キラーク
カナート
ダルメ
種族:ドワーフ
種族:エルフ
種族:ハタカーン
HP:28 AC:1
HP:14 AC:1
HP:24 AC:5 

(1)ハタカーン登場

DM「さて、今回はまたメンツが違うぞ。新メンツから紹介といこうか」
ダルメ「ハタカーン一族のダルメ・シアンです」
キラーク「それだけか?」
ダルメ「うーん、他に何を言えばいいですか?」
DM「自己紹介だから、好きに紹介してくれてもいいよ。自分の嗜好を紹介するとか」
ダルメ「性的嗜好でも?」
DM「(苦笑)性的嗜好でもいいよ。なんだい、オランダ製のいかがわしい人形が好きだとでも
言うの?」
一同「(爆笑)」
ダルメ「それは絶対にないです(苦笑)」
DM「じゃあ、なんか冒険の目的とかないの?」
ダルメ「そうですな。まあ、失われたハタカーンの名誉を取り戻すとでもいいましょうか」
DM「では、次」
カナート「エルフのカナート・シール君です。非常におとなしいエルフなので、前線に立たせたり
しないように」
DM「これ!」
カナート「だってHPが14しかないから。おとなしくしておきたい(笑)」
キラーク「そうはいかん」
カナート「まあ、体力もないので、なるべく後ろで大人しくしておきたいです。殴るのはドワーフが
いるじゃありませんか」
DM「では、ドワーフの紹介いってみようか」
キラーク「うむ。ドワーフのキラーク・カビ。ドワーフの世界では由緒正しいカビ家の末弟だ」

 こうして、三人の自己紹介が終わる。本当は今回、もう一人参戦のはすだったのだが、急な
事情で欠員。もちろん、NPCで不足を補うような優しいDMであるわけもなく、三人パーティーで
シナリオ開始と相成ったわけである。

(2)米ほスィ〜

DM「では、今回初めての人もいるので戦況を説明しよう。君たちが入るのはニュースロイト島
という大きな島です。ここはスロイト王国の人間たちが植民した島で、島の大部分が人間によ
って支配されています。北部の一部をノルキスタンというデミヒューマンの国が支配していて、
そこに君たちは所属しています」
カナート「もちろん私も所属しています」
DM「もう一個、エルフラントというエルフの国があるんだけれど、なぜかカナートはノルキスタン
の住人なのです(笑)。そして、このノルキスタンは人間の国ニュースロイトと激しく争っている状
態です。しかし、ノルキスタンは土地が痩せていて食料も不足している状態。慢性的な食料不
足に悩まされています」
キラーク「食物といったらモヤシばっかりだがな」
DM「何を言うんだ。前回(第二話)、バンブー島からダイズを輸入することに成功したじゃない
か」
キラーク「結局モヤシの原料に過ぎないではないか」
DM「だって、ダイズで食べるより、モヤシにして食べた方が質量が多いじゃないかね(笑)。ま
あ、こんな状態なので、食料不足は深刻なんです。そこで、土地が豊かなエルフラントから食料
を仕入れることになったのが、今回のシナリオの始まりです。そして皆さんはノルキスタン総統
のレザー・ハーンの元に集められています。総統は頭にターバンを巻いたノールです」
カナート「おっ、狂気の神を信仰している総統(笑)」
ダルメ「きょ、狂気の神なんですか!」
キラーク「この総統のせいで前回私はひどい目にあった」
DM「総統は君たちを見回すと『よくぞ集まってくれた、我が精鋭たちよ。君たちを特命大使とし
てエルフラントに向かわせれば万事が上手く行くと神のお告げが出たのだ』と」
カナート「総統、思い切り、中身は省略したお告げですね(笑)」
DM「『うむ、狂気の神ラニヴォラスがそう思召しなのだ』」
ダルメ「すごいお告げですな」
カナート「それで、具体的にはどうすればいいんですか?」
DM「『なに、簡単なことだ。君たちがエルフラントに行って、この食糧難を解決するように動け
ばいい』」
カナート「どのように具体的に動けばいいんですか(苦笑)」
DM「『仕方がない。そこまでいうなら分かりやすく説明してやろう』と言って、総統は地図を出し
てきます」
カナート「ここまでいわんと説明してくれんのか!…あ、いえいえ、総統、ありがとうございます
(笑)」
DM「では、総統は説明を始めてくれる(笑)。ノルキスタン、エルフラントの二国とも北の方にあ
るんだが、エルフラントは地熱の関係で気候も温暖なのだ。また、灌漑が発達していることか
ら、エルフラントでは稲作が盛んである」
カナート「稲作っつーことは田圃があるのか!エルフは米を食っているのか!」
DM「『先日、エルフラントから来たものが米を持ってきたのだ。見よ!この白さを!』」
ダルメ「米の白さは分かりましたけど、なんで食料が炭水化物ばっかりなんですか?肉とかな
いの?」
DM「肉はご法度だ。共食いになる危険性があるから(笑)」
ダルメ「なるほど。しかし、この寒いノルキスタンの土地で米が出来ますかね?」
DM「『何を言う。エルフラントから買い付けするに決まっているじゃないか』」
ダルメ「なるほどなるほど。して、その代価は?」
DM「『五千gpの宝石を用意するから、これでなんとかしてくれ。もしくはマジックアイテムを二つ
渡すから、それでなんとかしてくれてもいい』」
ダルメ「どんなマジックアイテムなんですかね?」
DM「それはわからない」
ダルメ「なんで!」
DM「だって、この総統はシャーマンだもん(笑)。マジックアイテムの価値はわかんないの
(笑)」
ダルメ「さすが狂気の神!」
カナート「う〜ん、ここはマジックアイテムを借りておいた方が得策でないかな?交渉は我々手
持ちのお金でもなんとかなるかもしれないし、凄くいいものが出ないとも限らない」

