![]() (1)手紙が来る GM「さて、今回でセッションもはや3回目だ。段々みんな、プレイに慣れてきたよね」 メバエ「まだよくわかんらんところもあるけど」 ボルド「会話が大事なんだっていうのは解った。あと、無茶したら本当に死ぬんだなっていうと ころも」 GM「そうね。その辺がいわゆる、コンピューター・ゲームと違うところだ。それがこのゲームの 醍醐味なんだけれどね」 メバエ「難しい〜」 マレイン「オレ、よくわからん」 GM「また、徐々に解って(笑)。さて、みんなはアラニア王国第二の街ノービスにいます。そし て、相も変わらず〈黄金のサンマ亭〉でたむろしています。そんなところに、ボルド宛に手紙が 来たことから始めよう」 ボルド「わ、わたし?」 メバエ「また、手紙に罠とか仕掛けてあるんじゃ…」 GM「(よほど前回ので懲りたのか)いや、そんなことはないよ。普通に読めます」 マレイン「ボルドが読む!」 GM「いや、だから特に何もしかけてないってば(笑)。この手紙はボルドの知り合いであるドワ ーフからのものだ」 ボルド「私に知り合いがいたのか!」 GM「そりゃ、ボルドにも知り合いくらいいるでしょ。悪いけれど、ストーリーの都合上勝手に決 めさせてもらったよ」 ボルド「どんな知り合い?」 GM「ブラキ神殿の神官、ゼファーさんからのものだ」 ボルド「神官、ってことはプリーストかな?しかし、宗教とかも決まっているんだ」 マレイン「オレ知ってる(←実はロードス読んだことがある)」 GM「ええと、ボルドはドワーフだから知っているけれど、プレイヤーは知らないから説明しよう。 ブラキというのは、いわゆる鍛冶の神様です。主にドワーフが信じている神様です」 ボルド「私、僧侶ではないけど」 GM「でも、知り合いということだから。それで、そのゼファーさんはも、ボルドに頼み事をしてい るんだ」 ボルド「頼み事?」 GM「うん、ゼファーさんは、ここから二日ほど行った処にあるドワーフ村の神官です。この村 は、ブラキ神を信仰するだけあって、鍛冶がとても盛んなのです。しかし、この村が現在、二つ の派閥に分かれて大騒ぎになっているらしい メバエ「そこで、うちらの出番というわけ?」 GM「そうだね。ゼファーさんは、ボルドに頼んでいる。自分は内部の者だから、この騒ぎを客観 的に見ることができない。できたら、実際に赴いて、アドバイスをくれないかということだ」 ボルド「う〜ん、これは、私に頼んでいるみたいなんだけれど、他の人たちにとってはどうな の?」 GM「いいところに気が付いたね。そこなんだ。この場合、依頼はボルドに向けられているか ら、確かに、他の人には意味がない。だから、何か意味をつける必要がある。もちろん、興味 本位だけでついて行ってもいいけれど」 マレイン「オレ、それでいい〜」 GM「(えらく安直だな…)」 メバエ「エルフって、ドワーフのことを嫌悪とかしてるんだったけ?」 マレイン「ロードスではそうだったと思う〜」 GM「そうだね。確かに中はよくない。しかし、メバエとしては金になりそうな話だと思えない か?」 メバエ「報酬とか取れるの?」 GM「そこは、ゼファーさんとやらに交渉してみればいいと思うよ」 メバエ「なるほど。うちらがわざわざ出向いて来たのに、何も出さないというのはおかしいもん ね」 GM「(また、都合のいい解釈を…)」 ボルド「じゃあ、みんな賛成なようなので、その村に行ってみます」 こうして、スムースに依頼が引き受けられることになった。今までの経験から見ると、初心者 パーティーほど素直に依頼を受けてくれることが多い。ベテランになると、なんやかんや理由を つけて断って、マスターを困らせようとする者もいる。