(1)またもや初心者集合

GM「では、キャンペーンも二回目です。ええと、前回、惚れ薬の話を片付けたというところは憶
えているよね」
一同「うぃーす」
GM「それで、君たちはアラニア第二の都市、ノービスに戻ってきました。〈黄金のサンマ亭〉と
呼ばれる宿屋に、皆さんは戻ってきています。そこから話は始まります。突然、手紙を持った
男が〈黄金のサンマ亭〉に駆け込んできて。マスターに『ここにいる、人間でない三人組はどい
つだい?』と尋ねる。マスターが『あいつらだ』と君たちを指差し、その男は君たちの所へやって
くる。『あなた方は以前、ホワイトさんの依頼を受けられた方ですか?』と聞いてくる。ホワイトの
ことは憶えているよね。変な発明ばかりやっている魔術師だ」
一同「あ〜(←思い出しているらしい)」
GM「男はホワイトからという手紙を差し出してくる。さて、誰が受け取るかね?」
マレイン「ボルド!」
ボルド「わ、私か?」
GM「ふふふ、受け取ったんだな?」
マレイン「うん(←おいおい、お前が決めるなよ)」
GM「では、ボルドはその手紙を受け取ると、とたんにチクッとしてダメージを食らった。(ころこ
ろ)2点のダメージを受ける」
ボルド「いきなりか!なんなんだ、これは!」
GM「何か、さわるとダメージを受ける罠がしかけてあったらしい。しかし、ともかく手紙は受け
取ったぞ。読むかい?」
マレイン「ボルドが読む〜(←おまえな)」
GM「では、こう書いてあるぞ。『やあ、驚いてくれたかい?君たちに依頼があって、手紙を出し
たのだ。依頼を引き受けてくれるなら、私の洞窟まできてくれ』」
メバエ「仕事?」
GM「さて、読み終えると、その手紙は今度はサラサラと崩れて砂になってしまった。これもどう
やら、彼の発明らしいね。さて、そういう訳だが、どうするかね?」
ボルド「取り敢えず、行かないと話が進みそうにないから行ってみよう」
GM「まあ、そういうこと。別に、この依頼を無視してもかまわないわけだけれど、こういうものは
普通引き受けるはずだからね」
ボルド「と、いうわけだから、行くことにしよう」

 こうして、よく訳もわからないまま、魔術師ホワイトに呼び付けられた彼らは、早速その住み
か目指して旅立っていったのである。つまり、また新たな冒険が始まるというわけだ。わかって
くれたか、初心者パーティーの諸君(笑)。

2)おねーさんな魔術師

GM「では、特に何も起こらず、君たちは前回出向いたホワイトの洞窟に辿り着いた。ホワイト
は『やあ、来てくれたかい。君たちに頼みたい仕事があって呼んだんだよ』と言う。見ると、ホワ
イトの後には、一人の魔術師らしい若い女性が立っている。彼女は進み出て『初めまして。私
はエメラルド・ブルーと申します』と言っておじぎをする。ホワイトは『実は依頼というのは、彼女
に関してなのだ』と言って説明を始める。彼女はホワイトの親戚で、魔術師見習いなわけだ。そ
して、今度、魔術師の学校である〈賢者の学院〉に入学することになった。しかし、入学には厳
しい審査がいるんだよ。彼女に課せられた条件として、この洞窟の北にある〈涸れた洞窟〉と呼
ばれる所に行って、その洞窟についてのレポートを作成することが課せられたんだ。君たちの
仕事は、その課程で彼女を護衛すること。何しろ、魔術師だから、全然力がないからね。ちな
みに、彼女は見習いだからまだ魔法も使えないよ」
マレイン「ひぃ〜」
GM「HPも9くらいかな」
ボルド「弱い!」
GM「『なので、彼女を洞窟まで連れていってレポートを作るのを手伝ってやってくれ』とホワイ
ト。ちなみに報酬として、ホワイトは金貨500枚か、クラブ(要するに棍棒)+1を提示するぞ」
メバエ「500って、一人500?」
GM「いいや、全員で500」
ボルド「棍棒に、特別な魔法の効果は?」
GM「+1だから、攻撃に+10。ダメージに+1だね」
メバエ「じゃあ、金の方がいいや」
GM「ではホワイトは君たちに『よろしく頼むぞ。ああ、そうだ。涸れた洞窟というくらいだから、
たいしたものは存在しないとおもうが、見付けたらその品物は君たちが自由にしていいからな』
と言う」
メバエ「それは、そうと、何か新しい魔法の品物は発明できました?」
GM「『いや、最近は何も作っておらんよ。なにしろ、近ごろ忙しくてな』」
メバエ「何か、魔法の品物を貸してもらえませんか?」
GM「『ワシはもうすぐ引っ越す予定でな。ほとんどの品を片付けてしまったから、何も貸してや
れるようなものはないよ』」
メバエ「何もないの?」
GM「うん、確かに、よく見ると、彼の洞窟は閑散としていて、実験道具なども片付けられている
ね」
メバエ「ちぇっ、しょうがないか〜」