 カナートの提案にしたがって、ここはマジックアイテムをもらうことにした。ランダムに選択して
みると、出たのはファイア・レジスタンスリングとノーマルソード+1。まずまずのものが出たとい
うべきである。

キラーク「この国にいる限りは、この品物がどんなものか鑑定できないというわけだな」
DM「『エルフに鑑定してもらえばよかろう』」
キラーク「そんなのか!このままだと人間との戦いはますます不利になるぞ」
DM「『だから、君たちが頼みなのだ。エルフラントから食料が輸入でき、国交も開くことができ
れば、ニュースロイト軍との戦いは有利になる』」
キラーク「ところで、わが国とエルフラントとの国交はどんな状態だ?」
DM「現在は互いに無視しあっている状態だ。エルフの国と、その他のデミヒューマンの国だか
ら仕方がないけれどね」
キラーク「これは、我々ごときで太刀打ちできる問題なのか?」
DM「大丈夫。君たちレベルがノルキスタンでは屈指の精鋭だから。言ってしまえば君たちが頼
みの綱(笑)」

 そして彼らは旅の支度を始める。米を載せるための荷馬車を手配し、必要な装備等を買い
整える。そして、彼らはいよいよエルフラントへ向けて出発するのだ。

(3)エントの門

ダルメ「エルフラントにはどのルートで入るんですか?」
DM「総統が説明してくれる。エルフラントは全体を急峻な岩山に囲まれていて、外部との交渉
はほとんどない。ノルキスタンからは〈エントの門〉と呼ばれる回廊状の森が唯一の通路だそう
だ」
カナート「しわしわの木製じーさんとかいるのかな」
DM「木製じーさんもいるけれど、メインは木っぽい女らしいよ」
カナート「ドライアードか…」
キラーク「チャームされて木に引きずり込まれてしまうぞ(苦笑)」
ダルメ「総統!安全にエントの門を通る方法はないのですか?」
DM「『山越えで行くという方法があるが、ドライアードは避けられても、他の危険なモンスターに
出会う可能性があるな』」
キラーク「それでは、エントの門を通るしかないようだな。今の時刻は?」
DM「まだ朝だよ」
カナート「悩んでいても仕方がないから出発しよう。DM、エルフラントまではどのくらいの距離
かな?」
DM「そうだね。今、君たちのいるケガワントから、エントの門まで一日。エントの門を過ぎると、
エルフラントの首都である〈グロース・パディー〉まで一日というところだ」
ダルメ「上手くいけばそこまで二日で着けるわけですね。その道程は平坦ですか?」
DM「平坦だよ。あまり人通りがないから小道だけれどね」
カナート「よし、とっとと出発しますよ、皆さん(←やけに低姿勢)」

