…床下に何かあるんだな。ここは魔術スキルが高い人を呼ぼう」
メバエ「じゃあ、俺が行こう」
GM「では、チェックしてみて」
メバエ「(ころころ)あ〜、駄目だ」
ボルド「でも、絶対ここには何かあるぞ」
GM「あのね、失敗した行為は、【集中力】を使えば成功に変えられるよ」
ボルド「どういうこと?」
GM「つまり、集中力チェックに成功したら、失敗が成功に変えられるわけ。ただ、集中力は一
日にLvの回数しか使えないけれどね。今は1Lvだから、一日に一回だね」
メバエ「では、早速使おう。(ころころ)成功だ!」
GM「では、メバエは気付く。どうもこの屋敷の周囲で、土の精霊の様子がおかしい気がする」
メバエ「土の精霊?」
GM「土の精霊はノームと呼ばれる小人さんだ。その様子がおかしい気がする」
メバエ「俺にノームは見える?」
GM「残念ながら、このパーティーにはシャーマンがいないから見えない」
マレイン「あ〜、精霊使い〜」
ボルド「めっちゃいない!」
マレイン「シャーマン、ちょ〜だいよ〜(←無茶言うな)」

 こうして、微かな異常に気付いたものの、為す術なし。そうしているうちに六日目も終わって七
日目に入る。

ボルド「どうも、なにか色々とやった方が楽しそうだ」
マレイン「俺、外に出る〜」
ボルド「私も、見回りかな」
メバエ「オレは執事の部屋に行こう」
GM「では、執事の部屋に付いた」
メバエ「執事さん、アルダさんの様子がみたいので、鍵を貸してもらえませんか?」
GM「『奥様ですか?』と執事。ではそこで、メバエは、盗賊スキルにプラス50してチェックして
みて」
メバエ「プラス50も?」
GM「つまり、これは簡単な行動というわけだよ」
メバエ「なるほど(ころころ)。成功!」
GM「まあ、当然だよね(笑)。では、『奥さんの様子を』という言葉を聞いた瞬間、執事の顔が
一瞬青ざめたような気がする。『奥様の様子を、ですか?』」
マレイン「うひょょ〜」
メバエ「まあ、奥さんに歌を聞かせるという仕事もあるしね」
GM「では、執事さんは『ちょっと待ってください』と言ってドカドカと部屋を出ていく。しばらくする
と帰ってきて、『どうぞ、奥様の部屋へ』と君たちを案内するよ」
メバエ「なら、行こう」
GM「奥さんは部屋の奥で、椅子に腰掛けているよ。執事さんが『どうぞ、歌ってください』とメバ
エに言う」
メバエ「じゃあ…(しばし思考する)…執事さんが居ると恥ずかしいですから、奥様と二人きりに
させていただけませんか?」
GM「『とんでもございません。私には奥様を見守るという大事な使命がございます』」
メバエ「仕方ないな。なら、普通に歌おうか」
GM「歌うんだね。そうだな…ここはちょっと魔術スキルにプラス20でチェックしてみて」
メバエ「いやっ(ころころ)…99!失敗だ!」
ボルド「集中力使えばどうよ?あれから日が変わったから使えるはずだよ」
メバエ「おっ!そうだ!(ころころ)成功!」
ボルド「集中力って、使いどころが大事だな(←その通りです)」
GM「ではメバエは、奥さんの口からボソリと何か人の名前が聞こえたような気がした」
メバエ「おおっ!」
ボルド「別れた彼氏の名前じゃないか?」
GM「では、今度はその名前が聞こえたかどうか、盗賊スキルでチェックしてみて。修正はナシ
ね」
メバエ「え、え〜(←プリーストは盗賊スキルが目茶苦茶悪い)。(ころころ)おっ、成功」
GM「成功したの。すごいな。では、奥さんの口から『リチャードソン…』という名前が出たのが
聞こえる。そこでメバエの歌も終わり、執事さんが『もう、よろしいでございましょう』と君を追い
立てる」
メバエ「じゃあ、これで終わりにするけれど、その前に、今回歌った代金をください」
一同「(爆笑)」