筆者はベテランとはいかなくとも、かなり ゲームをやり込んだ方なので、こういう初心者に当たると、またそれはそれで楽しい。 (2)やって来ましたドワーフの村 GM「では、ドワーフの村にやってきた。ノービスの街から二日かかりました。まあ、この間いろ いろとあったと思うけれど、今回は無しにしておきます」 メバエ「なんかあったの?」 GM「本当なら、モンスターと戦ったりしているはずなんだけれどね」 メバエ「戦ったなら、その分のお金と経験値が欲しいな」 GM「いや、今回は何もなかったことにしているから、何もなしで」 メバエ「え〜」 GM「まあまあ。ここは、今回の依頼でガッポリ稼げばいいことだから」 ボルド「そんで、村には着いたの?」 GM「うん、着いてます。ドワーフの村は岩山をくりぬいて作られています。岩棚のあちこちに、 洞窟が掘られています」 ボルド「どこにいけばいいかわかる?」 GM「うん、そうだね。村の奥の、一段高くなった岩棚に、ブラキの神殿があるよ」 ボルド「そこにいけばいいんだな?よし、みんな行くぞ」
![]() 初心者ながら、ボルドはかなりプレイには慣れてきたと思う。実際にやった事はないが、ゲー ムの存在くらいは知っていたようで、このメンツの中では一番サクサクと進んでくれる。協力的 なプレイヤーがいるのはGMとしてうれしい。 GM「では、ブラキの神官ゼファーさんと面会しました。彼はずいぶん難しそうな顔をしていま す」 ボルド「え〜と…彼とはどのくらいの知り合いなの?」 GM「え?」 ボルド「いや、どんな口調で話せばいいかと思って」 GM「なるほどね。まあ、今回は仕事の話だから、そこんとこわきまえて話せばいいんじゃな い?」 ボルド「なるほど。では、ゼファーさん。何か、私たちに話があるとか」 マレイン「あるとか〜」 GM「では、ゼファーさんは語り出す。『そうなんだ。実は、うちの村が現在、二つの派閥に分か れてしまってね』」 ボルド「そりゃまた、なぜ?」 GM「『実は三日後、ブラキ神のお祭りがある。そこでは、今年取れた鉱石で鍛えた短剣を献上 することになっているのだ。しかし、うちの村の鍛冶屋が二つに分かれてしまってね』」 ボルド「え?」 GM「『うちの村には、ピッカリングとボロネジという二つの鍛冶屋があって、それぞれが競って いる。お互い、使う金属も違い、作る武器も違っている。それで、三日後のお祭りなんだが、自 分たちの作る短剣こそが、献上するのにふさわしいと言い張っていてね』」 ボルド「喧嘩しているわけか」 メバエ「それを、うちらに仲裁しろと?」 GM「『そこまでいけば完璧だ』とゼファーさん。『しかしそれ以上に困っているのは、どっちの短 剣をブラキ神への献上品にするかということだ』」 マレイン「神官さんが決めちゃえばいいのに〜」 GM「『そうはいかん。私が一存で、片方の剣を採用してしまうと、採用されなかった方に不満が 残る」 マレイン「そっか〜」 ボルド「で、どうすればいいの?」 GM「『まずは、お互いの話を聞いてみてくれ』とゼファーさんはいうよ。要するにまずは事情を 聞いてみるべきだとのことだ。それからまた後で、対策は立てられるんじゃないの」 ボルド「そんなもんなの?」 GM「まあ。とにかく、動かないとね」 メバエ「うまく動けばうちらも報酬がもらえるかもしれない。そうだ。この神官からお金はもらえな いの?」 GM「うん。二つの鍛冶屋の争いに一定の結果が出たら、それに応じて報酬を渡すそうだ」 メバエ「では、前金を…」 GM「いや、前金はないよ。ただし、この村に滞在している限り、食事や宿泊の場所はこのゼフ ァーさんが出してくれるそうだ」 メバエ「ずるずる居てもいいの?」 