(4)門前交戦

ダルメ「出発しました」
カナート「キラークを先頭に出発だ!」
キラーク「なにい、私か!」
カナート「ドワーフなら当然(笑)」
DM「出発した?では、エンカウントチェックです。d6を振って6が出たらエンカウントね。では、
一日目の午前(ころころ)。では、午後(ころころ)おおっ!さっそく戦闘だね」
ダルメ「いやいや、その6は実は幻覚で、神の見せる仕業です(笑)」
DM「んなわけあるかい!(ころころ)おっ、では、君たち目の前に…」
カナート「立っていたのが女だったら、私は速攻で逃げるぞ!(←以前、メデューサに酷い目に
合わされた)」
DM「いや、男だよ。『へへ、クソどもがやってきた』と、敵対意識バリバリです。そして彼はグニ
ャグャと虎の姿に変わっていく。いわゆる、ライカンスロープという奴だ。変身後には、魔法の
武器か銀の武器でしか傷つけられないよ」
カナート「お前、勝手に変身するな(苦笑)」
DM「そうもいかん(笑)。そして、ここからが肝心だ。ライカンスロープに傷つけられると、ランカ
ンスローピィという病気に感染する。そして、君たちデミヒューマンがこの病に感染すると死んで
しまうのだ」
カナート「なんでそんな奴ばっかり!」
ダルメ「その病気は、かかったらすぐに死んでしまうわけ?」
DM「いや、潜伏期間があるから、その間に治せば大丈夫だよ。君たちには強い味方の総統も
いることだし」
カナート「またか!また我々そんなのか!」
DM「では、戦闘開始だ!」

 いきなり、ライカンスロープのワータイガーとの戦闘が始まった。HPの高いキラークを盾代わ
りにして戦闘は展開する。カナートのマジックミサイル、キラークの持っている+1ソードを中心
にして戦闘は展開。そこそこ苦戦の末にワータイガーを打ち破る。

DM「では、ワータイガーは倒れた」
ダルメ「しかし、エントの門にも辿り着いていないのにこの損害…」

 こういうことはD&Dではよくあること。運&不運で決まる要素も高いから仕方がない。だから
こそゲームになりうるのだけどね。

DM「では、夜になりました。野営の順番を決めてね。もちろん、エンカウントチェックはするか
ら」
カナート「もうマジックミサイルは打ち止めだよ」
ダルメ「きちんと寝ないと呪文は回復しませんよね?」
DM「そうだね。だから、呪文使いは始めか終わりの当直をお薦めするよ」
ダルメ「じゃあ、私は先に当直します」
DM「(ころころ)おや、6が出たね」
カナート「DM、それは森の暗闇が見せた幻です(笑)」
DM「はい、そんなわけもなく(ころころ)、モンスターが二体出ました」
ダルメ「カナート、起きて起きて、そして判定してください」
カナート「う〜ん、なんだ?ジャイアントでも出たかい?」
ダルメ「まずは判定、判定!」
カナート「陸に揚がったマーマンとかだったら簡単にボコボコに出来るのに(笑)。(ころころ)う
ん、成功だ」
DM「では、ジャイアント…」
一同(………)
DM「ジャイアント・イーゼル。巨大イタチだね。体長二メートルの大イタチで、一度噛み付くと、
相手が死ぬまで噛み続けている恐ろしいイタチだ」
カナート「相手はやる気かい?」
DM「うん。こいつは傷ついた獲物をいたぶるのが大好きだから、昼間の戦闘で傷ついた君た
ちは格好の相手だ」

 いきなり二連続の戦闘である。そして、ジャイアント・イーゼルとの激戦が始まる。なにしろ昼
間のワータイガーとの戦いでパーティーはボロボロになっている。死の危険性も間近に感じつ
つ、一行は戦い続ける。

DM「(ころころ)おっ、ダルメに命中」
ダルメ「オー!ノー!」
DM「次のラウンドから自動的に2D4ダメージを食らうよ」
ダルメ「もっとオー!ノー!」
カナート「よくもダルメに!(ころころ)う!」
DM「って1じゃん。自動失敗だな」

 こんなメチャクチャな状況ではあったが、なんとか、一人の死人も出さずに巨大イタチを撃破
することができたのであった。その代わりダメージの量はとんでもない。ダルメのHPは見事に
一桁に突入。

