キラーク
カナート
ダルメ
種族:ドワーフ
種族:エルフ
種族:ハタカーン
HP:28 AC:1
HP:14 AC:1
HP:24 AC:5 

(1)米騒動勃発

DM「では、前回に引き続いて、エルフラントの首都〈グロースパディー〉から始まります」
カナート「この間にカナートは経験点を二万稼ぎました」
DM「これこれ(笑)」
カナート「だって、なかなかレベルがあがらんから」
DM「エルフってのはそんなもんです。マジメに稼ぎましょう。さて、首都の水不足も解消して五
日ほど。稲の穂も綺麗に色付いてきました」
カナート「この間に宿屋の主人から米料理のレシピを習っておこう」
DM「では、チャーハンとかドリアとか米煎餅の作り方を教えてもらえる」
ダルメ「私たちはどうしましょう?」
キラーク「せいぜい、寝るくらいしかないな(笑)」
ダルメ「それも非生産的ですから、私は田圃の見回りでも行きますよ。そろそろ稲も取り入れな
んでしょう?うーん、なんとすばらしい田園風景。ノルキスタンではありえない風景です(笑)」
DM「向こうは風雪波浪警報って感じだからね。では、そうやってダルメがブラブラしていると、
君は面白いものを目撃する。田圃の傍には作業小屋が立てられているんですけれど、そこで
エルフ達が米を挽いて壷に入れているのが見える。そして何だか発酵した香りもする」
ダルメ「酒ですか?」
DM「うん、そんなもんだね。作業をしていた女の子がダルメに気付くと、壷の中から液体をコッ
プで酌んで差し出すよ。『飲んでみる?あったまるよ』と」
ダルメ「凄い純米酒ですね」
DM「『寒い地方のあなたたちにはいい飲み物よ。あ、でも、あんまり飲むとパアになるから注
意してね』」
ダルメ「ふう、この液体を人間たちに広めて、奴らをアル中にするという作戦もいいですね。い
や、それ以前に、エルフ達に広めて、奴らを堕落させ、マジックアイテムをしこたま奪う…」
DM「君、ねぇ…(焦)」

 苦笑したように見えるDMだが、実はダルメのこの発言に少々ドッキリしていた。なぜドッキリ
なのか。それはこれから追い追い明らかになるであろう。

DM「ダルメがそんな感じで田圃を見ているとエルフ達が物珍しいので寄ってくるよ。『おっ、犬
だ』『犬、元気?』とかやけにフレンドリーです」
ダルメ「だぁ!私は犬じゃなーい!」
キラーク「私はそんな彼らを見守りながら、藁で筵でも編む練習をしておこう。これはノルキスタ
ンで使う防寒着にピッタリだ(笑)」
DM「さすがにドワーフはエルフたちからも遠巻きにされている」
カナート「そんな中、このヒーローの私が歩くわけだ」
DM「では人々は『あれがカナートだ』とカナートのことを褒めたたえる」
カナート「わ〜、ここでは私はシール君です。カナートの村のものであることは知られたくないで
すから」
DM「では、シール君は英雄扱いでチヤホヤされる」
ダルメ「それはそうと、酒の作り方を教えてもらえますかね?」
DM「教えてもらえるよ。米を精米して、蒸して、それにカビをまぜるといいらしい」
キラーク「イエロー・モールド(←猛毒のカビ)を混ぜたら駄目か?」
DM「造るのは酒であって毒薬ではないんだから(苦笑)」
キラーク「どっちも似たようなもんだがな(←プレイヤー本人が超下戸)」