 こうして、セコくお金を手に入れ、情報も手に入れたメバエ。そして彼らの聞き込みはまだま
だ続く。

ボルド「召使の部屋に行ってみよう」
GM「では召使の一人が『なんの用、ドワーフ?』と聞く」
ボルド「いや、なにか手伝うことがないかと思って。まき割りとかの力仕事でもするよ」
GM「では、ボルドはまき割りの仕事を頼まれた。召使がチップとして金貨一枚をくれる」
ボルド「ほら、こんなに沢山まきが割れたぞ」
GM「『あらよくできたじゃない。ドワーフ』」
ボルド「ここでちょっと、アルダの昔の彼氏について聞いてみよう」
GM「では、召使はビクッとして『なんであんたがそんなこと知ってんの?』と逆に聞き返してく
る」
ボルド「あ…しまったな。う〜ん……いや、護衛の対象のことをよく知っておくのは仕事のうちだ
よ」
GM「(うまい言い訳だな)では召使は『ふ〜ん、ねぇ、知っているならちょっと聞いてよ』といって
ベラベラと喋り始めます。『そうなのよ。奥さんにはリチャードソンという格好いい彼氏がいたん
だけれど、それを捨てて、うちの、五十男でむさ苦しい男爵様と結婚よ。やっぱり、お金目当て
かしら』と。『そういえば、あのリチャードソンはどこにいっちゃったのかしら』」
ボルド「リチャードソンのことはごぞんじない?」
GM「『一度会ったことがあるけれど、最近は見ていないわ。でも、すごいいい男だった。それに
比べたらうちの男爵様と来たらブ男だし、ケチだし…』」
ボルド「(笑)な、なるほど。ありがとうございましたと言って引き取ろう」

 こうして、だいたいめぼしい情報も集め一通り行動が終わる。そういやマレインはあまり行動
してないね。

マレイン「なにもする気がおこらね〜」
ボルド「ま、殺りたきゃ、何か殺ったら」
マレイン「そ、そんな〜(笑)」

 まあ、そんな感じで時間は過ぎていく。九日目も無事に終わり、執事から当日分の日給をもら
ったその晩のことであった。

(6)事件、勃発!

GM「その晩のことだ。天候が変わったよ。雨が降ってきて次第に嵐になってきた」
ボルド「屋敷の中に入ろう(←外を見回りしていた)」
マレイン「入ろう〜(←同じく)」
ボルド「私はアルダさんの部屋の前に移動してぼんやりしていよう」
GM「あとの二人は自分の部屋?」
マレイン&メバエ「多分」
GM「では、そのまま時間が過ぎて夜半になる。ここで全員、盗賊スキルにプラス20してチェッ
クしてみて」
メバエ「(ころころ)アウト」
ボルド「(ころころ)駄目だ」
マレイン「分かった〜」
GM「ではマレインにだけ聞こえたんだけれど、アルダの部屋でドスンという物音がした気がす
る」
マレイン「え、え…し、し、執事に鍵をもらって様子を見にいく。というか、まずは執事の部屋に
行く〜(焦りまくり)」
GM「また、アルダの部屋の前にいるボルドは、魔術スキルでチェックしてみて」
ボルド「そんな…たった17しかないのに。(ころころ)おおっ!成功!」
一同「おお〜!」
GM「では、辺りの土の精霊のパワーが一瞬跳ね上がって、また元に戻ったのが分かる」
ボルド「絶対これはなにかあったぞ!」
GM「さて、そうしているうちにマレインは執事の部屋に到着した」
マレイン「お、奥さんの部屋で物音がした〜。様子がみたい〜」
GM「『な、なんですと!』と言って、執事さんは鍵を持って奥さんの部屋に向かう。ここでメバエ
は何かする?」
メバエ「オレは屋敷に不審な点がないか辺りを注意しておく」
GM「では、メバエは魔術スキルにプラス20してチェックしてみて」
メバエ「(ころころ)ああ〜駄目だ!」
ボルド「どうする?集中力使う?」
メバエ「よしっ、使おう!(ころころ)よしっ、成功」
GM「成功した?では、アルダの部屋の方から、なにやら巨大モグラが土を掘って進んだような
跡が、君の目の前を通って屋敷の北東の方へ進んでいくのが分かる」
メバエ「な、なんだ?」
ボルド「お、追う?でも、外は嵐だしな…」
メバエ「こいつに攻撃できる?進んでいくのを止めたい」
GM「攻撃は可能だけどチャンスは一度だけだよ。なら、攻撃スキルで攻撃してくれ」