 こうして、一行は魔術師ホワイトの依頼を受けて、エメラルド・ブルーなる女性を護衛し、〈涸
れた洞窟〉なる場所を目指して旅立ったのであった。

(3)ダンジョン初体験




GM「では、半日ほど行くと、山のなかに洞窟がポッカリと口を開けているね。(MAPを書く)。
入り口から入って、こういう風に洞窟が続いているが、君たちは人間じゃないから、暗やみでも
視界は利くよ。ちなみに、こういう風に二またに別れている」
メバエ「奥の方はどうなっている?」
GM「そうだな。奥の方を見たかったら、盗賊スキルにプラス20してチェックしてみて」
マレイン「(ころころ)よし〜」
GM「成功した?では、奥の方はこんな感じに行き止まりになっていて、そこに何か一頭の生物
らしいものが寝ている」
メバエ「生物?」
GM「はい、では、この生物の正体を確認するため、全員、魔術スキルに修正無しでチェックし
てみて」
マレイン「(ころころ)駄目〜」
ボルド「うむ!駄目だ!(←なんだ、その変な気合いは)」
メバエ「うひゃ〜〜!駄目だぁ!」
GM「分からなかった?では、仕方がないな。ここで、魔術師のおねーちゃん、エメラルドさんの
出番だ」

 シナリオの関係で、プレイヤー・キャラクター(以下、PC)に着いてきているキャラをノン・プレ
イヤー・キャラクター(NPC)という。もちろん、きちんと能力もあって、各種の判定にも関わるこ
とができる。たいていはシナリオの都合で一緒にいるので、シナリオと関係なくなったら、とっと
と去って消えていってしまう。うまく利用できれば実質メンツが一人増えていると同じだからたい
へん有利だ。また、GMも、シナリオに関するヒントを与えたり、掣肘を加えたり出来るのでとて
も便利である。ただし、そこそこ慣れたGMが扱わないと、何の存在感も発揮できずに終わっ
てしまう可能性も非常に高い。
 いちおう、ここで、一行に同行している魔術師のネーチャンのデータを紹介しておくことにしよ
う。

エメラルド・ブルー(見習いソーサラー)21歳

筋力:7  耐久:9  敏捷:9 知力:11 幸運:18 魅力:8
攻撃:21 防御:14 盗賊:38 魔術:41 抵抗:46 集中:33
LP:9 MP:11
※まだ1LVにもなっていない彼女は呪文も使えない。ようするに0LVという奴。

GM「ここは、見習いのおねーちゃんが判定して」
ボルド「あ、出来るんだ」
GM「そう、出来るんだな。だから、こういう時に彼女を活用してあげてね。(ころころ)では、エメ
ラルドさんは『う〜ん、あれは熊じゃないかと思います』と言う。いわゆるベアのようだ。冬眠して
いるらしく、グーグーと寝ています」
メバエ「どうする?」
ボルド「やっちまえ!」
マレイン「弓で攻撃だ〜!」
GM「ちなみに、弓で射つなら、今、熊は寝ているので、命中に修正はかかりません。避けられ
ないからね」
マレイン「ぴゅ〜ん(ころころ)失敗!」
GM「では、マレインの射った矢は外れて、洞窟の壁に当たったね。では、そのショックで熊が
起きたかどうかもチェックしよう」
メバエ「そんなのもやるんだ!」

 その通り。TRPGでは、ちゃんと敵側も判定を行なうのですよ。幸い、ここでは熊はチェックに
失敗し、起きてはきませんでした。

GM「熊は起きてこなかったね」
ボルド「ふう、だったら、もう、近付いて殺っちゃった方がよくない?」
メバエ「あ〜でもな。熊が強かったらどうしよう?あ、でも、ボルドがいるからいいかな」
ボルド「こっそり、近付いて一斉に切り掛かったら?」
GM「こっそり近付くには盗賊スキルの判定が必要だよ」
ボルド「失敗しても、集中力があるから、なんとかなるか」
GM「あ、そうそう。君たちは2LVになったから、一日に二回集中力が使えるよ」
メバエ「おおっ!」
GM「また、スカウトが、こっそり近付いて奇襲したら、始めの一撃はダメージが倍になるから
ね」
メバエ「マレイン!」
マレイン「うし、うし、うし!(←気合いを入れているらしい)」
GM「やるなら、盗賊スキルで普通にチェックしてみてよ」
マレイン「(ころころ)駄目〜」
GM「集中力使う?」
マレイン「使う〜(ころころ)よしっ!」