GM「一応、三日後がブラキ神のお祭りだからね。それまでにはなんとかして欲しいとこなんだ けれど」 ボルド「三日しか面倒を見てもらえないわけか」 GM「だから、それをすぎるとこの仕事はパーになる」 マレイン「のんびり出来〜ん。ボルド、がんばれ!」 ボルド「私ばっかりか!まあ、ともかく、話を聞いてみればいいか」 GM「そうだね。まずは動いてみよう。で、鍛冶屋は二つあるんだけれど、どっちから聞いてみ る?」 ボルド「ええと、ピッカリングと、ボロネジだったっけ?」 メバエ「そんな名前だった気がする」 ボルド「違うタイプの鍛冶屋だって話だけれど、どんな鍛冶屋か私はわからないかな?」 GM「いいところに気がついたね。では、ボルドはドワーフにつき、魔術スキルに+50してチェ ックしてみよう」 GM「かなり確率高いな(ころころ)成功!」 メバエ「どんなことがわかる?」 GM「そうだね。では、それぞれ、使う金属が違うことがわかる。ピッカリングが使っているのは アダマンタイトと言って赤く輝く魔法の金属。ボロネジが使っているのが、ミスリルと言って薄緑 色に輝く魔法の金属だ。それぞれ優れた金属なんだけれど、二つの鍛冶屋はどうしても、自分 たちの使っている金属が一番優れていると思って譲らない」 ボルド「それで争っているわけか!」 GM「そういうことだね」 マレイン「争っていても〜、村、村が困ることがある〜?」 ボルド「聞いてなかったのか!三日後にお祭りがあって、それに、どちらかの金属を使った剣 を奉納しなければならないんだぞ!はっ!GM!わかった!なんか、話はとっても深刻みたい だ!」 GM「そうだねぇ(にやにや)。」 ボルド「話を聞かずにおれない。いこう。鍛冶屋に話を聞くぞ」 (3)鍛冶屋の事情 そういう次第で、パーティーは動き始めた。まずは、ピッカリングに話を聞くことにした。鍛冶 屋は一段高くなった岩棚に工房を築いている。 GM「では、君たちは、岩をくりぬかれて作られた工房の中に入りました。あちこちでドワーフた ちがハンマーをふるっています」 メバエ「ボルドみたいなのがいっぱいいるわけだ」 ボルド「そんな!わたしは…ドワーフだよ?」 GM「いや、だから、ドワーフだらけなんだけれどね。まあ、いいや。君たちは一人の、年配のド ワーフの前に通されます。かなり威厳のある顔立ちで、彼がこの工房の責任者のピッカリング のようです。彼は『何か用かね?と聞いてきます』」 メバエ「いえ、別に用というほどではないんですが」 GM「『用事がないなら、引き取ってもらえんかね。今、ブラキ神に捧げる献上品を準備するの に忙しいんだが』」 マレイン「あ〜!つまり、喧嘩を止めて欲しいと言いに来た」 GM「『なんだと?』とピッカリングの語気が強まるけれど」 ボルド「いきなり怒らしてどうする!あ、あの、つまり、我々は、その祭のために来たんです」 GM「ピッカリング『ひょっとして、ゼファーに頼まれたのか?』と彼は言うよ」 ボルド「そうなんですけれどね。なんでも、ボロネジさん?の一派と争っているとか?」 GM「『争っているわけではない。ただ、我々の使っている金属が、彼らより優れているといって いるだけだ』」 ボルド「『そうだ』と言って、彼はアダマンタイトを出して来るよ。『みよ!この質量!そしてこの 輝き!』」 ボルド「そうなの?」 GM「うん。赤色に輝く金属片は、ドワーフの君からみたらとても美しいよ」 ボルド「もう一方のミスリルについて、知っている?」 GM「じゃあ、ドワーフだから、両方とも知っていていいことにしよう。アダマンタイトは重くてしっ かりしており、重さで敵を打ち砕く力がある。これに対してミスリルというのは、軽くて扱いやす い。軽量の剣を作るに向いている。