 旧版のロードス島戦記では、攻撃スキルから相手の防御スキルの数値を引いた値を算出
し、d100でその数値以下を出せば攻撃は命中である。

メバエ「(ころころ)命中!」
GM「では、メバエの振り回したフレイルで、床に穴がボコッと開く」
ボルド「そして、当たったのがアルダだったら嫌だな(苦)」
GM「空いた穴から、ひらりと何か一枚のお札が飛び出します」
メバエ「なんだ?」
GM「しかしそれだけで、土を掘っている痕跡は、変化ないまま壁の方へと通り過ぎて消えた。
さて、ここで話をマレイン達の方に移すぞ」
マレイン「お、お〜?」
ボルド「私も一緒に来ているぞ」
GM「執事さんが部屋の鍵を開けて、君たちは部屋に入った。すると、部屋の真ん中に大きな
穴が空いていて、奥さんはいない」
ボルド「穴の大きさはどれくらい?」
GM「穴は小さいよ。ハーフ・エルフの大きさで、やって潜り込めるくらいだね」
マレイン「潜り込みてぇ〜!」
ボルド「穴なのに、私は役たたずか?」
マレイン「やっぱり、俺か?」
ボルド「私が入ると填まってしまうからな」
マレイン「執事さんの反応は」
GM「『うわ〜、奥様が掠われた。ここは君たちの出番だ。さあ、仕事をするんだ〜』」
マレイン「お、追うよ。俺が追おう」
GM「では、マレインが穴に近付くと、穴からピョコンと一人の小人が飛び出すよ」
ボルド「ノームか?」
GM「小人の正体を見極めるためには、魔術スキルにプラス30してチェックしてみて」
マレイン&ボルド「(ころころ)失敗!」
GM「はい、ここでメバエは同じく魔術スキルのチェックをしてみて」
メバエ「(ころころ)失敗!ここは…集中しよう。(ころころ)成功!」
GM「ではメバエは奥さんのいた部屋の方から、土の精霊の力がするのを感じた。行きたけれ
ば行ってもいいよ」
メバエ「まった。この、お札は拾えるかな?」
GM「拾いたければ拾ってもいいよ」
メバエ「では、拾った。そして行こう」
GM「では、場面はマレイン達の方へ戻る。小人の正体は結局分かっていないぞ」
マレイン「ここは集中力だ〜」
ボルド「待った!メバエが来てから、メバエに判断してもらえばいい」
メバエ「やってきた!(ころころ)わから〜ん!」
ボルド「仕方がない。私が集中力で(ころころ)!駄目だっ」
マレイン「(ころころ)オレも駄目〜」
GM「では、結局小人の正体は分からずじまい(苦笑)。そしてその小人は『なんだ、お前等、殺
してやるぞ』と言って襲いかかってくるぞ。さて、戦争だ!」

 ここで、初めての本格的な戦闘に入る。緊張する三人。

GM「まず、リーダーを決めなければならないんだが、誰がリーダーをやる?」
メバエ「そりゃ、一番頼りになる奴でしょ(と言ってボルドを指差す)」
ボルド「まあ、一応年長者ですから(←そうだったのか)」
GM「では、まずリーダーがd10ダイスを振ってもらいます。その出た数値が、モンスターの持
つイニシアチブ値より高かったら先行です。低かったら後攻なわけ。さあ、振ってみて」
ボルド「高かったらいいのか(ころころ)4!」
GM「この小人のイニシアチブ値は2しかないから、君たちの先行だ。好きに行動してよいよ」
ボルド「これって、もう、戦闘するしかないわけ?」
GM「色々試してもいいけれど、話が通じるかどうか別だよ」
メバエ「ここは手堅く、半殺しだな(笑)」
マレイン「捕まえるとかはないわけ〜?」
ボルド「取り敢えず、死なない程度にやろう。まず、私がフレイルで切り込もう」
GM「では、こっちの防御スキルは0だから、攻撃スキル値以下を出せば当たるぞ」
ボルド「それは当たる!」

 こうして、初めての戦闘が始まった。しかし、所詮小人(実はレッサーノーム)のHPは30しか
ない。しかも向こうにはウォリアーもいるのだ。戦うこと数ラウンド。ボルドの攻撃がボコボコ命
中し、レッサーノームはあっという間にボロボロになっていく。