DM「いや〜、初っぱなから白熱しているね」
カナート「イタチにここまでやられるとは…」
DM「動物といえども結構強いですからな。さて、死闘の末に朝になった。少し遠くに、こんもり
とした森があるのが見える」
ダルメ「あれがエントの門ですな」
キラーク「気分はすすまないが行くしかないな」
DM「では、またエンカウントだね」
キラーク「DMの気分で、そのエンカウントはなかったことにならないか?」
DM「こら!志が低いぞ、君たち」
ダルメ「我々の志は生き残ることにあります」
DM「そうはいかん!(ころころ)では、エンカウントはなかったけれど、固定エンカウントがあ
る。君たちの目の前に、エルフの格好をした緑色の女が姿を表したぞ」
カナート「目を逸らしましょう(焦)」
ダルメ「それは、もしかしてドライアード?」
DM「それは、カナートが直視してみないと(笑)」
カナート「見たくないところですが…(ころころ)うむ、成功」
DM「はいはい、では、それはドライアードだね。では、ここで全員魅力チェックしてみて。ちなみ
に、成功すると危険だよ」
キラーク「なぬ!まずい!私の魅力では(ころころ)成功…」
ダルメ「そんな!(ころころ)あ〜成功…」
カナート「ここはバカっぽく見せるために鼻をほじります!そして(ころころ)あ〜、なんでだ!」
DM「うむ、魅力チェックは全員成功だね」
カナート「しまった、バカっぽいところがウケてしまった…」
DM「では、ドライアードがニコニコしながら話し掛けてくる。『あらあら、皆さんお揃いでどこ行く
の?』」
カナート「黙れ、ミドリ女」
ダルメ「いきなり、辛口ですな(笑)」
カナート「みなさん、いい顔しては駄目です(焦)」
DM「では彼女は、その辺に生えている木を三本指差して『ねぇ、入らない♪』と(笑)」
ダルメ「なんですか!その、連込み宿みたいな勧誘は(汗)」
カナート「いや、でもその通りだ(苦笑)。木に連込まれた奴は三食昼寝付きの生活だ。昼寝で
はなく永遠にお眠りかもしらんが」
DM「『ねぇ、木はいいよ〜。あんたたち、入らない?』」
カナート「もうしわけないですが、先約がありまして…」
DM「『じゃあ、通さない』」
カナート「でも、我々はここを通らないと駄目です」
DM「『しょうがないわね。じゃあ、力付くで…』」
一同「うわ〜」
カナート「ちょっと、待ってください。ここは一つ賭をしましょう。次に通る旅人を貴男が落とすこ
とができたら、あなたの力を認めましょう」
DM「『じゃあ、次に通る旅人が来るまで、ここにいてもらうけれどいい?』」
カナート「いえ、実は我々は、これから南のエルフラントに向かうのですよ。どうせ、帰り道には
ここを通るんですから、その時までに旅人を落としていたらあなたの勝ちということで」
DM「では、それで説得できたか魅力チェックをどうぞ」
カナート「〈説得〉の技能も使うぞ!(ころころ)成功!」
DM「では、ドライアードは『まあ、仕方ないか』と言って木を叩く。『残念だったね。ゴーレムちゃ
ん』と(笑)」
一同「あぶねぇ!」
カナート「もう二度とこの道は通らない!」
キラーク「帰り道は崖コースだ!」

 こうして、辛くも森を突破し、一行はエルフラントに入る。偶然であったオークの狩人に道案内
をしてもらい、歩くこと一日。一行はエルフラントの首都〈グロースパディー〉に到着した。

(5)エルフラントの国

DM「では、広大な田圃が見えてきた。田圃の真ん中に、木々か林立していて、樹上にエルフ
の集落が立てられている(と、言って図を書く)」
ダルメ「不穏な形の畑ですな(DMが書いたのは原発マークもどき)」
カナート「地下から変な放射線が出ていそうですな」
DM「ここがエルフラントの首都のグロース・パディーです」