 こんな調子で五日間は平穏無事に過ぎた。そして、五日目に、またもや事件が発生すること
となる。

DM「では、五日経ち、田圃の稲も刈取られました。そして君たちは長老の所に呼ばれていま
す」
カナート「長老、我々がもらう分の米はできたんですよね?」
DM「『うむ、刈り取って精米した。しかし、また、困ったことが起こってね』」
ダルメ「なんですか。言っておきますが、我々は頼りになりませんよ」
DM「『いや、それがね。今度のことは君たちにも関係がありそうなものだから』」
ダルメ「なんですか?」
DM「『実は昨夜、テロとおぼしき事件が発生した』」
カナート「ええっ!こんな村にテロが?具体的にはどんな事件です?」
DM「『うむ、昨夜のことだが、酒場のウェイトレスがどうも掠われたみたいなのだ』」
カナート「それはテロではなくて、ただの誘拐では?」
DM「『ところが、君たちがウロウロしはじめてから、そういうことが起こったので、誘拐は君たち
の仕業ではないかという話も挙がっているのだ。酷い憶測では、ノルキスタン側の仕組んだテ
ロではないか、と』」
カナート「しかし我々にはアリバイがありますよ」
キラーク「長老、我々は一刻も早く米を持ち帰らなくてはならない。誘拐なんか企む余裕などな
いではありませんか」
DM「『いや、私も君たちが犯人ではないとは思っているんだ。しかし、世論はそうはいかん。加
えて、食料長官が、テロリストの疑いがある連中には米は渡せないというものだから』」
カナート「ほほう?ではその長官を連れてきてもらいましょう」
ダルメ「しかし、長官とかいう大層な名前の役職があるんですな。街のトップは長老なのに。な
んか長官の方が偉そうに感じるのですが(笑)」
カナート「これだからエルフは(笑)。私がエルフラントを捨てたのもよく分かったでしょう」
ダルメ「よく分かりますよ。しかし長老、と、いうことは、我々は嫌疑を晴らさないと米がもらえな
いんですか?」
DM「『いやいや、私は君たちが無実と思ってはいるんだが…』」
カナート「しかし、これは言い掛り、もしくは名誉既存ですよ。あなたの話に私はとてもショックを
受けました。もし我々が嫌疑を晴らしたら、この心の傷を埋める代価をいただきたいもんです
な」
DM「『うむ、そうだねぇ。しかし、この件に関しては私もたいへんショックを受けたから、ちょっと
休ませてもらうよ。今、別の担当者を呼ぶから』」
ダルメ「汚い…大人のやり口ですな」
DM「まあまあ(笑)。とか言っていると、ドアがノックされ、『入ってもよろしいですか』と女の声が
する。そして、エルフの女が入ってくるよ。やけに凛々しい彼女は君たちを見ると『あなたたち、
いい加減に悪事を白状して欲しいですね。あなたたちがテロの犯人でしょう』と言います」
カナート「失礼な!なんですか、我々を犯人扱いして」
キラーク「駄目だな…この女は」
カナート「何をもって我々を犯人と決め付けるんですか?」
DM「『そこの犬が、掠われた女の子と話していたところが目撃されています』」
ダルメ「掠われたのはあの時の、作業小屋の人でしたか」
カナート「話していただけで犯人ならこの街には随分な数の犯人がいるものですね」
DM「『開き直りも見苦しいですね。まあ、結構です。我々としてはテロリストに食料は供給でき
ない。当方としてはこのように処置をするだけですから』」
ダルメ「あのう、もしかして、この方が食料長官ですか?」
DM「では長老が『うむ』と」
カナート「わ、わかりました。では、我々が自力でこの自力を問題を解決すれば、食料を渡して
もらえますね?」
DM「『ええ、いいわ』」
カナート「長老、それでよろしいですか?」
DM「『あ、ああ、わしはかまわんよ。なぁ、バレイ長官』」
ダルメ「バレイさんというのですか」
キラーク「バレイさん、では我々はこの問題を解決してみせる。問題が解決したら、約束はきち
んと守っていただきますよ。ところで、最近、この村に人間が訪れませんでしたかな?」
DM「『人間なんて来ていませんわ。まあ、そもそもよそ者がこのエルフラントに来る事がおかし
いのです』」
カナート「ある意味エルフらしいエルフですな(苦笑)しかし、あまりこの人と争うのはよくないと
私的には思う」
ダルメ「ここは、現場検証にでも向かうことを提案します」
カナート「長老、我々が事件を解決すれば、必ず米は渡してもらえますな?」
DM「『ああ、もちろんだよ。なぁ、バレイ。君もそう思うだろう?』と(笑)」
キラーク「まったく…何かイライラする光景だが仕方がない。我々の名誉のために調査に向か
うとしよう」
カナート「ハタカーン、案内を頼むよ」
ダルメ「はいはい。では、現場検証に向かうのです」

(2)テロ捜査の開始

DM「では、現場に着いたよ」
ダルメ「そういえば、事件の詳細を詳しく聞いていませんでした(笑)」
DM「まあ、それは聞いていたことにしてもいいでしょう。つまり、こうだ。昨夜の十一時過ぎ、
〈小麦亭〉のウェイトレスが、作業小屋に保存していた酒を取りに行ったらしいんだが、そのま
ま帰ってこなかったそうだ」
カナート「と、いうことは、誘拐の現場は誰も見ていないわけだ。単なる失踪かもしれないのに」
ダルメ「取りあえず現場を調査しましょう。現場周囲をくまなく探索です」
DM「では、全員が知恵でチェックしてくれ」
一同「(ころころ)成功」
DM「全員成功した?では、特に変わったところはない」
ダルメ「物を引きずったような跡もない?」
DM「それは分からない。なぜかというと、足跡とかがいっぱいついてしまっているから」
カナート「作業小屋には争った痕跡とかないわけかな?」
DM「特に見当らない。壷とかも割れていないよ」
キラーク「酒場の客で、そのウェイトレスに絡んでいたような客とかはがいないか?いたらそい
つがアヤシイと思うが」
DM「それは酒場に行ってみないと」
カナート「私はこの間ずっと酒場に入り浸りだったのに気付いていないのかな?あ、でも、ずっ
と厨房にいたからなぁ」
キラーク「そして厨房で第二の殺人が起こるのだ(笑)」
DM「そうしていいの?」
キラーク「いや、それは困る。早速酒場に行こう」
カナート「酒場に行ったぞ。こんにちわ〜、おやっさん、元気かい?」
DM「すると、厨房の片隅でマスターがどんよりと沈んでいる。『ああ、君たちか…』」
カナート「なんか、たいへんなことになったみたいですね。ウェイトレスの彼女、掠われたらしい
じゃないですか」
DM「『ああ…しかも、世間の噂ではあんたたちが犯人らしいじゃないか』」
カナート「それは噂に過ぎません。我々は今真犯人を探すために奮闘しています」
ダルメ「マスター、彼女は酒を取りにいって掠われたと聞きましたが、どんな状況で取りにいっ
たんですが?」
DM「『いや、それがな。酒を取りに行くときは、ここから空の壷を持っていって、小屋に置いて、
入っている壷を持ってくる。ところが、今気付いたんだが、彼女は壷を持っていっていなかった
んだ』」
カナート「???」
ダルメ「誰かに会いに行ったとかですかね?」

 この後一行はマスターに色々な話を聞きまくる。その結果、ウェイトレスの名前がパールであ
ること。彼女が住み込みで働いていたこと。腕のいいウェイトレスであったこと等を聞く。そして


DM「『トラブルってほどでもないんだけれど、半年前からこの街に不思議な噂が流れているん
だ。なんでも、酒場がもう一軒できるとか、なんとか』」
キラーク「こんな小さな街にか?」
DM「いや、割にこの街は開けているし、この〈小麦亭〉が今の所一軒だけの酒場だから、もう
一つ建ってもおかしくないよ。ただ、エルフ達は泥酔するのを好まないから、酒を好んでまで飲
む人口はそんなにいない」
ダルメ「そんなんで酒場が成り立つんですか?」
DM「ここのマスターは趣味でやっているからね。酒の作り方を知っているのも、この人の趣味
みたいなもんです」
カナート「お酒は勝手に造っていいのか?」
DM「それはいいよ。ただ、作り方を知っている者が限りなく少ないね」
カナート「そうかぁ。マスター、元気出してよ。きっと私たちがなんとかするよ」