ボルド「私は今輝いている!戦闘のプロみたいだ!」
GM「ウォリアーが戦闘のプロなのは当然だっつーの(笑)」

 そして最後はメバエの攻撃が命中し、あっさりノームは倒されてしまった。

GM「では、メバエがフレイルで小人を殴り付けると、小人は『ひょ〜』と言いながら、メバエの懐
に入っていたお札に吸い込まれていくぞ」
メバエ「???執事さん、これは、いったい?」
GM「『な、なにか分かりませんが、そのお札を見せていただけますか?』」
メバエ「いえ、これは危険な品ですから、我々がまず、よく調べてみることにします」
GM「『わ、わかりました。あ…そ、そうだ…奥様が…旦那様になんと言い訳をしたらよいか…』
といって、執事さんはヨロヨロと自分の部屋に戻っていきます」
ボルド「これはやはり、奥さんを追い掛けた方がいいかな」
メバエ「と、なると、召使達も連れていった方がいいかな。置き去りはまずいと思う。あ、そうだ、
倉庫に行ってみよう。以前感じた変な気配に変化があったかも」
GM「では、魔術スキルに20を足してチェックしてみて」
メバエ「(ころころ)よし、成功」
GM「以前にしていた気配はなくなっているよ。きっと、あの時感じた変な気配は、ノームが穴を
掘るために活動していて、その気配を感じたんだろうね」
メバエ「なるほど。じゃあ、次に召使に会ってみよう」
GM「召使は動揺しているよ。『奥様が掠われるなんて〜』」
ボルド「ここは、追うのが定石だろう」
メバエ「執事はどうしている?」
GM「ショックで執事は寝込んでしまったよ」
メバエ「追うにしても、召使たちを置いていくのは危険っぽいな。連れていこうか?」
GGM「執事は寝込んでしまったから、連れていくと物凄くお荷物になるよ。召使は『奥様を助け
るのはあなたたちの仕事でしょう』と同行を拒否するよ」
メバエ「困ったな」
ボルド「考えるのはメバエに任せた(笑)」
メバエ「いや…なんか気になるんだよね。彼らを置いておくと、また事件が起きないか心配なん
だ」
ボルド「まあ、怪しいのは確かに怪しい」
マレイン「誰か残れば?」
ボルド「誰が残る?」
メバエ「取り敢えず、オレが残っておこう」
ボルド「では、頼りになるメバエを残して、私とマレインで奥さんの後を追おう」
GM「どうやって追うの?」
ボルド「あ、そうか。じゃあ、穴が掘られた後を付けていこう」
GM「では、盗賊スキルで、修正ナシでチェックしてみて」
マレイン「(ころころ)成功〜」
ボルド「(ころころ)私も成功だ」
GM「では、次のことが分かる。この屋敷は丘の上に建っているんだが、丘の下の北東に、ぽ
っかりと穴が空いていて、犯人がここから脱出したらしいことがわかる」
マレイン「おお〜」
ボルド「更に辺りを調べてみよう」
GM「いいよ。盗賊スキルにプラス20してチェックしてみて」
ボルド「(ころころ)成功」
GM「では、穴の周囲に馬の足跡があって、それが北の方へ続いている」

 こうして、犯人の足取りはほぼ掴めた。だんだんとプレイにも慣れてきた三人である。この
後、屋敷からメバエを呼んできて、彼らは追跡に入る。
 寝込んだ執事と召使たちは一度ノービスの本宅に戻って、彼らの報告を待つこととなった。ア
ルダ救出によって特別ボーナスが出ることを期待した彼ら三人は、怒涛の勢いで馬の足跡を
追跡していくのであった。