 集中力を使うと、失敗を成功に変えることが出来ます。たいへん便利なので、上手に使おう。
2LVになったから、一日に二回使用することができるしね。

GM「では、マレインは熊に音もなく忍び寄った。命中させるなら、普通に攻撃スキルのチェック
して」
マレイン「(ころころ)当たった〜」
GM「なら、ダメージを決めて。ちなみに熊のHPは15しかない。アーマー値は4だよ」
マレイン「(ころころ)ダメージ10!」
GM「なら、不意打ち(《バックスタッブ》という)だから、ダメージは倍で20点。ここから熊のアー
マー値を引いて16点だから…おお!一撃で熊を屠ったぞ!」
マレイン「う、うへへへぇぇ〜」
メバエ「マレイン強い!」
ボルド「熊は何か持っていない?」
GM「当然、何も持っていないよ」
メバエ「辺りにはなにもない?」
GM「ああ、血飛沫が点々と飛び散っているよ。魔術師のおネーチャンが、『なんと、ムゴい…』
と、一撃で殺された熊を哀れんでいるね。と、いうわけで、マレインが熊殺しの称号を得ただけ
で終わりです」

 熊の存在した場所(もう既に過去形だが)から、一行は洞窟を戻って反対の方へと行く。反対
側は二つの部屋になっている。一行はまず、北側の部屋へと入ってみた。

(4)毒もある!

GM「この部屋はガランとしているね。ただ、北側に、青い色の椅子がポツンと置いてある。魔
術師のおネーチャンが、『なにか気になりますね。青い色は魔法の印ですけれど』と言う」
メバエ「なんなんだろう。調べる」
GM「魔術スキルで普通にチェックしてみて」
メバエ「(ころころ)あら〜(←要するに失敗だ)」
ボルド「魔術師のおネーチャンは調べてくれないの?」
GM「では、エメラルドさんは『え?私も調べるんですか?あんまり自信ないですよ』と、いいな
がら(ころころ)ちゃっかり成功。『あの台座を動かすためにはキーワードが必要みたいですよ』
と言う」
ボルド「取り敢えず、反対の部屋行こう」
GM「反対の部屋には扉があるよ。開ける?」
マレイン「開けた!」
GM「では、マレインは抵抗力のチェックして」
マレイン「て、抵抗?(ころころ)駄目〜」
GM「では、ドアを開けた途端、指先にチクッとした感覚がした。ドアノブに毒針が仕掛けてあっ
たらしい。(ころころ)マレインは六点のダメージを受ける」
マレイン「ど、毒?」
GM「うん、速効性の奴だ。ただ、これ以上のダメージは進行しないタイプだから、一応安心だ
ね」

 こういう風に、不用意にドアをあけると、罠にかかってしまうこともしばしばあるのです。特に、
そこが重大な場所なら尚更であります。

GM「では、その部屋はどうやら書庫のようだね」
メバエ「書庫?」
GM「本棚が並んでいるよ」
ボルド「調べよう。金目の本があるかも(←おい)」
GM「調べるなら、盗賊スキルにプラス20だ。何かあるか発見できるかどうかだな」
マレイン「(ころころ)オッケ〜」
GM「なら、本棚に、一冊だけ青い本があるのが分かるよ」
メバエ「取ろう」
GM「取るんだな?」
マレイン「ボルド!」
ボルド「へっ?ま、まあ、わかった…」
GM「では、手に取ったよ。どうする、読んでみるかい?」
ボルド「うん…(←場の勢いに流されているらしい)」
GM「それでは、本の最初にこう書いてある。封印を説くキーワードはニザーム・アル・ムルクで
あると書かれている」
ボルド「こういうの、メモっておかなきゃ!」
メバエ「(メモしはじめる)ニザーム・アル・ムルクっと」
ボルド「きっと、後でGMが、言えって言うに違いない」
メバエ「だねぇ。ところで、この本棚に、他に値打ちのある本はない?」
GM「そういう本を探してみたかったら、魔術スキルでチェックしてみて」
メバエ「(ころころ)オッケィ!」
マレイン「駄目だ〜」
ボルド「私が成功することはない(ころころ)…したじゃないか(笑)」
GM「ドワーフが成功した?それはすごいな(笑)では、『美しいハンマーの作り方』という本をボ
ルドは見付けた。メバエは『正しい森の通り方』という本を見付けたぞ。そこそこ値打ちはあり
そうだね。まあ、売れば数十金貨にはなるだろうという価値だ」