まあ、どっちも一長一短があるね」 ボルド「でも、この人は、アダマンタイトがいいと言っているわけか」 メバエ「どうしよう?」 マレイン「わからん!」 ボルド「でも、頼まれたってことは、我々がこの事態をなんとかしないといけないってことだ」 GM「そうだね。ところで、ピッカリングさんは言うよ。『そうだ、君たち。今度は私から一つ頼ま れてくれないか?』」 メバエ「おっ。また依頼が来たぞ」 GM「『私たちの作ったアダマンタイトの剣は完璧だ。しかし、この剣を更に完璧にするのに協 力してくれないか?』」 マレイン「してもいいか?ボルド?」 ボルド「なんか話がズレてきてない?」 メバエ「うちらは報酬さえもらえれば、特に問題はありません」 GM「(ううむ、わかりやすいプレイスタイルだが、今回はちょっと危険だぞ)」 マレイン「わからんけど、聞いてみる〜」 GM「(おっと…仕方ない)では、ピッカリングさんは言うよ。『この村の真ん中を流れる滝の水 で、我々は剣を鍛えている。なぜなら、この滝の水に微量な魔力が含まれているからだ。しか し、この滝の裏側には洞窟があって、そこにはブラキの聖なる鍛冶場があるとて言われてい る。そこに、このアダマンタイトと同じ、赤い泉があるという。その泉にこの短剣を浸けてきてく れないだろうか』」 ボルド「短剣を、浸ける?」 GM「ピッカリングさんは、アダマンタイトで作った短剣を出してくる。『この剣は、我々がブラキ 神に捧げるために、全力で鍛えたものだ。その、赤い泉に浸せば、この剣は非の打ち所がな いものとなる』」 ボルド「ほう」 GM「『ぜひ、君たちに頼みたい』とピッカリングさんは言う。ちなみになぜかというと、ドワーフは 水に浮かないので、泉の側にいくことは致命的な行為だからだ」 ボルド「じゃあ、私も駄目じゃん!」 GM「だけど、君には仲間がいるしね」 ボルド「そういうことか!私一人でこの村に来ても駄目だったわけか」 メバエ「そういう依頼は、全て報酬次第です」 GM「『うむ、報酬か。金貨五百枚と、魔法の短剣を一本渡そう』と言う」 メバエ「え?その短剣がもらえるの?」 GM「いや、そうじゃない。別に鍛えた短剣。一応、+1の魔力はあるものらしい」 メバエ「いいじゃない!引き受けようよ」 ボルド「いいの?」 マレイン「オレ、いいよ」 ボルド「なんか、変な方に話が流れていっている気がするんだけど…」 GM「(まあ、初心者だとまだ修正できないか)『では、頼もう』とピッカリングさんが短剣を渡す。 『その短剣を泉に浸したら、また持って帰ってくれ。確認して、確かに泉に浸したことがわかれ ば、その時に報酬を渡そう』と」 メバエ「この短剣、持ち逃げしちゃまずいよね?」 GM「それはできるけれど、もちろん、そんなことしたら、この後君たちを信頼して仕事を任せる 人はいなくなるぞ。もちろん、ボルドはドワーフ仲間からねらわれる」 ボルド「それはまずい」 メバエ「では、その滝の洞窟とやらに行こう」 こういうわけで、一行は、何か話のズレた依頼を引き受けてしまった。ベテランのプレイヤー なら、ここでもう一方のボロネジ達の話を聞くなどの選択肢もあったろう。しかし、GMとしては、 あえて危険な賭に身を任せてみた。一応、こういうシティ・アドベンチャー(規模はビレッジだけ れど)も、彼らが体験していいと思ったからだ。さて、この後どうなるかはほとんど成り行き任 せ。GMとしてはいい加減な話である。 (4)泉を目指す GM「では、滝の洞窟へ向かうね。村の真ん中に大きな滝があって、その裏側に回れるように なっています。滝の裏側には、洞窟が口を開けているよ」 メバエ「またダンジョンだ」 GM「ではここで、マレインは盗賊スキルに+20。