ダルメ「エルフ専門の街ということは、旅人のための宿屋は存在しないですかね?」
DM「いや、一軒だけあるよ。宿屋はさすがに地面に立てられている。お決まりの通り、酒場と
兼任でになっていて、〈小麦亭〉というのがある」
ダルメ「定番どおり、そこに行ってみよう」
DM「行くの?では、エルフのマスターが酒ビンを磨いているのに出くわす」
ダルメ「ちょっとすみません」
DM「『おや?ハタカーンとドワーフとはめずらしい?』」
ダルメ「あの〜、我々でも泊まれますかね?」
DM「『泊まれるさ。金さえ出せば』」
ダルメ「どうも、泊まれるみたいっぽいですよ」
カナート「そうだな。我々は、米を買い付けにきたんだから、米がどこで買えるかを聞くのがい
いと思います」
DM「では、マスターが教えてくれる。街の真ん中にある建物がこの街の政府で、そこに行けば
いいみたいだよ」
ダルメ「真面目な話、米って売ってもらえるんですかね?我々のような異種族に、大切な米を
売ってくれるんでしょうか?」
DM「『いや、きちんと代価を払えば売ってくれるだろうさ。しかし、最近、水不足で、今後米不足
になる可能性が出ていてね』」
ダルメ「水不足?それは日照りかなんかで?」
DM「『いや、水を供給している水源がどうも変でね』」
カナート「なんなら、井戸掘りに、このドワーフを貸与しますが(笑)」
キラーク「なぬう!私が掘るのか?」
DM「『それはいい!いや、実際この街も困っているんだ。水源地のカナートの村から、ほとん
ど水が流れてこなくなったもんだから』」
カナート「ほ、ほう…なにか聞き覚えのある名前の村…」

 実はこのカナートの村がカナートの出身地なのである。
 カナートの村は井戸の村で、代々村長が井戸を管理していた。しかし、カナートは井戸職人
になるのが嫌で村から逃げ出した。そういう設定を急遽、カナートのプレイヤーとの間で妥結。
TRPGは、こういう即興的な部分も面白さの一つである。

カナート「どうも、私の村でなにかあったらしいですな。気はすすまないですが、放っておいたら
話が進まないので役場に行こう(汗)。こんにちわ〜」
DM「では門番のエルフがカナートの両脇のダルメとキラークを見付け、『おや?なぜドワーフと
ハタカーンが?』」
カナート「いや、実は我々、新しい商売を始めようと思いまして。米を買いに来たんですよ」
DM「『何か証書のようなものはあるか?』」
カナート「一応、ノルキスタンの総統からの親書を預かってありますが」
DM「では、入れ。と通されるよ。そして長老のようなエルフが出てくる。『ノルキスタンからの親
書を預かっていると聞くがまことか?』」
カナート「これでございます」
DM「では、長老は受け取って読み始める『ふむ…米、くれ!とな』」
カナート「なんて書いてあるんですか?」
DM「長老が書状を見せると『米、くれ!』とだけ書いてあるね(笑)」
キラーク「しまった!きちんと添削をするべきだったか(苦笑)」
カナート「総統!あまりに簡潔でストレートな書状です(笑)」
ダルメ「まさか、総統のせいで交渉が全て駄目になるとか?」
DM「いや、さすがにそこまではない。長老は『話は分かった。米が欲しいのだな。売ってやって
もよいが、ちと、問題があってな』と」
カナート「水不足のことですな?」
DM「『うむ、察しが早い。南にあるカナートの村から流れてくる水が次第に少なくなってきて、稲
の生育に悪影響が出ている』」
ダルメ「ひょっとして、それを解決しろと?」
DM「『察しが早いな。カナートの村で何があったかを調査し、解決すれば米を提供しよう』」
ダルメ「どうして水不足になったか、詳しいことは分かってないんですね?」
DM「『うむ、それがな。どうも、カナートの村で井戸が詰まったらしい』」
キラーク「詰まった?井戸が便秘か(笑)。いや、それはともかく、枯れたわけではなかったのだ
な」
DM「『うむ、カナートの村の井戸は特殊な井戸だ(下図参照)。何本もの井戸を掘り下げて水
脈を確保している。だから、普通の者には整備が出来ない。カナートの村には井戸職人のスレ
ッドという者がいるんだが、どうもそのスレッドが、女にうつつをぬかして何もしないらしい』」
 
  ―地面――井――井――井――井―
         |   |   |   |
         |   |   |   |
         ↓   ↓   ↓   ↓
       水脈→