 めずらしく人道的なカナートの台詞を最後に、一行は酒場を出る。手分けをして色々に聞き
出すと、次のようなことが発覚した。

@酒場が出来るという噂は半年前からチラホラ出ている。

A酒の作り方を知っている者は小麦亭の従業員くらいなもんである

Bエルフは乱れるのが嫌いなので、好んで酒は飲まない。新しい酒場が商
売になるとは思われない。


カナート「以上の情報を総合したところ、やはり犯人はダルメ!」
ダルメ「なんでですかぁ!」
カナート「お前は酒の作り方に興味津々だった。しかも、これを周囲に広めて堕落させるつもり
だった。したがって酒場を造ろうとしたのも、ウェイトレスを掠ったのもダルメ!」
ダルメ「なんでじゃ!思い切り、この場でカナートの名前を叫んであげましょうか?エルフの裏
切り者だと」
カナート「おいおい何を言うんだ。私たちは厚い友情で結ばれているんだよ(笑)」
キラーク「しかし、あのウェイトレスがダルメに酒のことを教えたというのが気になるな。ひょっと
して、罪をダルメに擦り付ける策略だったのじゃないか?」
ダルメ「だったら、私は完全にハメられたってことになります」
カナート「気になるのは、酒場が建つという噂だ」
ダルメ「半年前からわざわざ、こんな詰まらない噂を流して、何か意味があるんですかね?」
カナート「そこがひっかかる!何か意味があるんだろうけれど…」

 もちろん、意味はあります(笑)。しかし、もう彼らは、自作自演でシナリオのネタを大幅に解
明してしまっているのである。ただ、彼らが、そのことに気付いていないのがDMとしては幸い
であり…

(3)別の酒場?

カナート「パールさんの家に行ってみたいんだけれど」
DM「あ、実は彼女は〈小麦亭〉に住み込みで働いているんだ」
カナート「じゃあ、〈小麦亭〉に戻っておやっさんに聞いてみよう。おやっさん、パールさんの部屋
を見せてもらいたいんだけれど」
DM「『ん?ああ、いいよ』」
カナート「あれ?本当に、いいの?」
DM「『それで彼女が見つかる手がかりが得られるなら』」
カナート「ゴメン、おやっさん。あんたいい人だ!」
ダルメ「邪悪なのは実は我々の方なのでは(笑)?」
DM「では、マスターはパールの部屋を見せてくれる」
カナート「こっそり、忍び込むぞ」
DM「(なんでよ?)簡素な部屋だよ。机とベッドとクローゼットがあるだけ」
ダルメ「クローゼットの服がごっそり無くなっているとかはないんですか?」
DM「『ないよ』」
ダルメ「夜逃げしたわけでもなさうそですね」
キラーク「着のみ着のままで出ていったというわけか」
カナート「よし、シークレット・ドアを探すぞ」
ダルメ「なんでですか(笑)」
カナート「実は秘密のドアがこの部屋にあって、そこに隠れているかもしれないのだ(笑)」
DM「はいはい、(ころころ)そんなものは発見できなかった(笑)」
キラーク「机がまだ調べていないな。そうだ、机の引き出しを注意して探してみる。二重底でな
いかもよく注意してな」
DM「では、敏捷にマイナス5してチェックしてみて」
キラーク「(ころころ)成功」
DM「あら?では、キラークは、引き出しに入った紙や羊皮紙の間に、一枚の図面が挟まって
いるのが分かった」
ダルメ「それは、パールさんが書いた、世界征服計画書であった(笑)」
DM「違うよ(笑)。建物の図面だね」
キラーク「なんの建物だ?」
DM「うん、酒場の図面だ」
カナート「酒場!また、妙にキナ臭くなってきたぞ」
キラーク「図面を見て、何か気付いたことはないか?ドワーフの技能〈構造物の罠発見〉を応用
しよう」
DM「(ころころ)そうだね。一ヶ所、不思議な所がある。この酒場には換気装置が仕掛けられて
いるよ」
キラーク「なぬ?不思議な酒場だな。普通は、そんなもの着けないからな」
DM「たしかに、着けないね」
キラーク「この図面はいったい誰が書いたのだろう?」
DM「それはわからない。ただ、しっかりした図面だから、おそらくプロの仕事だろうね」
カナート「じゃあ、図面をもっておやっさんの所へ行こう。おやっさん、こんな図面があったけれ
ど、誰が書いたかわかりますかね?」
DM「『図面?そんなものを書けるのは設計技師のロッソくらいなものだ。この酒場の設計も奴
に頼んだ』」
ダルメ「取りあえず、手かがかりらしいものは掴めましたね」
カナート「ロッソさんとやらに会いに行こう」