後の人たちは修正無しでチェックしてみて」 メバエ「え?まさか、罠?」 マレイン「(ころころ)オレは大丈夫」 メバエ「(ころころ)駄目だって」 ボルド「(ころころ)私も。集中力、使った方がいいのかな?」 GM「あ、ごめん。これ、そういうのじゃないから。一人成功していればいいよ。あのね、え〜と、 誰かが君たちの後ろから着いてきているような気がするよ」 ボルド「誰だ!って、私はわからんのだな」 マレイン「弓!弓を打つ!」 GM「いや、だから、気配がするだけで、実体は見えないんだってば」 ボルド「気になる。誰だろう」 メバエ「まさか、うちらの短剣がねらわれているとか?」 GM「(なかなか鋭いじゃない)」 ボルド「GM、今はどうしようもないよね?」 GM「まあそこは君たちの判断に任せます」 ボルド「気になるけれど、行くしかないかな」 マレイン「弓!弓打ちて〜!」 GM「進むでいいかな?では、進むとね、洞窟はひんやりして湿っています。ところどころに苔 が生えているよ」 メバエ「あれ、分かれ道だ」 GM「そうだね」 メバエ「両側をのぞいてみるけれど」 GM「そうだね。じゃあ、また全員盗賊スキルでチェックしてみて。今回は修正は全員なし」 マレイン「(ころころ)うしうし!」 メバエ「(ころころ)無理」 ボルド「(ころころ)わかったぞ」 GM「相変わらず僧侶は失敗するね。まあ、それはそうとして、遠くの方に、ぼんやりとかすんで 水たまりのようなものが見えるよ」 ボルド「どっちから?」 GM「いや、どっちにも」 ボルド「え?え?」 メバエ「行ってみるしかないんじゃない」 GM「どっちから?」 メバエ「あ、そうか。じゃあ、右側から行ってみるよ」 しばらく歩くと、そこには小さな泉があった。泉の水は薄い緑色をしているように思える。 メバエ「探している泉ってここかな?」 GM「ピッカリングさんは赤色の泉と言っていたけれどね」 マレイン「短剣、浸けてみたら?」 GM「あ、もし、この泉がただの泉だったら、剣が錆びるかもよ」 ボルド「それは困る!と、いうことは、これはただの泉?」 GM「さあ、それは、どうかな?」 ボルド「赤くないなら、ここじゃなくて、他じゃないの。他の泉を探してみよう」 実は、この泉も魔法の泉なのであるが、一行はそこまで調べなかった。と、いうよりは、ソー サラーがいないので、なんともならんのだ。ロードスで、やむを得ず三人でやる時には、ウォリ アー、プリースト、ソーサラーの三人でやるのが一番ベストであると考えている。ウォリアーでス カウトの代用はできるので、このパーティーは正直厳しい。 GM「では、今度は赤色の泉についた」 メバエ「ここが探していた泉かな?」 ボルド「とりあえず、依頼通りに、短剣を浸けてみればいいんじゃないの?」 マレイン「ボルドボルド!」 ボルド「また私か?ちょっと待って!やっぱり、私も水には浮かないんだよね?」 GM「そうだよ」 ボルド「そんな危険なこと出来るか!溺れて死ぬのは嫌だ!」 GM「まあ、そういう作業はスカウトに任せるのがいいんじゃないの。身が軽いし、革の鎧しか 浸けていないし」 メバエ「マレイン、ゴー!」 マレイン「人使い荒い!」 GM「いや…特になにもしてないじゃない」 マレイン「うお〜」 GM「とか言ってる時に…全員、盗賊スキルのチエックしてみて」 マレイン「(ころころ)うし!」 メバエ「(ころころ)無理」 ボルド「(ころころ)私は成功」 GM「集中力使う?ちなみに、成功した方がいいとだけ言っておこう」 メバエ「なら、使うよ。(ころころ)よし!」 GM「では、めでたく全員成功したね。それでは、君たちは背後に気配を感じたぞ」 メバエ「ひょつとすると、誰かつけてきたの?」 