 この後、何冊か本を漁るも、たいした本は他には見つからない。魔術師見習いのエメラルド
は、自分でも魔術書を一冊見付けてご満悦であった。

エメラルド「これは、私の今後の研究課題にします」

 これで一応本棚の調査は終わり、一行は再度玉座の部屋に向かう。玉座に向かってニザー
ム・アル・ムルクと唱えると、玉座が割れて、下に続く階段が現われた。
 全然関係ないけれど、ニザーム・アル・ムルクはセルジューク・トルコの名宰相である。果たし
て、この場に居た何人が、元ネタに気付いたのやら。

メバエ「未開の地で行動するには、気をつけないと」
GM「道はこうなっているよ(MAP参照)。取り敢えず、ここは小部屋で、正面に扉がある」
マレイン「開けよ〜」
GM「なら、開いた。北に続く通路と、東に向かう通路がある」
マレイン「この部屋には何もない〜?」
GM「ここには何もないね。まあ、詳しく調べたら罠の一つも出てくるかもしれないけれど(笑)」
マレイン「オレがひっかかる〜?」
GM「いや、盗賊スキルでチェックしたら、罠が発見できる可能性もあるよ」
ボルド「罠があると分かっても、開けないと駄目な時があるんだな〜」
GM「シーフツールって持っている?そういうのがあれば、罠の解除も出来るけれどね」
マレイン「あ〜、ない〜」
GM「ないなら無いで、工夫して代用できるけれどね」
メバエ「何があるかな?(しばし、キャラシーを覗き込む)」
マレイン「何もない〜」
ボルド「なら、開けるしかないんじゃないかな?」
マレイン「開けた!」
GM「なるほど、開けたか。では、ドアの内側で、バーンという音がして、何かが爆発した。全員
抵抗チェックをしてみて。失敗したら2d10ダメージを食らう」
一同「うげっ!」
GM「爆発したのは何か水のようなものらしい」
メバエ「逃げる!」
GM「残念ながら、もう間に合わない。爆発は起こってしまったからね。さて、抵抗して頂戴ね」

 ここで、ボルドとメバエは大ダメージを食らってトホホな状態になるが、マレインは運が良かっ
たのか、たった2点しかダメージを受けない。

(5)精霊の匂いがする

メバエ「こういうこともあるのか〜」
GM「そういうランダム性も楽しみの一つだよ。さて、魔術師見習いのエメラルドさんが『どうや
ら、この辺りの精霊の力に以上があって、爆発が起こったようです』と言う」
ボルド「精霊?」
メバエ「でも、うちらにはシャーマンはいない(笑)。新しく、誰かをメンツに加えようか?」
GM「では、扉が開いてそこは部屋だ。部屋のなかに巻き物が置いてあるよ」
メバエ「読もうか」
GM「では、巻き物にはこう書いてある。『偉大なる魔術師ニザーム・アル・ムルクは、この土地
に氷の精霊フェンリルを封じ込めた。この洞窟に入るものに災いあらんことを』と書かれてい
る」
ボルド「な、なんか、すごそうだぞ」
GM「フェンリルという名前を聞いた皆は、魔術スキルに修正ナシでチェックしてみて」
メバエ「(ころころ)駄目!」
ボルド「やっぱ駄目!」
マレイン「(ころころ)わかった〜」
GM「では、マレインはわかったけれど、フェンリルというのは氷の精霊の最上位種で、巨大な
狼の姿をしている。ちなみにHPは200くらいかな」
メバエ「なにぃ〜♪〜」
マレイン「オ、オレ達ヤバい?」
GM「おいおい、震えてどうするの(笑)」
メバエ「だって、相手は氷の精霊だもん」
全員「(爆笑)」

 妙にオチがついて、ひとしきり爆笑した一同。しかし、その後は妙にマジメになって、慎重に
探索を開始したのであった。この辺、また三人の成長が見られる。
 三人は、長い通路を東の方へと向かった。通路の途中の北側に、扉があるのを見付ける。
そこを開けると…