 手がかりを見つけた彼らは設計技師のロッソに会いに行く。

DM「では、君たちはロッソ建築事務所についた。この事務所は地面に建っています」
カナート「こんにちわ〜」
DM「では、ガチャリとドアが開いて、ヒゲ顔のエルフが出てくる」
カナート「ヒゲ顔エルフ?この人、ハーフエルフ?エルフはヒゲは生えないですから」
DM「そうだね、そうなるかな。『なんだね、君たちは』と彼は言う」
カナート「あなたがロッソさんですね。実は、〈酒場の設計図〉のことでお話をお聞きしたい」
DM「『な、なんだね…』とかなり動揺した様子です」
キラーク「動揺するのも当然だ。あのような〈換気装置〉まで設計してはな」
DM「『な、なんだと、何を知っているんだ』」
キラーク「まあ、表で立ち話もなんだから、中に入ろうではないか」
カナート「ここは一つ、同じエルフ同士、腹を割って話しましょうか」
ダルメ「あの設計図はいつ書かれたものですか?まさか、半年前とか?」
DM「あからさまに顔色が変わりました」
ダルメ「ふう、何をやらかしたのかが分かりやすいお人だ(笑)」
キラーク「この、換気装置の意味について教えていただきたいが。なぜ、換気装置など酒場に
つける?」
DM「『いいじゃないか。私の趣味だ』」
キラーク「着けるのはかまわないが、どういう装置かくらいは説明していただきたいな」
DM「『上の換気口から風が入って全体の空気を入れ替えるシステムだ』」
キラーク「なるほど。それで、この装置と図面は、誰に依頼されたものだ?」
DM「『なぜ、そんなことを言わねばならん。依頼人の秘密は守らないといかん。私には義務が
ある』」
キラーク「ニュースロイト軍の、エルフラント侵攻に絡んでいるとしても?」
DM「『ニュースロイト軍の侵攻?はは、そんなことあるわけないじゃないか』」
カナート「また、この件は、先日掠われたウェイトレスさんのことにも関わっているかもしれない
のです。彼女の机のなかからこの図面が出てきました」
DM「『そんなバカな。だってそれは…いや、いかん。依頼人をしゃべるワケにはいかない』」
ダルメ「しゃべってください。そうすれば楽になると神もおっしゃっています」

 一行はロッソ技師に色々と尋問する。しかし、ロッソは口をわらない。

ダルメ「ああ、このままでは掠われたパールさんは帰らぬ人となってしまうのですね…」
DM「『そんなはずはない。そんなことがあるはずがない』」
キラーク「口が堅いな」
カナート「どうも、しゃべってくれそうにはないけれど、この人、悪い人にも思えないよ。ここは一
度引き下がろう」

 カナートの意見が採用され、彼らは一度引き下がった。しかし、もちろんこのままでは終わる
はずがない。終わってもらってもこっちが困る(笑)。賢明な彼らは、ロッソの監視を始めたので
あった。

(4)今度は尾行

キラーク「彼は何か思い詰めていたようだった。きっと図面の依頼人に会いにいくと思う」
カナート「ロッソを見張る?」
ダルメ「私が見張っておきましょう。忍び足も使えますから」
カナート「では、私たちは適当にその辺りを流しておこう。ロッソは動くかな?」
キラーク「出掛けたら、その隙に家宅捜査をする手もある」
カナート「あ!ちょっと思いついたので、バレイのところに行ってみよう」
キラーク「そうだな…手持ち無沙汰もなんだから、私は再度パールの部屋を見せてもらいにい
こう」

 しかし、カナートは思い切り空振りだった。バレイに会っても、けんもほろろで取りつくしまもな
い。
 これに反してキラークの方は重要な発見をしていた。パールの部屋の窓からは、パールがい
なくなった作業小屋が丸見えであるということ。また、酒場の常連客によると、どうもパールが
いなくなる数日前から、パールに会いにきていた人物がいたらしい。しかし、それが誰なのか、
どんな人物なのかは分からなかった。

カナート「バレイさん嫌いだ〜」
キラーク「お、帰ってきたか。こっちは収穫があったぞ」
カナート「あの女が何か隠しているのはわかるんだけれどな」
キラーク「ダルメから連絡がまだ入っていないんだが、それまで、パールの部屋で待たせてもら
ってよいか?作業小屋を見張りたい」
DM「では、マスターが許可してくれる。さて、そうして時間も進んで、ダルメの番です。いよいよ
ロッソが動きはじめました」
ダルメ「忍び足を使って追跡です」
DM「(ころころ、成功)。では、ダルメが尾行に入った。ロッソは足取りも荒々しく、不穏な表情
でズカズカあるいていく」
ダルメ「忍び足しなくても、見つかりそうにない雰囲気ですね」DM「ロッソはどんどん歩いてい
く」
ダルメ「ひょっとして、長老がいる建物に向かっているとか?」
DM「そうだね」
ダルメ「…これは私一人だけで付けるのは危険!仲間も呼ぼう!」
カナート「私らは小麦亭にいるぞ」

 一気に緊張が高まる中、ダルメが一行を呼びに行き、準備を整えて彼らは政府に突入した。

DM「では、君たちは政府に再度乗り込んだ」
ダルメ「政府っていうほどでもないでしょう。だいたい、この建物だってそんなに大きくないので
は?」
DM「そうだね。部屋が四つ程度。長老の部屋と応接室に、役人の執務室くらいだね」
ダルメ「長老!長老!」
DM「『ん、なんだね』と長老」
ダルメ「バレイさんはいますか?」
DM「『ああ、いるよ』」
カナート「ダルメ、忍び足で向かうんだ!そして聞き耳だ!」
ダルメ「了解!急いで行きます」
DM「(ころころ)では、バレイの執務室の前まで来た」
カナート「まずは聞き耳だ!」
DM「みんな、シーフじゃないから、むつかしいぞ。(ころころ)うん、それでも聞こえた。執務室
のドアの向こうから言い争う声がする。そして、『うわっ!』と言う声がして、バタンと倒れた音が
した」
ダルメ「嫌な予感がします。倒されたのはどっち?おっと、迷っているヒマはありませんね。踏
み込みましょう」
カナート「部屋に突入!そしてそこにはロッソの死体が…」
DM「いや、それが、案に反して部屋の中にはバレイ一人きりだ。彼女は君たちを見て『何の御
用です?』と」
カナート「一人?バレイさん、この部屋で言い争いがあったような…」
DM「『なんのことかしら。知らないわ』」
キラーク「長老?あなたは誰ががこの部屋に入ったのを知らないのか?」
DM「『いや、私は知らないよ。バレイ長官が誰と会っていてもかまわんだろう、君』」
ダルメ「この部屋から貴女のわめき声も聞こえたんですが」
DM「『私が自分の部屋で何を言ってもよろしいじゃありません?』」
ダルメ「ドスッという変な音もしたんですが」
DM「『あれは、転んだのよ』」
キラーク「苦しい…」
カナート「でも、ロッソの姿は見えないんだね」
ダルメ「死体とか隠せそうな洋服タンスとかあります?」
DM「いや、そういうのはないよ。それより、君たちがわいわいしているとバレイさんが『長老、こ
の犬が私に言い掛りをつけようと、色々と嗅ぎ回っています』と泣き付いてくる」
カナート「犬は嗅ぎ回るものです(笑)」
ダルメ「犬っていわないでください。私はハタカーンです。まあ、不快になったこともありますの
で、ここはとっとと行政府から退散しましょう」