GM「ご名答!ふと、君たちが振り返ると、そこには武器を持ったドワーフが二人立っているよ」 ボルド「なんだなんだ」 GM「『お前達、ピッカリングに頼まれて、武器を泉に浸けに来たようだが、そうはさせん』と彼ら はいいます」 ボルド「あ、ひょっとして、もう一方の鍛冶屋かなんか?」 GM「さあ、それはわからないけれど、たぶんその予想は正しいような気がするよ(笑)」 メバエ「うちらの邪魔をするとは」 GM「『完璧な武器は、我々のミスリルで作ったものだ。アダマンタイトなんかをブラキ神に捧げ させないぞ』」 ボルド「そんなこと…話し合いの余地とかないの?」 GM「さあ。しかし、かなり厳しいと思うよ。なにしろ、君たちはピッカリングさんの依頼を受けて しまったしね」 ボルド「と、いうことは彼らにとって我々は敵か!」 マレイン「敵だ!弓!弓!」 GM「打つの?」 マレイン「打つ!」 GM「では、相手の防御スキルは20だから、攻撃スキルから20引いてチェックして」 マレイン「(ころころ)とりゃぁ!当たった!」 ボルド「うわ〜!なんてことを」 マレイン「やっつけるぞぅ!」 GM「では、マレインが攻撃したので、問答無用で戦闘だ。次回からイニシアチブの振り合いで す」 ボルド「こまったぁ〜!」 良識派のボルドとしては、なんとか話し合いで解決に持ち込みたかったようだが、弓を打ちた くてウズウズしていたマレインが先制してしまい、全ては終わった。この後、激しい戦闘が繰り 広げられる。ドワーフの戦闘スキルは80もあり、LPは40。しかもそれが二人。気が進まない ボルドが前に出て、後ろからメバエがヒーリングを連発。時間はかかったが、さすがに戦いに は終わりが訪れる。ドワーフは二人とも三人の前に屈したのであった。 (5)不思議な出来事 GM「では、二人目のドワーフも倒れた」 ボルド「やっぱり、死んでしまったのか?」 GM「そうね。ここは、集中力のチェックに成功したら生きていてもいいことにしよう」 ボルド「こっちがチェックするの?」 GM「いや、このドワーフたちそれぞれで…(ころころ)。うん、そうだね、二人とも気絶しただけ だ。ヒーリングをかければ目を覚ますよ」 ボルド「よかった。同族殺しになるのは嫌だ」 マレイン「ここはとどめを!」 ボルド「まて!そんなことしたら駄目だ。それより、まずは短剣を泉に浸けよう」 マレイン「えー」 メバエ「ところで、このドワーフ、なんか持ってないの?お金とか?」 GM「(金の亡者かメバエ)では、いいよ。探ってみてくれ」 メバエ「なにか、チェックとかいるの?盗賊スキルとかで?」 GM「いや、それはいいよ。ええと、見つかったのは、薄緑色に輝く短剣だね」 メバエ「薄緑色?」 GM「うん。ボルドが見るとわかるけれど、これはミスリルで作られた短剣であることがわかる」 メバエ「と、いうことは価値はあるな」 ボルド「ちょっと待って!もう一つ、緑色の泉があったよね。むこうにこの短剣を浸けると、どう なるんだろう」 GM「さあ、それはやってみないと」 ボルド「あとでやってみよう。我々の持っている短剣を、赤い泉につけてみよう」 GM「浸けてみる?浸けると短剣の輝きはその強さを増してきたよ。魔力が強まったような輝き だ」 ボルド「たぶん、向こうの泉に緑の短剣を浸けたら輝くんだ」 メバエ「あ、そうか。このドワーフたちも、自分たちの剣をパワー・アップさせようとこの洞窟にや ってきたんだ」 GM「たぶん、そうだろうね」 メバエ「じゃあ、ミスリルの方は別に泉に浸けなくてもいいんじゃないの?」 ボルド「そうか」 GM「ところで、まだ洞窟は先が続いているけれど」 メバエ「じゃあ、先に進むよ」 洞窟を先に進むと、そこはブラキの神殿を祀る祭壇になっていた。