GM「扉は開いたけれど、扉が触ったとき、とても冷たかったよ」
メバエ「ここかな?」
ボルド「きっと、そうだ」
GM「ええと、ここは小部屋になっていて、部屋には魔法陣が張り巡らされている。そして、魔法
陣の真ん中に、大きな狼が伏せてしゃがんでいるよ」
マレイン「わっ、わ〜」
メバエ「ひょ〜♪」
GM「では、ここで皆魔術スキルのチェックしてみて。修正は無しね」
マレイン「(ころころ)またオレ成功〜」
メバエ「こっちも成功したぞ」
ボルド「私は失敗したけれど、魔術師のオネーチャンは判定しないの?」
GM「じゃあ、してみようか。(ころころ)エメラルドさんも成功した。じゃあ、彼女の口から言わせ
よう。『たいへんです!あの魔法陣の封印は破れかかっています!』だってさ」
マレイン「う、うわ〜!」
メバエ「ひゃ〜!」
ボルド「(なぜか冷静)どうにかならない?」
GM「何ぞフェンリルをどうにかせん。どうにかなろうか、どうにもならない(笑)」
ボルド「え?そうなの?」
GM「いや、それは冗談(笑)。エメラルドさんが『火の精霊サラマンダーをぶつければ、フェンリ
ルを弱らせることができるかもしれません』と言うよ」
ボルド「そんなもんは居ないな」
メバエ「うちら、精霊使い、いないしね」
マレイン「何か他にある〜?」
GM「マレインが調べてみたいなら、盗賊スキルに修正無しでチェックしてみていいよ」
マレイン「(ころころ)お〜、01!」
GM「すごいな。では、情報が完璧に手に入る。マレインが見て分かったのは、この魔法陣とい
うのが、洞窟と連動しているということ。洞窟に侵入者があると、次第に魔法陣の封印が弱って
いって、そして解けてしまう。もはや、一刻の猶予もない。フェンリルが解放されるのも時間の
問題という奴だ」
一同「うわ〜!」
GM「そしてまた、フェンリルが解放されると、たいへんなことになるわね」
マレイン「さ、寒くなっちゃう〜(←そりゃそうだ)」
GM「とか言っていると、魔法陣にうずくまっている狼は、閉じていた目を開いて『グルルル』と不
気味なうなり声をあげるよ」
ボルド「超恐い!」
マレイン「やばいよ〜!」
GM「エメラルドさんが『こ、このフェンリルを何とかしないとアラニアの国が…。今年の農作物
に大きな被害が出てしまうわ…』と悲痛な顔で呻きます」
マレイン「逃げたい〜」
GM「逃げてもいいけど、それでも結局封印は破れるよ」
メバエ「ウチらがなんとかしないと駄目ってわけだ」
マレイン「どうしよ〜」
ボルド「ここはさ、とりあえず、まず、行っていない所を見てみたらいいんでない?」

 ボルドの建設的意見が出たので、一行は他の部屋を当たってみることにした。何しろ通路は
まだ、東へと続いている。そうして他の部屋を色々当たってみると、東北の方向で、また本棚が
沢山ある部屋を発見する。

(6)なんとかしないと

GM「この部屋も本が色々並んでいるよ。調べたかったら魔術スキルに修正なしでチェックね」
マレイン「(ころころ)わかんね〜」
メバエ「(ころころ)駄目だ」
ボルド「(さすがに自分はやろうとはしない)魔術師のオネーチャンの判定はないの?
GM「またかい(苦笑)。では、エメラルドさんは『なんか、私ばかりこういうことをしているような
気がするんですけど』と言いながら(ころころ)、一冊の本を見付ける。それは『精霊の力につい
て』という本だ」
メバエ「おっ!それは!」
GM「本にはこう書いてある。精霊には、それぞれ弱点となるが、その精霊と逆の力をぶつけ
れば、倒すことができるということ。つまり、氷の精霊には火が有効なわけだ。また、このよう
に、精霊が封じ込められた場所では、必ずといっていいほど、逆のパワーの精霊も封じ込めら
れている。つまり、万一の時のための保険というわけだね」
メバエ「シャーマンがいないけれど、精霊を従えることなんかできるかな?」
GM「一応、本では、ボコして打ち負かしたら従えることは可能だと書いてあるけれどね」
一同「…(しばし、沈黙思考モード)」
メバエ「一度帰って、シャーマンを探して連れて来た方がよくないかな?」

 ちょっと話的に手詰まりになってきたので、GMはNPCの口から、時間が足りないことをアピ
ールすることにした。こういう時に道標として活用できるのも、NPCの便利な所である。

GM「エメラルドさんが『でも、これ以上悩んでいる時間はないと思います。魔法陣の決壊は近
いですよ』というよ」
メバエ「そうか、もう時間はないんだ」
GM「こうしている間にも、どんどん魔法陣の崩壊は進んでいくよ」
メバエ「じゃあ、行くしかないよ」