キラーク「長老、そんな不届きな男は解任してしまえ!」
DM「『解任しようにも、後任の職人がおらん。ただでさえカナートの村は、井戸職人を継ぐはず
だった村長の息子が出奔し、人材不足なのだ』」
キラーク「その息子も不届き者ですな。まったく、!」
カナート「いやぁ、村長の息子にも色々事情があったんですよ(汗)」
キラーク「では、その出奔した息子を探せばいいわけか?」
DM「『いや、その息子は井戸の手入れはできんから意味がない。君たちにしてもらいたいの
は、スレッドの説得だ』」
キラーク「しかし、あなたの方からも説得はしたのだろう?」
DM「『したが、奴は言うことを聞かない。そして、一日のほとんどを家の中に閉じこもって外に
出ようとしないありさまだ』」
ダルメ「その女は人間じゃないっぽい!あからさまにアヤシイ!」
キラーク「その女こそ、オランダ制のビニール人形かもしれんな(笑)」
ダルメ「塩化ビニール・ゴーレムかもしれません(笑)。おっと、しかし、そのスレッド君をなんと
かせねばなりませんね」

 こうして、一行はカナートの村に様子を見にいくことになった。カナートとしてはいきたくない村
なのだが、それでは話が進まない。隠密行動をすることを前提としてカナートの村に向かった。
首都グロース・パディーから歩くこと一日。平穏にカナートの村に到着した。

(6)カナートの村

DM「では、カナートの村に着きました。カナートの村はこんな感じです」
 
    
        ■屋敷■
        井   ∨畑
        井   ∨畑  ▲家
 ■屋敷■ 井   ∨畑
        井   ∨畑  ▲家

   ▲家   ▲家


DM「この村は樹上集落ではなくて、地面に家が建っているよ。井戸の周りには麦畑。その周
囲に家が数軒。そして、大きな屋敷が二軒あります」
キラーク「カナートの記憶ではどっちが自宅だったか?」
DM「カナートの記憶では、自宅は井戸に近い方です」
カナート「では、みなさん、私は家にはいけないので、麦畑に隠れています。皆さんの幸運を祈
ります」
ダルメ「あ、そうなんだ。では、我々が行きます」
DM「では、家の前まで来たよ」
ダルメ「コンコンとノックして、呼び掛けますね。すんませーん。我々、首都から長老の使いで来
たんですが」
DM「では、家の中から『とっとと帰ってくれ』という声がします」
ダルメ「うわっ!いきなり拒否られた!ちなみに、ドアに鍵は?」
DM「かかっているね」
ダルメ「仕方がない。ここはカナートの所に戻ろう。カナート、こういう次第で、まったく会えなか
ったんですが、ちょっと近くまで行って、声を判別してもらえませんか。エルフは数百年程度で
は声変わりなどしないでしょう(笑)」
カナート「仕方ないので麦畑に紛れて屋敷に近付こう」
ダルメ「では、再度、コンコンとノックをしよう」
DM「ドアの向こうからは『帰れってのがわかんねぇのか!』という怒鳴り声がする」
カナート「誰の声だった?」
DM「一応、知恵チェックしてみて」
カナート「(ころころ)成功したけど」
DM「では、その声は、カナートの幼なじみのスレッド君だと思った」
カナート「なんで奴が私の家にいるんだ!」
キラーク「お家乗っ取りか?カナートに妹がいて、養子に取ったとか?」
カナート「いや、私に妹はいないよ。しかし、私の親なら養子をとるのはやりかねん(笑)。スレッ
ドの家はいまもある?」
DM「いや、スレッドの家はなくなっているね」
カナート「???事情をききたいが、この村であまり表立って行動するのは避けたい…」
ダルメ「我々も、この姿では、エルフの村でウロチョロできません」
キラーク「もうひとつ、屋敷はあるが、そこはどうだ?」
カナート「…そうだね、そこを当たってみようか。ここには誰がいるだろう」
DM「では君たちはもう一軒の屋敷の前に着く」
カナート「ちわー」
DM「では、ドアが開いて中年のエルフが出てくる。カナートはすぐわかるけれど、君のオヤジ
だ」
カナート「おっと、私はあらかじめフードをすっぽり被っておきますんでよろしく」
キラーク「では、今度は私が。失礼ですが、この村の村長はどちらにおられますか?」
DM「『わしが村長だが』」
キラーク「おや?そうなんですか。しかし、普通村長の家というものは村の中心にあるのに、こ
ちらの家は村外れにあるではありませんか」
DM「『わしの家は元々村の真ん中にあったよ。でも、今はあの家には井戸職人が住んでい
る』」
キラーク「それはなぜです?」
DM「『あの真ん中の家は井戸につながっていて、井戸を管理する役目を担っている。だから、
あの家には井戸を管理できるものが住まないといかんのでな』」
キラーク「しかし、あなたも昔は井戸を管理していらっしゃったのではありませんか?また、どう
して他人に家を譲ってしまわれたんです?」
DM「『うむ…わしの後継ぎの息子が家出をしてしまってな。仕方なく、別の奴を弟子にして後を
継がせたのだ』」
キラーク「しかし、どうも、その人は最近仕事をしていないようですな」
DM「『ああ、そうだ。どこからか女を連込んで、家に鍵をかけて誰にも入れないようにしてい
る。あの家からでないと井戸の内部に入れない。わしが井戸を掃除しようにも、奴が鍵をかけ
て家に閉じこもっているからどうにもならない』」
キラーク「そうですか。いや、実は我々は首都から状況調査に来ましてね。なんかとあの家の
住人に会って、話をしたいんですが。合鍵とかお持ちではないですか?」
DM「『いや、もっとらん』」
キラーク「我々は調査に来たんですが、いかがしましょうか」
DM「『わしが許可するから、踏み込んでもかまわないぞ』」