(7)魔術師登場

GM「夜が明けて、日が変わったから、また集中力が使えるようになったよ」
ボルド「取り敢えず、金の計算だ。持ち金が200以上になったぞ。今度、買物する時は値切っ
てみよう。出来るとみたね」
GM「そういうことが出来るからTRPGは面白いんだよ。さて、追跡だが、これは馬の足跡を付
けていくことになるからちょっとむつかしい。盗賊スキルにマイナス20してチェックしてみて」
メバエ「無理!」
GM「マイナスすると0以下になっちゃう人も振ってみていいよ。05以下が出たら自動的に成功
するし、判定が失敗しても、集中力を使えば成功するから」
メバエ「あ、そうか」
マレイン「(ころころ)成功〜」
GM「では、あっさり一日目は追跡に成功して次の日になる。食料とかはちゃんと減らしておい
てね」
マレイン「追跡〜(ころころ)成功〜」
GM「また成功した?すごいな。では、二日目の暮れに、山岳地帯に到着する」
ボルド「きた〜」
GM「君たちの目の前は崖になっていて、そこに洞窟が口を開けている」
ボルド「馬は?」
GM「洞窟の入り口付近につないであるよ。じゃあ、そこで全員、魔術スキルに修正ナシでチェ
ックして」
メバエ「(ころころ)OK!」
GM「ではメバエは、ここはひょっとして、魔術師ホワイトの洞窟かもしれないと思った。魔術師
ホワイトというのはLVの高い偏屈魔術師で、変なものを作ってばかりいるのであまり評判はよ
くない。悪い人ではないらしいけれど」
ボルド「取り敢えず、追わないわけにはいかんからな。まず、馬を、洞窟の入り口から離れた所
に移動させて、それから入ろうか」
GM「なるほど。では、入ったでいいかな」
一同「うん」
GM「入ったけれど、どうする?」
マレイン「調べる、調べる〜」
GM「どの辺?」
ボルド「自分の周り当たりとか言っておけばいいんじゃないか?そうすりゃ、何かひっかかってく
れるんじゃないかな?」
GM「知恵を身につけたな(苦笑)」
ボルド「だんだん掴めてきた」
GM「調べるなら、盗賊スキルに修正ナシでやってみて」
一同「(ころころ)駄目だ〜」
GM「では、何も分からない」
ボルド「仕方がない。進もう」
GM「では、洞窟を進むとだね、人が住んでいるらしくて、壁にランプがかかっている。だから、
内部もよく見えるよ。で、しばらく行くと、ちょっとした部屋になっていて、そこは研究室みたいな
感じた。色々な品物が積んである。その中心に、片眼鏡をかけた魔術師がいる」
ボルド「あれがウォーターホワイトだな(←違うって)」
GM「魔術師は『なんだ、君たち。人の家に無断で入ってはいかんよ』と言う」
メバエ「あなたが色々なものを作っていると聞いて、ちょっと見せてもらおうと思ったんです」
GM「では『そうかそうか、ワシの研究が見たいか』と、突然ご満悦になる。『たとえば、こんなも
のがある』と彼は一本の薬瓶を出してくる」
メバエ「なんですか、これは?」
GM「『まあ、飲んでみろ』」
メバエ「じゃあ、飲んでみよう」
GM「その薬を飲むと、メバエの体はたちまち小さくなった」
メバエ「おっ?」
GM「しかし、五秒経つとあっさり元に戻った。『一瞬だけ小さくなれる薬だ。すごいだろう』」
メバエ「(呆れ気味に)すっごい感動した。皆で褒めたたえる」
GM「『ふっふっふ、これがワシの実力じゃ』」
メバエ「他にはないんですか?」
GM「『この前作ったお札はなかなか自信作だぞ』」
メバエ「お札ぁ?」
GM「『うむ、呪文を唱えると中から土の精霊が出てきて、なんでも言うことを聞いてくれる便利
なお札だ。ただ、三回使うと壊れてしまうがな』」
ボルド「そのお札が奪われて悪用されたって口かな?」
GM「さて、そこでホワイトは後側の部屋に向かって声をかける。『おい、リチャードソン。どうや
ら、この人たちは、お前を力付くでどうのこうのしようとしているわけではないらしい。出てきて
やれ』と言うぞ」
ボルド「おっ、リチャードソンが出てくるのか」
GM「すると、奥から一人の騎士が出てくる。『とうとうここまで来てしまいましたね』と困った顔を
する。ホワイトは『君たち、理由があってここまで来たんだろうが、彼にも事情があってな。取り
敢えず、リチャードソンの話を聞いてやってくれないか』と言う。聞いてあげるかい?」
メバエ「聞いてあげよう」
GM「では、リチャードソンは話しだす。『私は別に、アルダを掠いたくて掠ったわけではない。
悪いのは男爵の方なんです』」
ボルド「アルダさんはどこにいますか?出来ればこの場に連れてきて欲しいんですが」
GM「ではリチャードソンは奥の部屋に君たちを案内する。そこにはベッドがあって、そこでアル
ダさんが眠っている」
ボルド「眠っている?」

 リチャードソンの説明によると、アルダは男爵に惚れ薬を飲まされているそうなのだ。元々ア
ルダとリチャードソンは婚約をしていたのだが、アルダをものにしたいと思った男爵は惚れ薬を
使ったのだ。
 男爵が惚れ薬を使ってアルダを我がものにしたと知ったリチャードソンはホワイトに相談し
た。そして、ホワイトはノームが出てくるお札をリチャードソンに渡し、アルダを奪回させたという
わけである。