 行動するしかないと悟った一行は更にダンジョンをウロウロ。南東の部屋で、薬瓶と金貨を
発見するものの、ここはそれだけ。フェンリルに対抗できる精霊の存在を見付けることができ
ない。何か、この南東の部屋にないかと、一行はじっくり部屋を探しはじめた。
 さて、ここで、ある隠し部屋を覗いて、行ける部屋は全て行ったわけである。ここで、GMは、
もう一つヒントを出すことにした。

GM「一応、行ける部屋は全て回ったよね。では、全員が盗賊スキルのチェックをしてみて」
メバエ「(ころころ)無理!」
GM「プリーストは盗賊スキルが低いからね」
マレイン「(ころころ)うわ!駄目〜」
ボルド「(ころころ)私が成功したぞ。なんか、ウォリアーって結構盗賊スキルあるんだよね」
GM「うん、ウォリアーは盗賊スキルも結構高い。では、ボルドが気付いた。まあ、ここはドワー
フの第六感で気付いたということにでもしておこうか。それは、まだどこかに部屋が隠されてい
るということだ」
メバエ「隠し扉があるということ?壁とか、色々調べてみようか」
GM「そういうことをするなら、盗賊スキルでチェックだよ」
メバエ「ええ〜(苦笑)」

 クレリックのメバエには無理な話だが、ともかく一行は盗賊スキルでアチコチをチェックする。
時間を節約するために、NPC含めて四人の一行は二手に別れて探すことしばしば。宝箱の中
や、本棚の奥とか、細かいところを色々と探しまくった結果、やっぱり隠し扉は見つからない。

メバエ「マレイン、スカウトの勘を働かせてくれ!」
マレイン「出来る〜?」
GM「そうだね。集中力を使って、チェックに成功したら、何かヒントあげるよ」
マレイン「(ころころ)成功!」
GM「では、マレインは思った。ダンジョンの構造的に、この辺に部屋があるのではないかと思
った」
一同「あ〜」

 GMが指差した隠し部屋の位置は、なんと氷の精霊フェンリルの目の前。

(7)サラマンダー

GM「隠し部屋に入ると、今度は今までとはうってかわって強い暑さが肌を差すよ。この小部屋
の真ん中にも、やはり壊れかかった魔法陣がある。そして、その中に一匹の大きなトカゲが、
全身から炎を吹き出してうずくまっている。このトカゲについて知りたかったら、魔術スキルチェ
ックだ」
ボルド「オネーチャン!どうぞ!」
GM「では『人使いが荒いですねぇ。そもそも、依頼人は私なんですけれど』とかいいながら
(笑)、判定してくれる。(ころころ)ありゃりゃ、わかんなかった」
メバエ「たぶん、これがサラマンダーだと思うんだけれどな」
GM「まあ、路線から言ってもそうだろう。しかし、君自身はわかっても、キャラクターの方はそ
れに気付いていないんだよね」

 TRPGでは、プレイヤー自身は分かっていても、キャラクターが知らないということが往々にし
てある。こういう点も、TRPGの特徴であったりするわけだ。

メバエ「じゃあ、判定してみよう。(ころころ)おっ、分かった」
GM「では、それは火の精霊サラマンダーということが分かる。そこで、そのサラマンダーが話
し掛けてくるよ」
メバエ「精霊使いがいないのに話せるの?」
GM「うん、彼の方から共通語で話し掛けてくるよ」
メバエ「おお!」
GM「『何の用かね』とサラマンダー」
メバエ「氷の精霊フェンリルが復活しそうなので、なんとかしてもらえませんか?」
GM「『フェンリル?まあ、なんとかできんこともないが』とサラマンダー」
メバエ「うちらのパーティーの下僕になってください」
一同「(笑)」
ボルド「ムチャクチャ言っとる(苦笑)」
GM「『それは、つまり協力しろってことだな』とサラマンダー」
メバエ「まあ、そういうわけです」
GM「『そうか。なら、オレがお前たちに一つリドル(要するに謎々)を出そう。それに答えること
が出来たら、協力してやっても良いぞ』と、いう」
メバエ「なるほど」
GM「『もし、答えられなかったら、力でオレを従えるんだな』とサラマンダーはいう」
メバエ「よ〜し、その代わり、ウチらが答えられたら、一生下僕として使いますよ」
GM「『いいぜ。では、勝負だ』とサラマンダー」