 こうして、彼らは元カナートの家を調査する許可をもらった。なんともいい加減な話ではある
が。また、井戸職人のスレッドが連れている女は、見たものによって容姿が違うという不思議な
情報も得る。

カナート「では、夜になったら忍び込みましょう。さて、どうやって忍び込みましょうかしら?」
ダルメ「ふふ、私はクライムウォールを持っています」
カナート「なぬ、なぜ僧侶が?」

 今回の選択ルールで、シーフの持つ特殊技能もスキルで獲得できるようにしている。ダルメ
は部分ながらシーフとしての技能も身につけている。オール・デミヒューマンでは、こういう選択
ルールも採用しないと、シーフがいないから致命的になってしまうのだ。

ダルメ「夜になってから、忍び込みますか」
DM「では、時間を夜まで進めていいんだな?それでは夜になったぞ」
カナート「闇に紛れて元村長宅へ。くそ〜、スレッドめ。私の部屋を何に使ってんだ」
ダルメ「ナニに使ってんでしょ(笑)。改造して、回るベッドでも取り付けてあるんじゃないですか
(笑)」
DM「はいはい(笑)、では、屋敷に辿り着いた。屋敷の東側から水が漏れていて、当たり一面
が湿地になっている」
カナート「なるほど、井戸が詰まったせいか。ほとんど壊れた便所だ。さて、この湿地がアヤシ
イけれど、ダルメ君、行く気はないかい?」
ダルメ「ははは、なんか強制的に行かされる前に、引き受けておきましょう(笑)」
DM「湿地といっても、ブレスを吐く恐ろしい怪物が出るわけじゃないんだから」
ダルメ「こんな所でドラゴン出されてたまりますかい!」

 三人はそれぞれ散らばって屋敷の周りを調査しはじめた。ダルメが持ち技のクライムウォー
ルを使って屋敷の壁を登攀してみたが、窓には鎧戸が下りていて内部の様子はうかがえなか
った。キラークは、井戸の周りの地面を色々調べたが、その時に何か変な声を聞く。しかし、こ
の時は、その声が何なのか、それ以上は分からなかった。