GM「『しかし、惚れ薬の解毒薬が出来なくて困っているのだ。このままではアルダは男爵に惚
れ続けたままだ』」
ボルド「う〜ん、正直、私らは男爵の依頼で動いているからな。力付くでも取り返すのが筋なん
だろうけれど」
メバエ「礼金だけもらって男爵をシバキ倒したら?」
ボルド「でも、向こうは戦力とお金を持っているからね」
GM「ホワイトは『この洞窟の中では暴れるなよ。それはワシが許さんぞ』と」
メバエ「アルダさんを取り敢えず送り返して、その後オレ達が解毒剤を調達して届けるってのは
どうだろう?」
GM「ちなみにリチャードソンは『無料で見逃してもらおうと思っていない。私に加担してくれた
ら、家宝の剣と指輪を差し上げよう』という」
メバエ「あ〜、そういうの、すごく気になる〜」
ボルド「イ●パスの魔法はないのか〜(←呪いの品と思ってんのかよ)」
GM「『また、レッサーノームを操る護符と、発動させるキーワードを教えよう』」
メバエ「ああ、オレらが持っている奴」
GM「そのお札はリチャードソンがホワイトから買ったのものだからね。それを売れば金貨二千
枚にはなる」
メバエ「二千枚!使った後でも?」
GM「いや、それは三回使うと壊れてしまう。今、一回使った状態だから、あと二回使える。した
がって二千枚。もう一度使うと価値は千枚に落ちる」
ボルド「な、奥さんを返してから、もう一度そのお札で奥さんを奪回すればどう?それだと私らも
依頼を果たせる」
メバエ「お札が売れるのか」
GM「しかし、お札をもらえるのは、君たちがリチャードソンに協力する場合のみだ」
ボルド「それは、ここで彼らを見逃せってこと?」
GM「『もう一つ、解毒剤を作るのに協力して欲しい』とリチャードソン」
ボルド「正直、男爵を裏切ると、私らの信用問題にかかわってくるんだよな」
GM「『アルダの解毒が成功したら、私はこの国を出て、どこか他で暮らす。君たちはアルダ奪
還に失敗したと報告すればいいじゃないか』」
メバエ「でも、成功報酬は欲しい(笑)」

 この後、しばらくグチャグチャ話し合う一行。結局、解毒剤を作った後にアルダは一度男爵に
送り返す。その後でリチャードソンが、再度レッサーノームのお札でアルダを奪回するという作
戦に落ち着いた。リチャードソンは渋ったが、ボルド達にも信頼という事情があることは知って
いる。渋々ながらもその提案を彼は飲んだ。
 次第にプレイヤー達も考えるようになっている。慣れて、進歩してきた証拠だ。また、彼らは
ホワイトから、今後仕事があったら優先的に回してもらう約束と、マジックアイテムの制作費用
を何割かまけてもらう約束まで取り付けた。ちゃっかりしている(笑)。


(8)解毒のために

GM「『では、解毒剤の作り方について説明しよう』とホワイト。ここから北の方へ行ったところに
小世界樹という魔法の木がある。その葉が薬の材料に必要だそうだ」
ボルド「やはり、材料が必要か。なら、余分に取って帰ろう」
メバエ「いっぱい取って帰ろう(笑)」
GM「しかし、その小世界樹の根元にはウッド・ゴーレムと呼ばれる木で作られたゴーレムが守
っているそうだ」
ボルド「うわ〜やはり、いるのか!」
GM「また、リチャードソンは、君たちが出掛けている間、ここでアルダを護衛することになる」
ボルド「大丈夫かな?追っ手とかが来たら…あ、そうか。ホワイトが居るから問題ないか」
GM「そうだね。ホワイトは強いからね」
ボルド「なら、安心だ。行こう」
GM「では、でかけるんだね。それでは、翌日、君たちは小世界樹向けて出発した。一日行く
と、何事も起こらず小世界樹に着く。そして世界樹の周りをゴーレムが周回しているのが見え
る。前にも言ったけれど、木で作られた、ウッド・ゴーレムというタイプだ」
ボルド「こいつの、隙をついて昇れるかが問題だ」
マレイン「お、オレ?オレ?」
メバエ「お前だ(笑)」
GM「ゴーレムは、だいたい三十秒で一周しているように見える」
マレイン「盗賊スキルを使うのかぁ〜(←だって君スカウトじゃん)」
メバエ「倒して経験点にすることはできない?」
GM「出来るけれど、相手がどれだけ強いかわからないから、君たちの生死については保障し
ないよ。それに、コンピューターゲームと違うから、一度死んだら簡単には生き返れないよ」
ボルド「避けることが出来る敵ってのは、戦ったらマズイと見たね」
マレイン「おっし〜オレの出番だ〜」
ボルド「このゴーレムは早い?」
GM「そこそこ早いかな」
メバエ「誰かがおとりになるってんのはどう?」
マレイン「おとりか〜」
GM「ああ、あと、補足しておくけれど、小世界樹の周囲は木々が密集しているから飛び道具は
使えないよ」
ボルド「遠距離から殺すことは出来ないのか」
GM「木々に紛れて接近することは出来るけれどね」
マレイン「ヴッドゴーレムに火を放ってみたい〜」
ボルド「木製であることが強調されていたしな」
GM「しかし、この辺り一帯は森だから、火を放つと山火事になるぞ」
マレイン「う〜ん、オレが登るしかないか〜」
GM「では、スカウトが登るんだね。どういう風に行く」
メバエ「ゴーレムが通り過ぎた瞬間に行けば」
マレイン「こえ〜(←恐いと言ったらしい)」
GM「では、無事に、ゴーレムの目を避けて、木に辿り着けたかチェックだ。盗賊スキルに修正
ナシで判定して」
ボルド「見つかったら戦闘に引きずり込まれるわけだ」
マレイン「逃げてぇ〜。(ころころ)成功!」
GM「では、木に辿り着けた。そして、これから登ってもらう。また盗賊スキルでチェックだ。三回
成功したら登りきれる。今度も修正なしでチェックして」
マレイン「(ころころ)よし〜」
GM「では、マレインは木に登った。丁度そこを、周回してきたゴーレムが接近してきたが、木
に登っているマレインには気付かず、また通り過ぎていく」
マレイン「うわ〜」
GM「では、二回目の木登り判定」
マレイン「(ころころ)あっ〜失敗〜」
GM「失敗すると木から落ちるよ」
マレイン「集中力だ〜。こえ〜こえ〜、神様助けて〜。(ころころ)あ〜、落ちた〜」
GM「では、マレインは落ちた。丁度そこにまたゴーレムがやってくる。はい、では戦闘だ〜
(笑)」