 リドル。それは、TRPGを面白くするエッセンスの一つである。要するに謎々なわけだが、こ
の謎々が重大な役目を担うことが往々にしてあるから面白い。
 このようなリドルは、タイミングよく出すのが大事だ。また、一度のシナリオでは1〜2回程度
に止めておくべきである。何度も出すと、プレイヤーの方が緊張感を無くすし、疲労もする。リド
ルは結構時間と気力を消費させる。

GM「問題は次の通り。《私は火の玉。私は遥か彼方のもの。私は、人や獣の形を作り出す。
私は何ぞや?》というものだ。さあ、考えよう」
メバエ「魔術スキルでチェックしたら答えとかわかんない?」
GM「基本的にそれは駄目。これは君たち自身で考えて、答えを見付けないといけない問題
だ」
ボルド「じゃあ、オネーチャンに聞いても無駄かな」
GM「無駄だね。『わかりませ〜ん』とか言われる」
ボルド「なんだろ?」
マレイン「あ〜、あ〜、あ〜!」
メバエ「太陽かな?火の玉だし、遠くにあるし、その光は影を作って、人や獣の形を作り出す
し」
ボルド「それかな?」
GM「決まったら答えてよ」

 一行はしばしまた悩む。結局、太陽という答え以外思いつかなかったので、ここは太陽と答え
ることにした。

GM「では、サラマンダーは顔をしかめて『まあ、それも正解とするか』と言う。本当の正解は
《星》なんだけれどね。まあ、太陽も大きく考えたら星の一つだし」
メバエ「星が正解なんだ。《惑星》では、駄目なんだ?」
ボルド「惑星は、火の玉ではないからね。あれば、自分で燃えているわけではないし。だから、
《星》が正解になる。あれは星座になって、人や獣の姿を作り出すからね。そういう点では太陽
もちょっと正解とはズレるかもしれないけれど、あれも、別の星から見たら、星座にはなってい
るかもしれないし。まあ、OKということにしよう。サラマンダーは『お前たちに力を貸そう』と言っ
てくれるよ」
メバエ「このサラマンダー、イフリート(炎の上位精霊)とかにパワーアップできない?」
GM「ムチャクチャ言うな(笑)。そういう超強力な奴は、戦って従えるんだな。ロードスの某英雄
たちみたいに」
メバエ「ウチらはサラマンダーを従えたというわけか」

 まあ、2LV程度の君たちには、それでも上等だよ(笑)。所詮君たちは未だ見習いなんだから
ね。
 しかしまあ、正解してくれてほっとした。失敗した場合は、戦ってサラマンダーを従えないとい
けなかったのだ。サラマンダーはまあそこそこ強い奴なので、2Lvで、しかも三人しかいないこ
のパーティーではちょっときつかったと思われる。
 従えたサラマンダーを連れて、一行はフェンリルの部屋に行く。いよいよ、決戦である。

(8)倒せ!フェンリル!

メバエ「じゃあ、フェンリルをなんとかしてほしいんだけど」
GM「サラマンダーは『わかった、任せろ』と言って身構えるよ」
ボルド「こいつ、体当たりして死ぬんじゃないの?」
メバエ「フェンリルを弱らせるって言うから、たぶん…」
GM「うん、その予想は実に当たっている。サラマンダーはフェンリルに向かって突撃するよ。
そして、悲鳴と共に物凄い水蒸気があがって、魔法陣の封印が破れる。そして、サラマンダー
は消え失せてしまうけれど、フェンリルが相当に弱ったのが分かる」
一同「おお!」
GM「魔法陣が破れたので、フェンリルは魔法陣から出てきて、君たちをねめ回すように見つ
める。さあ、戦闘開始だ!」
一同「よっしゃ〜!」
ボルド「まずはイニシアチブ勝負だ!」

 ようやく始まった戦闘。ダンジョンの最後にあってしかるべし、シナリオの山場である。
 ちなみに、フェンリルのデータは次の通り。

 弱ったフェンリル(氷の精霊・狼の姿)
LP:32 MP:20 RE:70 AV:4
IV:4  FS:70 DE:20 ダメージ:2d6×2

 かなり弱くなったフェンリルである。ちなみに、弱体化する前のフェンリルは次の通り。

 最強のフェンリル
LP:160 MP:40  RE:90 AV:10
IV:10  FS:150 DE:20 
ダメージ:3d10×2

 まあ、2LVが三人程度ではどうあがいても勝てないよね。

GM「HPは20しかないよ」
ボルド「勝てそうだ!」
GM「サラマンダーの援護があってならではだけれどね」
ボルド「よしっ!(ころころ)命中!1!」
GM「おっ、それはクリティカルヒットだ」
ボルド「どういうこと?」
GM「攻撃スキルの値の1/10以下の値で命中した時は、なんと相手のAV値を無視して、そ
っそりそのままダメージを与えることができるんだ」
ボルド「おおっ!と、いうことは…(ころころ)ダメージは16点」
GM「16点?(ボルドのキャラシーを見て)獲物はハルバードか!そいつは痛い!一気に半分
もHPが削れた」
マレイン「おお〜、凄い〜!」
メバエ「さすがウォリアー!」
マレイン「強ぇ〜、強ぇ〜!」