 何やらきな臭い臭いが漂うが、バレイを追い詰めるだけの材料はない。一行は再び調査に
戻る。結構皆ジレてきているようだ。実を言うと今回のシナリオに関しては微調整やアドリブを
ほとんどせずに、事件を流れ通りに起こしてみたのだけれど…やはり、プレイヤーの動きに合
わせないと退屈が発生してしまいますな…。

(5)ロッソはいずこ?

ダルメ「しかし、腹の立つ女ですね」
カナート「私の気持ちがわかったかい?」
ダルメ「分かりましたよ(笑)。この行政府に火をつけて、何もかもオシマイにしてあげたい気も
します」
カナート「(焦)そしてバレイさんが死んだら、この事件は迷宮入りだ」
キラーク「そして我々も放火魔として処刑だな」
ダルメ「う〜ん、仕方がないから放火魔になるのは止めましょう(笑)。しかし、どうします?」
カナート「もう一度ロッソ事務所に行ってみよう。案外、帰ってきているかもしれない」
ダルメ「帰ってきていますかね?」
カナート「案外、元はロッソだった物体となって帰ってきているかもしれない(笑)」

 しかし、ロッソ事務所にはロッソの影も形も見当らない。仕方なく一行は再度〈小麦亭〉に戻り
作戦を練りなおす。やはり、バレイがアヤシイと思った彼らは、行政府、バレイの家、小麦亭の
三ヶ所に散らばり、バレイの動きを監視することにした。そして時間は流れて…

DM「では、時刻も五時を回ったので、お役所は閉まる」
ダルメ「そして、島の人たちが酒場に吸い込まれていくのです」
DM「違う!それはリアルの話!(←現在離島住まい)。エルフラントの人たちはほとんど酒場
にはいかないよ」
キラーク「よく小麦亭が潰れないものだな」
DM「それは、やはりパールの存在があったからだと思うよ」
キラーク「そうか…では、パールがいなくなって、店も寂れたろうな」
DM「いや、今のところ、別に変化はない」
キラーク「どうしてだ?」
DM「そうだね。キラークが見ると、客がマスターに詰め寄っている。『パールちゃん、今日もい
ないの?』」
遠くのカナート「おや?彼らはまだ知らないのか?…これはおかしい。我々が誘拐犯人だという
噂は広まっていると思ったのに」

見張り中ダルメ「そういえば、その割に街の人々も私たちには協力的でした」
遠くのカナート「私たちが犯人だというのは、意図的に造られた噂なのかもしれない」
キラーク「それはさておき、ちょっと気になることがあるから客に尋ねることにする。もしも、の話
だが、この街に酒場がもう一軒できたらどうするかね?」
DM「『酒場がもう一軒?そりゃ、できたら行ってみるが、それはありえないね』」
キラーク「なぜだ?」
DM「『酒が造れるのはマスターぐらいなものだからな』」
キラーク「!ちょっと、マスター、尋ねたいが、パールさんは酒の作り方を知っているのか?」
DM「知っているよ。実は、ダルメに酒の作り方を教えてくれたのもパールさんだった(笑)」
キラーク「なにか、見えてきたな」
DM「とか言っていると、行政府で見張っているダルメは、バレイが出てきたのを目撃する」
ダルメ「では、尾けて行きます」
カナート「家の前で見張っているけれど、こっちには来る?」
DM「いや、来ないね。真っすぐ、田圃の近くの作業小屋に向かっているけれど」
キラーク「酒場から、その様子は見えるか?」
DM「いや、見えない」
ダルメ「また、私一人で追跡か!」

 仕方がない。ハタカーンは〈忍び足〉の技能を持っているから、自動的に追跡はダルメの役目
になる。まあ、犬というものは嗅ぎ回るものだということもあるけれど(ダルメ「犬じゃないですっ
て」)。

DM「では、バレイは田圃の横の作業小屋まできた。そして、田圃の傍に立つ。何か体を動か
すと、ドサッという音がした。そして、バレイはスタスタと去っていく」
遠くのカナート「インビジビリティでロッソの体を消して、フローティング・ディスクの呪文で運んだ
ってか?」
ダルメ「なるほど!バレイが密室で叫んだのは、呪文をロッソにかけたというわけですね!」
DM「さて、そういっていると、田圃の奥から何かズルズルという音がした。そして、何やらもの
を引きずる音がする。稲の間に何か長いものがのたうっているよ」
ダルメ「ま、まさか!田圃ワーム!それが何者か、判別できます?」
DM「いや、君では無理だね。カナートじゃないと」
ダルメ「どう考えても私一人では絶対的に不利なので、カナートとキラークを呼びに行きますよ」

 単独行動は死につながる。これはD&Dにおける鉄の掟である。賢明にダルメは二人を呼び
に行った。このゲーム、義侠心はまず自らの首を絞めることになる。ヒロイック全盛のこの時
代、こういう姑息なゲームの存在がとても嬉しいというか、貴重というか(笑)。

DM「では、バレイの家の近くで張っているカナート。しばらくするとバレイが帰ってくる。そしてし
ばらくするとダルメもやってくるよ」
カナート「奴が来たということは何かあったな」
ダルメ「大変です!カクカクシカジカで、こんなことが!」
カナート「よし、私には全て分かった(笑)。まずはキラークを呼んで、現場まで行くぞ!」