 こうして始まった最後の戦闘。マレインが木から落ちたことにより、済し崩しに戦闘になった。
一瞬、逃走も考えた三人だが、結局小世界樹の葉が必要なことを考えると、戦ってゴーレムを
倒すことに落ち着いた。

メバエ「マレイン一人じゃ勝てんぜ!」
ボルド「取り敢えず、私から近付こう。そして攻撃!」
GM「ちなみにこっちの回避は3しかない」
ボルド「それなら(ころころ)あっ、初めて外した!」
GM「余談ながら、こっちのHPは70」
メバエ「強いな〜」
ボルド「私が当たらないとはショックだ」
メバエ「オレも行こう。(ころころ)命中して7点」
GM「4点来た。つまり、こっちの防御点は3だ」
ボルド「なんとかなるかな。いくぞ、デルタフォーメーション!」

 デルタフォーメンションって…お前等、ちょっきり三人しかおらんではないか(笑)。ともかく、次
のラウンドにボルドとメバエの攻撃が連続して当たり、ゴーレムはかなりのダメージを受ける。
そして、ゴーレムの反撃。

GM「誰に攻撃するか(ころころ)…よし、ボルドだ」
ボルド「来なさい!」
GM「(ころころ)(ころころ)このゴーレムは二回攻撃してくる。一回がボルドに当たって3点のダ
メージ。結局、直に来るのは1点だね」
ボルド「防御で2点止まるからな」
メバエ「しかし、二回攻撃とは強いな!」

 次のラウンド、ゴーレムはボルドに二回とも命中させて、5点と8点のダメージを食らう。ボル
ドはHPを9点減らすが、さすがにウォリアーだけあって、まだまだ倒れない。しかし、三人の間
に焦りの表情が走る。

GM「回復したかったら回復してもいいよ」
メバエ「そうか、呪文を使おう!」
ボルド「どれくらい回復する?」
メバエ「ええと、d10プラスレベル分だね」
ボルド「下手したら2しか回復しないわけか」
メバエ「ええと、消費MPは1か」
ボルド「打ち放題じゃないか(笑)」
メバエ「(ころころ)8点回復した。全快じゃん」

 こうして、初めての魔法を使いながら戦闘は進む。ボルドは相変わらずゴーレムに攻撃。マ
レインも起き上がって戦闘に参加する。メバエは回復呪文でサポートに回り、戦闘は次第に長
期戦となる。

GM「では、マレインに攻撃!」
マレイン「こ、こえ〜〜〜!」
ボルド「マレイン、HPが14しかないのに!」
GM「(ころころ)命中して8点」
マレイン「うわ〜!」
メバエ「オレ、忙しいな!」
GM「それが僧侶の本職だろう(笑)。プリースとの役目がだんだん分かってきたみたいだな」

 メバエが怪我人を回復しながら激戦は続く。

メバエ「忙しい〜」

 しかし、さすがにドワーフ・ウォリアーの攻撃は強力だった。ウッド・ゴーレムのHPはガリガリ
削られていく。そして、回復の合間にメバエが振るったフレイルが見事に命中し、ゴーレムはつ
いに地面に倒れたのだった。