奥にはブラキ神が刻まれ たプレートが置かれている。そしてその前には三つの、色の違う祭壇が緑・黄・赤と並んでい た。 ![]() ボルド「なんか、特別なところがある?」 GM「そうだね。まあ、普通の祭壇はこんな風に色分けなんかされていない。あと、奥のプレート に何か文字が書いてあるよ」 ボルド「読める?」 GM「魔術スキルのチェック…いいや、ドワーフだから、ブラキ神についてのことは読めたとしよ う。こう書いてあるよ。『赤と緑の祭壇にそれぞれの武器を置け。その後に神の望む武器が姿 を現すだろう』と」 ボルド「赤と緑の祭壇に、それぞれの武器?確かに、緑の短剣も、赤の短剣もあるけれど」 メバエ「置いたら、なんか起こるのかな?」 ボルド「赤の短剣とか置いてみるけれど、どんな感じ?」 GM「赤い短剣を赤い祭壇に置くんだね?では、その短剣がいっそう輝きを増すよ。キーン、キ ーンと音まで立てるようになる」 ボルド「じゃあ、緑の短剣を置くと?」 GM「緑の短剣を緑の祭壇に置いても何もおこらないよ」 ボルド「おかしいな。何か起こると私はふんでいたんだけれど」 GM「そうだね、ヒントをいうと、何か忘れていない?」 ボルド「?そうか!緑の短剣も、緑の泉につけなきゃならないんだ!」 そうです、その通りです。このブラキ神殿の泉は、それぞれ、魔法の金属であるアダマンタイ トとミスリルを活性化させる働きがあるように設定してありました。そして、活性化させた金属 を、それぞれの祭壇に置くと… GM「では、赤と緑の祭壇に、それぞれの短剣が置かれました。すると、二つの短剣はゆっくり と引き合って、真ん中の黄色い祭壇に動いていきます。とたん、あたりは激しい光に包まれまし た。光が収まったとき、黄色い祭壇には一本の剣が置かれてしました」 ボルド「なんだろう?」 GM「ドワーフにわかります。これは、伝説の金属、オリハルコンです。黄金色に輝くこの金属 は非常に珍しく、滅多にないすばらしいものです」 ボルド「そんなものかできたのか!」 GM「しかし、代わりにアダマンタイトの短剣はなくなってしまったけれどね」 ボルド「これだと依頼を達成したことにならないかな?」 メバエ「持ち逃げ…」 マレイン「村人、全員殺る!(←お前な、無茶言うな)」 GM「まあ、これからどうするかは、君たちの判断にゆだねます」 ボルド「え………ええ!どうしよう」 GM「さあ、君たちの腕の見せ所です」 最後の最後でGMとしては突き放してみた。初心者達だが、これで冒険も三回目。そろそろ、 彼らが「卒業」してもいいころである。そしてまた、TRPGが自由度の高いゲームである以上、 その選択権はプレイヤーの側にある。 赤の短剣も緑の短剣もなくなった。そして、目の前にあるのは、どちらでもないオリハルコン の短剣。さあ、この材料を彼らはどう料理するのか。 (6)すばらしいまとめ ボルド「この短剣を持って、ゼファーさんのところに行こう。ピッカリングのところにはいけないと 思う。なにしろ、赤い短剣を持って帰れないんだし」 マレイン「そ、それで、村人を殺るの?」 ボルド「いいや、そんで、GM、ゼファーさんに、村人を集めてもらうことができる?」 GM「それは、できるよ。ブラキの神官だから、そのくらいの力はあるよ」 ボルド「じゃあ、村人を集めてください」 こうして、村の中央、ブラキ神殿の前に、ピッカリングやボロネジを初めとした鍛冶屋集団。そ して、他の村人ドワーフたちが全て集められた。 GM「では、集まったよ。みんな、何事かと顔を見合わせている。」 ボルド「では、オリハルコンの剣を掲げて説明しよう。