 一行は慌てて田圃の中へ突入した。何かが引きずったような跡を着けていくと、そこには大
きな穴が開いていた。

カナート「こういう、大きな穴を開けるようなモンスターで、田圃に住んでいるような奴に思い当
る?」
DM「思い当る、でやるなら、知力にマイナス10でチェックしてみて」
カナート「マイナス10!(ころころ)おっ、大成功(←1を出した)」
DM「では、完璧に分かる。それは、フィルスネイカーと呼ばれる人食いワームだ」
キラーク「この穴にそいつが潜んでいるわけか。迂闊に近付くと危険だから、クォーレルを穴に
打ち込んでしまおう」

 キラークは魔法のクォーレルの矢を持っていた。さすがにこれは強力で、堪らずフィルスネイ
カーは飛び出してくる。そこをザクザク切り刻んで、あっさりと怪物は片付いてしまった。

カナート「こいつの腹の中に、きっとロッソさんの死体が…いや、止めておこう。見たくない
(怖)。」
キラーク「一応、こいつの巣の中を見ておきたいが」
DM「(ころころ、ぉっ、1)では、キラークにはふとピンとくるものがあった。この穴の下に、建物
があるみたいだ」
キラーク「なんだと!」
カナート「こんな所に!新しいパターンだ。今まで見たことがない(笑)」
ダルメ「何が隠されているんですかね?」
カナート「それをこれから我々が探り当てないといかんというわけ。そうだ、この発見を我々だ
けに止めておいては、危険ですから、酒場のマスターにも来てもらいましょう。誰か、ちょっと呼
んできてください」
ダルメ「では、私がちょっと行ってきます」
DM「しばらくするとマスターがやってくるけれど」
カナート「マスター、これこれこういう訳で、田圃の下に建物があるみたいです」
DM「ではマスターは『なにい!なぜ、そんな所に?』と驚きます」
カナート「それを我々も調査したいんですが、今の我々は疑われています。特に食料長官のバ
レイさんが危険です。ここを調査している時に、見つかって何か言われても嫌ですから、マスタ
ーがバレイさんを引き止めておいてください」
DM「『引き止めるといっても、どうすればいいんじゃ?』」
カナート「酒場にでも呼んで、パールさんのことを相談したいとか色々話せばいいでしょう。マス
ター、ここはあなたの話術が試される時ですよ」
DM「『う、うむ、分かった』とマスターは頷きます」

 カナートの頭脳プレイにより、バレイの行動は封じられた。本当は、別の入り口から侵入した
バレイ(←ロッソがちゃんと食われたか確認しに来るはずだった)と内部ではちあわせをする予
定だったのだが。予定は未定とはこのことである。

(6)地下の酒場通り

DM「では、今回はオートマッピングだ」



カナート「なぜ、田圃の中にダンジョンが…はっ、まさか、ここから降りていくとフィルスネイカー
の巣があるとか?」
DM「では、こんな部屋に降りてきた。カナートの予想は半分当たり。なんだか、フィルスネイカ
ーを『飼っていた』ような形跡があるよ」
カナート「げっ!部屋ってことは、でも、扉があるわけ?」
DM「あります」
カナート「鍵は?」
DM「かかっていない。ま、フィルスネイカーがドアノブを回して出るとも思えないからね」
カナート「なら、開けてみるけれど」
DM「そこは通路になっているよ」
カナート「???」

 通路を行くと、やがてカウンターのある広間に出た。そこにはグラスや厨房も備え付けられた
空間であった。そしてテーブルに客席も備えられている。

ダメル「は!まさか、これは酒場!」
キラーク「どう考えても酒場だな」
ダルメ「!もう一つ思い当ったんですが、つまり、ロッソの設計に換気装置が必要だったっての
は…」
カナート「地下でも生活するためか!」
ダルメ「な、なんと…くだらん…」
DM「ああ、ここまで来たら、もう全部概要を書いてしまうよ。何しろ、みんなの持っているロッソ
の図面通りだからね」
カナート「しかし、なぜこんなことをして酒場を造ったんだ?」
DM「まあ、敢えていうなら、完成させるまで、皆の目に触れさせたくなかったというわけ」
キラーク「バレバレのような気もするが…そんなこともないか。今まで誰も気付いていないから
な(苦笑)」
ダルメ「!カウンターの中を見てみるけれど、商品は並んでいます?」
DM「いや、並んでいないね」
ダルメ「まだ、開店出来ない状態なんですね」

 一行は一通り、酒場を探索した。そしてカウンターの奥に、縛られて転がされているパールを
発見する。

カナート「パールさん!生きていますか?」
DM「うん、こっちは生きています。原型も留めているから(笑)」
ダルメ「よかった。目覚めが悪くなるところでした(笑)」
カナート「どうして、掠われたんですか?」
DM「『私、脅迫されていたんです。新しく作る酒場の経営に力を貸せと言われていて』」
カナート「それを言ったのが誰で、貴女を掠ったのが誰かもわかっていますが、証拠を掴むた
めにそいつの名前を教えてください」
DM「『はい、食料長官のバレイです』」
キラーク「やはりな。しかし、奴はなぜこんな手のこんだことをしているんだ」
DM「『なんでも、酒場を作って、酒を飲ませてエルフを堕落させるとか』」
カナート「なぬ?同じエルフになんでまた?あ!ひょっとすると、ニュースロイト軍が手を回し
て?」
DM「『そういえば、バレイには、赤いローブの魔術師が付いていました』」
カナート「間違いない!」
DM「とか、なんとか言っていると、ドアが開いて赤いローブの魔術師が傾れ込んでくるけれど
『お前ら、何者だ!』と」
ダルメ「赤いローブですか?」
DM「はい、赤いローブです」
カナート「とにかく、ここは片付けるしかなさそうです(嘆息)」