GM「ゴーレムは地響きを立てて地面に倒れた」
ボルド「これで、何の憂えもなく登れるわけか」
GM「誰が登る?」
マレイン「オレ、オレ〜」
GM「では、マレインが登って世界樹の葉をブチブチむしるわけだ」
ボルド「持てるだけ持とう」
メバエ「ウッド・ゴーレムは何か持っていなかった?」
GM「いや、何も持っていないね。バラバラになって、ただの木片になったよ」
ボルド「では、帰るか」
GM「帰るの?それでは、また一日かけてホワイトの洞窟へ戻る。ホワイトはまた実験をしてい
て、『首尾はどうだった?』と聞いてくるけど」
ボルド「世界樹の葉、あるよ。どっさり」
GM「『また、随分むしって来たな』」
ボルド「余った分、幾らで買ってくれる?」
GM「『まあ、1000金貨というところだな』」
ボルド「もう一越えいかない?」
GM「『一越えって…お前等、これだけ自然破壊して値を釣り上げるのは虫がよくないか?ま
あ、代わりに今後お前等に優先的に仕事を回してやるからそれで納得しろ』と言われる」
ボルド「仕方がない。1000で売ろう」
GM「『まあ、三人で分けやすいように、1002で買い取ってやろう』(笑)」

 こうして、小世界樹の葉をホワイトに売り付け、三人の懐は潤った。そして、ホワイトは早速、
解毒剤を作り始める。待つことしばし、解毒剤は完成し、アルダが持っていた偽りの愛情は解
けて失せたのであった。


(9)そしてこんなオチ

GM「では、無事にアルダさんにかけられた惚れ薬は効果を失った」
ボルド「では、これからの作戦を話す」
GM「ボルドから話を聞くとアルダは『私をまた、あの男爵の所に…そんな…』と泣き始める。リ
チャードソンは『アルダ、仕方がない。彼らには借りがあるし、彼らなりの事情もある。きっと助
けだすから安心しろ』と言う」
マレイン「オレたち、悪い奴らみたいだ〜」
メバエ「ちょっとガメツかったかな」
GM「まあ、結局アルダは承知したよ。渋々ながら男爵の屋敷に帰ることを承諾する」
ボルド「承知してくれたか」
GM「では、リチャードソンは約束どおり、君たちに品物をくれる。まず、ロングソードをくれる」
ボルド「普通の剣か?」
GM「いいや、魔法のロングソードだよ。だって、家宝の剣だもん。ちなみに、ロングソードプラ
ス1」
マレイン「うえ〜!」
GM「あと、指輪はレジストリングといって、抵抗力にプラス5される品物だ」

 思いがけない良い品物をもらって、ちょっと動揺する三人。しかし、ストーリーはその間にも進
む。そして三人はアルダとリチャードソンを連れて、ノービスの街に帰ってきた。

GM「ノービスにつくと、ブルーノ男爵の屋敷の前では人だかりができていて、なにやら泣き声ら
しきものも聞こえてきます」
ボルド「おや、マズいムード?」
GM「どうも話を聞くと、ブルーノ男爵が、反乱軍との戦いで戦死したという事実が発覚します」
一同「どひゃ〜!」
ボルド「これは…特別ボーナスが払ってもらえないということか!!」
GM「そうだね。払ってもらえないね」
メバエ「一応、交渉はしてみようか」
GM「では、執事が出てきて『おお、あなた方、たいへんです。旦那様が戦死して、お家は断
絶。男爵家の財産は全てアラニア国に没収されることとなりました。したがって、あなた方にな
にも払うことができません』」
ボルド「奥さんが帰ってきても、財産は動かせない?」
GM「駄目だそうです。既に男爵家の財産は全て国に没収されたそうです」
ボルド「あらら〜」
GM「と、いうわけで、君たちの初めての冒険は、ヘンテコなオチで終わりをつげたのでした。も
う、アルダを男爵に返す必要はないわけだね。何も障害がなくなったアルダとリチャードソン
は、その後二人で仲良くくらしました、という訳さ。ああ、そうだ、リチャードソンの持っていた護
符は君たちが持っていていいよ」
メバエ「これはマレインが持てばいい」
マレイン「お〜」
GM「これで、今回の話はおしまいです」
ボルド「もう一話いっとく?」
GM「アホタレ(笑)もう時間がないわい。では、君たち最初の冒険は、無事に幕を閉じました。
続きはまたいずれね」
                         (完)