 たしかに、このボルドの一撃は痛かった。一撃でフェンリルのLPは半分もなくなった。調子こ
いたボルドは前に出て、フェンリルをひたすら殴り付ける。他の二人もフェンリルを囲んでタコ
殴り。フェンリルも反撃してボルドに攻撃を与えるのだが、さすがにウォリアーはLPが断然違
い、致命傷にもならない。

ボルド「(ころころ)命中!ダメージ10点!」
GM「うわ〜、あと6点しか残ってない」
メバエ「殺せ〜」
GM「魔術師のオネーチャンが『ドワーフの強さも、レポートとして報告させてもらいます』と、一
生懸命メモを取っている(笑)」

 こうして戦うこと3ラウンド。ボルドの猛攻によってフェンリルは蹴散らされ、消滅したのであっ
た。

GM「では、フェンリルは、ボルドのハルバードに頭をカチ割られて、あっさり消滅したよ」
ボルド「に、逃げた?」
GM「いや、奴は精霊だからね。死体とはならずに消滅したというわけさ」
メバエ「ウォリアーは強いな」
GM「ウォリアーもしくはナイトは、パーティーには一人は必要だよ。壁がいないと困るからね。
魔術師のオネーチャンのように、居ることが必要だけれど、前線に立てないタイプのキャラもい
るしね」
メバエ「よし、邪魔者はいなくなったし、辺りを探そう」
GM「魔術師のオネーチャンも、『この事をしっかりとレポートにして報告します』と、羽ペン片手
にしっかりと書類を作成しているね」

 こうして、フェンリルを退治し、洞窟の内部も一通り探索して、エメラルド女史のレポートは完
成した。そして一行は、再度魔術師ホワイトの所に帰ってくる。

(9)うまくいったよ

GM「君たちの姿を見るとホワイトは『どうだった?洞窟のレポートはできたか?』と聞いてくる。
エメラルドさんは『伯父さま、全て上手くいきました。レポートも出来たし、洞窟も綺麗になりまし
た』と言う」
メバエ「お礼をもらいたいんですが」
GM「『おお、そうだな』と言ってホワイトはお礼を出してくれるよ。金貨五百枚をきっちり分けてく
れ。エメラルドさんは君たちにお礼を言って、『私はこれからアランの街に戻ります。これで、魔
術師になることができます。アランに来ることがあったら、ぜひ尋ねてきてください』と言うよ。」
ボルド「仕事とかもらえるかな?」
GM「そうだね。ひょっとしたら、もらえるかももしれない。つまり、これで君たちは、エメラルドさ
んと言う人とコネクションが出来たわけだ。ひょっとしたら、また、魔術師組合の方から仕事が
もらえるかもね」
メバエ「おっ、それはいい!」
GM「ところで、ホワイトが、君たちにある提案を持ちかけてくる。『君たち、ちょっと簡単なアル
バイトをしないか?』」
メバエ「お金になるならするよ」
GM「『いや、たいした仕事ではないよ。この洞窟の荷物を、君たちが倒した、フェンリルの居た
という洞窟に運んでくれんか』」
ボルド「ん?それは?」
GM「『ワシはそこに住むことにしたよ。いや、丁度手ごろな引っ越し先を探していたんでな。話
によるとその洞窟は、住心地が良さそうだからな。そこに、住むことに決めたよ』」
マレイン「住むんか〜」
GM「『いやいや、ワシの新しい引っ越し先も決まって、メデタシ。君たちも金が入ってメデタシ。
エメラルドも、魔術師になれてメデタシだ。わっはっは』とホワイトは笑います。こうはして、全員
が無事に幸せになったのでした。と、いうわけで、今回のシナリオは終わります。今回のタイト
ルは、『魔術師のお引っ越し』でした」
ボルド「要するに、引っ越しが一番の目的だったと…」
GM「まあ、そういうことななりますね(笑)。と、いうわけで、無事にホワイトは引っ越しを終えた
のでした。メデタシ、メデタシというわけでした(笑)」

                       完