 戦闘ラウンドに入るものの、所詮魔術師。あっという間にHPを削られ、一行の捕虜となってし
まうのだった。

ダルメ「さて、あなたの名前をうかがいましょうか」
DM「『ふふ、オレはニュースロイト軍の魔術師〈女泣かせのバッカス〉だ』」
カナート「やはりニュースロイト軍ですか。我々はあなたの悪事を掴みましたよ!住んでいる国
は違いますが人間の悪事を見過ごしには出来ない」
DM「『くっ…酒場を作り、グロースパディーを混乱に陥れるという計画が…』」
カナート「あなたはまちがっている!なぜなら、エルフは地下を好まない。相手がドワーフだっ
たらその作戦は通用したかもしれないですがな(笑)」
DM「『ふん、違うわ。聞いて驚くな。この酒場は完成後、地上に浮上することになっているの
だ!』」
一同(大爆笑)
カナート「なんと無意味な!しかし、浮上という部分にちょっと男のロマンを感じる(笑)」
キラーク「しかし、回りくどいことを…こいつも〈女泣かせ〉とか名乗るなら、エルフを片端からナ
ンパしまくった方がよっぽど混乱させられたろうに…」
ダルメ「バレイはあっさりと、この男に引っ掛かったわけですな。まあ、こいつとしては初期の目
的は果たしたんでしょうが」
カナート「よし、キラーク。ドワーフ特製の、臭い布切れで猿ぐつわをしちゃってください」
キラーク「うむ…って、私はそんな臭いものを持っているのか(笑)」
カナート「まあ、そんなの持っているのも変だから、しっかり縛ろう。呪文が使えないように、親
指同士を繋ぐ縛り方で」
DM「それは、もう逃げられない」
ダルメ「やれやれ、これで一応片付きましたが」
カナート「まだだよ。バレイさんが残っている。あの女は私が片付けちゃっていいですか?
(笑)」

 バレイに悪印象のカナートが徹底的にバレイを叩きつぶすことを提案し、皆は素直にそれに
従った。〈女泣かせのバッカス〉を連行し、酒場でマスターと話し込んでいるバレイを急襲したの
であった。

(7)口説かれた女

カナート「バーンとばかりに〈小麦亭〉に突入」
DM「酒場ではマスターがバレイと話し込んでいるけれど」
カナート「おやっさん!パールさんを取り返した!犯人はその女だ!取り押さえてくれ」
DM「パールさんも連れてきているんだよね?じゃあ、マスターがカナートの言うことを聞いてく
れたかどうか、魅力でチェックしてみて」
カナート「(汗)私は魅力チェックに成功したのはドライアードの時しかないんだけれど…(ころこ
ろ)おお、成功!」
DM「ではマスターは『分かった!』と言っていきなりバレイにタックルをかます。不意を突かれ
てバレイは床に転がった」
キラーク「今だ!取り押さえろ!」
DM「じゃあ、あっさりバレイは取り押さえられる」
カナート「ナイスおやっさん!…そういや、おやっさんの名前をしらんかった(笑)」
DM「マスターにはちゃんとスキナーという名前があったんだけれどね(苦笑)。それはともかく、
バレイは捕まりました。実はこの人、地位は高いがレベルはさして高くないのです」
カナート「おやっさん、そのまま押さえ込んでおいてください!」
DM「『し、しかし、これはいったいどういうことなんだ…』」

 パールとバレイから聞き出した事件の全貌は以下の通りであった。エルフラントの撹乱を目
指す〈女泣かせのバッカス〉は、まず食料長官のバレイを口説いて手下にした。そして、エルフ
ラントの豊富な米を使って酒を作り、エルフ達を堕落させようとした。しかし、そのためには米を
他国に分け与えるようなことをされては困る。だから、ノルキスタンへの穀物輸出を拒んだので
ある。

キラーク「それで、パールさん誘拐の罪を我々に着せようとしたってわけか」
DM「その通り。また、酒場で売るための酒が必要だったけれど、杜氏がいないもんだから、酒
の作り方を知っているパールを誘拐して、無理遣り酒を作らせようとしたってわけ。パールはそ
んな汚い計画には参加したくないと拒んだので、無理遣り掠われたってわけだ」
ダルメ「なるほど。しかし、ここにもニュースロイト軍が手を出しているとなると、エルフラントも決
して安全ではないですね」
キラーク「もっと、人間に対して警戒するような国になって欲しいな。早速、このことを長老に具
申するとしようか」
カナート「いや、それよりもっと直接的な方法がある。マスター、街の人たちを広場に集めて欲
しいのですが。この街にも広場はあるでしょう?」
DM「ちょうど、政府の建物の前が広場だけれど」
カナート「では、そのように手配してください」

(8)大演説&大団円

DM「では、グロースパディーの人たちがつぎつぎと広場に集まってきました」
カナート「まずは、パールさんに事情を話してもらいましょう。パールさん、あなたの身に何が起
こったか話してください」
DM「ではパールさんが自分の身の上にあったことを話してくれる。ニュースロイト軍が魔術師
を派遣して、エルフラントを混乱させようとしていたこと。その関係で自分が誘拐されたことなど
を話してくれる」
カナート「この通り、人間は卑劣な存在です!人間など当てにせず、隣のノルキスタンと手を結
ぶべきです」
DM「では、みんな『そうだ、その通りだ!』と首肯く。長老も『やはり、今後はノルキスタンに頼
らねばならんな』と発言します」
キラーク「なんの、我々こそ、食料面でお世話にならないと」
DM「『うむ、近いうちにこちらからも使節を派遣して、正式に同盟のことについて協議しよう。こ
ちらも協力するが、そちらにも協力してもらわないといかんからな』」
ダメル「と、おっしゃいますと?」
DM「実は、エルフラントには軍隊が無いんだ。住民が全員1LV以上のエルフだけれど、訓練
されているわけではないからね」
ダルメ「それでも、全員が一度にマジックミサイルを唱えたら凄いことですよ(笑)」
キラーク「その辺は、また総統に相談して、軍事顧問を派遣してもらわないといかんですがね。
このエルフ達をまとめあげる存在が必要だ」
カナート「言っておくが、私は二度とこんぞ、こんな国は」
DM「人々の間からはノルキスタンを讃える声が口々に挙がっています」
カナート「予想以上の成果になったな…は!まさか、これも総統のお告げ通りってことか?
(笑)」