実はみなさん、オリハルコンの剣が見つ かったんです」 GM「人々がうぉーと感動の声を挙げるよ」 ボルド「ところが、この剣は、アダマンタイトとミスリルが合体してできたものなんです」 GM「人々の顔が一度に驚きに変わりました」 ボルド「つまり、アダマンタイトだけでも、ミスリルだけでも、オリハルコンはできなかったんで す。二つの金属が協力しないとオリハルコンは完成しなかった。協力しないと駄目なんです。こ の村はアダマンタイトとミスリルで争っているけれど、それは駄目だというブラキのお告げだと 思うんです」 GM「すごい!うまくまとめたね。村人達が口々に『そうだ!その通りだ!』と言っているよ」 ボルド「納得してもらえたかな?」 GM「そうだね。ピッカリングも、ボロネジも、感動してお互いを見つめ合っている。やがて、二 人はがっちり握手を交わすよ」 ボルド「よかった。なんとかまとまった」 GM「喧嘩していた二つの鍛冶屋の人々も、互いにガッチリと手を握りあう。そして、口々にオリ ハルコンの短剣をたたえ始める。ゼファーさんも、今度のブラキ神のお祭りには、このオリハル コンの短剣を捧げることを宣言したね」 ボルド「両方の力を合わせてできた短剣だから、これがふさわしいと思う」 メバエ「ボルドが頑張ってくれたから、報酬はバッチリだ」 GM「まあ、そのあたりのことはブラキ神のお祭りが終わってからだね」 メバエ「え〜」 GM「しかし、よかったな。実にうまくまとめた。もうボルドは初心者とはいえないね」 ボルド「いや…なんとか平和に終わらせたかったもんで」 こうして、最後のまとめはボルドのおかげで上手くいった。GMとしても、この展開には十分合 格点を与えたいところである。実際、どうなるか懸念していたが、実に良心的な形でこのシナリ オを成功に導くことが出来た。 (7)初心者達の卒業 GM「さて、無事にブラキ神のお祭りも行われ、争いもなくなって村は平穏に戻りました。君たち には、ピッカリング、そしてボロネジの方から、それぞれお礼が届けられます」 メバエ「すばらしい!」 GM「金貨が千枚ずつで、合計二千枚。そして、魔法の剣と盾が届けられました」 メバエ「それで、ゼファーさんからは報酬はないの?村の争いを収めたんだから、いっぱい報 酬くれてもいいと思うけれど」 GM「きちんと覚えていたか…では、非常にうまくいったので、こうしよう。これから先、君たちの 誰かがも冒険で死んだとしても、生き返ることができるように手配するというのはどうだろう?」 メバエ「そんなことできるの?」 GM「もちろん、多額のお金はいるけれど、生き返ること自体は大変なことだよ。ゲームと違っ て、死んだらずっと死にっぱなしが普通なんだから」 ボルド「私は別に問題ないぞ」 マレイン「や、殺れんかった!」 GM「(最後までむちゃくちゃ言ったな)はいはい。では、それで全ての報酬を受け取ったという ことにします。これで、君たちの冒険も、ついに三話目が終わりました」 メバエ「なんか、まだまだわからんところが多いけれど」 GM「しかし、随分とプレイそのものには慣れてきたと思うよ。あとはまたいろんな場面に遭遇し て、どんどんわかっていくと思う。まあ、今回のボルドのプレイは手本なるようなよいものだった と思う」 ボルド「実際、あれでよかったのかよくわかんないけれど」 GM「ほとんど百点に近い終わり方だから、あれでよかったよ。では、今回のセッションはこれ で終わりです。そして、このゲームもこれで一区切りです」 ボルド「次があったら、もっとうまくやりたい」 GM「そういう意識があったら、ゲームがもっと面白くなっていくと思う。とりあえず今回の第三話 目で一区切りです。機会があったらまたやろうね。それでは」 (完) |