 課程はともかく、結果としては実にうまく言った。さすがに、狂気の神のお告げは抜群である。
万事がうまくいった。この後は事後処理となる。テロ犯人のバレイとバッカスはエルフラント政
府に引渡し、前回捕まえた水色のヘルメスともども交渉の切札として使うこととなった。その代
わりに一行は魔法の品々や割り増ししてもらった報酬など、莫大な財貨を受け取ることになっ
た。つまり、完璧な成功という奴である。
 そして、一行はエルフラントを経ち、ノルキスタンに戻ることになる。だが、忘れてはいけない
ことが一個ある。それは、ノルキスタンに帰るためには、エントの門を通らないといけないという
ことである。

DM「では、荷車に米が次々と詰まれるよ」
カナート「私も乗せるスペースを作っておいてくれ(焦)!」
ダルメ「おお、そうでしたね。どうですか?大仕事も終わったことですから、木の中で安楽に暮
らすのもよくありませんか?」
カナート「いやじゃ!くそ〜、インビジビリティの呪文を覚えて、消えて通り過ぎようか」
キラーク「山越えするという手はどうだ?」
カナート「あ、それ賛成!」
キラーク「一応、聞いておくが、DM。山越えの場合、エンカウントはあるか?」
DM「あるに決まってんじゃん。(ルールブックをめくる)お!すごい!d6で4、5、6が出たらエ
ンカウント発生だ!」
カナート「山越えは止めましょう。みんな、私を守ってね!一応、隠れていくから」
DM「じゃあ、エントの門を通るでいいのかな」
カナート「それでいいです。それに、早く帰らないと、ノルキスタンの皆が餓えているかもしれま
せん」
DM「では、エントの門までのエンカウントチェックを(ころころ)。はい、何も起こらずエントの門
まで帰ってきました」
ダルメ「緑っぽい女は出てきますか?」
DM「そりゃ、出てきますわ。君たちの目の前にドライアードさんが登場だ。『あら〜、帰ってきた
わね。待ちかねたわ』」
ダルメ「ところが…」
DM「『あら、一人いないわ。あのエルフはどうしたの』」
ダルメ「ええん、ええん、かれは、おなくなりに、なられました(棒読み)」
一同(爆笑)
キラーク「彼は死んでしまったんだ。あっけないもんだ。約束を守れなかったことを残念がって
いたよ」
DM「『ええ、そうなの。せっかく、この木のうろに入って、三食昼寝付きの生活をしてもらおうと
思ったのに』」
キラーク「我々は通してもらえるんですかな?」
DM「『仕方ないわ。約束していた人が死んでしまったのなら』」
ダルメ「約束…と、いうことは、ドライアードは約束どおり、誰かを捕まえたんですか?」
DM「そういうことだね。ま、君たちに道を教えたオークが捕まったとでも思っておいて」
ダルメ「彼か!美形でもなんでもないのに、いいんですか?」
DM「まあ、カナートを捕まえるためには、誰でもよかったということにしておいて(笑)。そして君
たちは無事にエントの門を突破したのです」

 やっと帰ってきたノルキスタン。久しぶりに訪れるケガワント。予想どおり住民は餓えていた。

ダルメ「食料を持ってきましたよ〜」
DM「ノルスキタンの住民が一度に荷車に集まってきます。『なんだ!この白い粒粒は!』と」
カナート「それは、私が後で食べ方を教えてあげます。でも、まずは総統に報告ですな」
DM「総統も群衆に交じって君たちに近付いていますよ」
キラーク「おお、総統!この通り、大成果ですぞ」
DM「『すばらしい!まさか、君たちが生きて帰ってくるとは思わなかった』」
カナート「ちょっと待てい!なんですか、総統。それは、我々を信頼していなかったということで
すか?」
DM「『いや、君たちが発ってから、君たちの身に危険が起こったというお告げがあったもので
な』」
ダルメ「ああ、たしかに危険でしたとも!しかし、それを乗り越えて、この成果です」
キラーク「この通り、エルフラントから親書を預かってまいりました」
DM「では総統は受け取って読み始める。『つまり、我々は奴らに力を貸す。奴らは我々に飯を
食わせるというわけだな?』」
カナート「その通りです。総統、あなたは物事の本質をよく捕らえている(笑)」
ダルメ「本質に迫りすぎたから『米、くれ!』なんていう親書ができたんですな(笑)」
キラーク「そのまま別の次元にいってしまいそうな総統だな。いや、狂気の神の信者だからこれ
でいいのか(笑)」
カナート「ところで、総統。我々に報酬のほどを」
DM「うむ、宝物倉の中から、適当に三つ持っていけ」
カナート「適当ってことは、またランダムですか?」
DM「その通り!」

 こうして、ランダムにアイテムを出した結果、彼らはロープ(クライミング)、ノーマルソード(+
1ソード・アンデッド+3)、リング(プロテクション+1)を手に入れた。毎回結構なアイテムを出
しているが、彼らは金より魔法のアイテムを欲しがるので、結局こうなる。その代わりレベルは
なかなか上がっていかないのだが。

キラーク「なかなかのものが手に入ったな」
DM「君たちはお金より、品物を欲しがるからね」
カナート「おおっ!やっとLVが4になった!」
キラーク「私も5LVだ」
カナート「こ、このドワーフ!」
ダルメ「いや、こっちもなんとか5LVです」
カナート「そっちもか!エルフは成長遅い〜」
DM「まあ、キャンペーンはまだまだつづくのでご安心ください(笑)。こうして、二話にまたがる
エルフラント編が無事に終了しました。では、皆さん、また別のシナリオでお会いしましょう。こ
のメンツとは限りませんが(笑)」

(続く)