(7)水色のヘルメス

キラーク「地下で何かが行なわれているのか?(←鋭い)」
カナート「ダルメの方も手がかりなし?」
ダルメ「壁にへばりつきながら、無かった、と返答」
キラーク「おお、犬が壁を昇っている(笑)」
カナート「結局、手がかりは、キラークの聞いた声って奴だけですな」
ダルメ「その井戸の蓋とかを開けて内部を確認できない?」
DM「井戸にはガッチリと石の蓋がしてある。まあ、三人がかりで全力を使えば動かせないこと
もないかもしれない」
カナート「そういう目立つことはしたくないなぁ。まいった。屋敷には鍵もかかっているし、中に入
ることもできない。そして、私はノックの呪文を持っていない…」
ダルメ「さすがに私も鍵開けはできません。嗅ぎ分けくらいはできますが(笑)」
カナート「仕方ない。私がスレッドと話をしてみましょう。再度ドアをノック。おい、スレッド」
DM「では、ドアの向こうから『帰れって行ったろうが!』と怒鳴り声がした後に、『まさか…お前
はカナートか?』と聞こえてくる」
カナート「そうかもしれませんが、今は違うと言っておこう。ところで、君はうまいところオヤジを
追い出したらしいね」
DM「『何をいう。俺が井戸の手入れができるから当然だ。お前が後を継ぐのが嫌で村を逃げ
出したんだろう』」
カナート「ああ、まったくその通りだ。君が正しい。ところで、最近君は随分いい女を連込んでる
そうだが、どこでそんな女を見付けたんだい」
DM「『ああ、与えられたんだ』」
カナート「誰にさ?」
DM「『煩いな。オレの楽しみを邪魔するな。帰れ帰れ!』」
カナート「あっさり拒否されてしまった。しかし、女を与えられた?なんだ?気になるな?」
ダルメ「私的には彼のお楽しみを壊して差し上げたいので、ドアを壊して踏み込みましょう」
キラーク「まあ、ちょっと待つんだ。ここは先程の村長に、話を聞いてからでも遅くはない」
カナート「私はまたフードを被らないと…」
DM「村長の家に戻るなら戻れるけれど」
キラーク「では、村長に尋ねる。申し訳ない。スレッドとやらが女を連込み始めた時に、この村
に何か変わったことがなかったですか?誰か不審な人物がやってきたとか」
DM「『おお、そういえば一人来た』」
カナート「どんな人物ですか?(←あっ…しゃべった)」
DM「『水色のローブを着た魔術師で、ヘルメスと名乗っておった』」
ダルメ「あからさまにニュースロイトの刺客っぽい魔術師ですね」
カナート「それで、そいつはなぜこの村に来たんですか?」
DM「『なんでも、この村の井戸が見事だから、視察に来たとか言っていたが』」
キラーク「それで、そいつはどのくらい滞在していましたか」
DM「『おや…そういえば、何時だったかな?何時の間にか消えてしまった』」
ダルメ「実は、その魔術師が女だったというオチは?」
DM「『いや、魔術師は男だったよ』」
ダルメ「オカマとかニューハーフとかで女に見えていたとか。見る人によって顔の具合が違って
見えたのは、その日の化粧の調子だったかのかも(笑)」
キラーク「うむ、奴らニュースロイト軍は体を張るからな。よし、戻って屋敷の中に踏み込む
ぞ!」
ダルメ「あ、そういや、この村長はノックの呪文を使えるんですか?」
DM「『ノックか?使えるが』」
キラーク「村長、あの屋敷の鍵を開けてくれんか。裏口の鍵でかまわんから。どうも、この屋敷
になにかたいへんな秘密が秘められていそうだ。いや、別に鍵を開けろというわけではない。
裏口の扉の前で『ノック』と呟いてくれればそれでいい(笑)」
DM「なるほど。では、説得できたか魅力で判定して」
キラーク「(ころころ)成功だ。なにしろ私はカビ家の御曹司だ(笑)」
DM「では村長は『ちょっと待っていろ』と言って出掛けていく。しばらく経つと帰ってきて『なぜだ
かしらんが、屋敷の裏口の扉が開いてしまったよ』と言う(笑)」
カナート「おや、なんという幸運な偶然もあったもんです。と、いうわけで屋敷にゴー!」

 うまいところ村長を言い包め、鍵をあけてもらい、三人は元村長宅に急行した。裏口を開ける
と、湿っぽい空気が辺りに立ち篭めている。ドアを開けた部屋には井戸があり、地下まで深い
穴がつづいている。そして、隣の部屋からは何やら物音が聞こえてきていた。
カナート「剣を抜いて突入だ!」
キラーク「ベッドシーンだったら嫌だな」
カナート「それだとラッキーだ」
キラーク「そんなものがラッキーなのか?」
カナート「だって反撃できないし、不意打ちにもなる」
DM「では、部屋に突入した。部屋は一面水浸しで床には苔が生えている。そして、その上で、
エルフの男がお楽しみの真っ最中だ。奴は素裸で女と絡んでいるが、女はまるで水の固まりの
ように見える。と、いうわけでモンスターチェックをどうぞ」
カナート「おりゃあ(ころころ)!お!1で成功!」
DM「凄い。では、完璧に分かります。この女は水の精霊ウンディーネです。しかし、普通のウ
ンディーネとは少し違っている」
カナート「実は、戦闘能力を大幅に削減したウンディーネである!」
DM「ノン!ノン!その逆!逆に、戦闘能力を大幅にアップさせられている。また、このウンディ
ーネは何者かに操られているようだ。戦闘力は具体的に言えばHD7ってとこ」
カナート「強い!」
ダルメ「そして、術者は近くに見えません!」
カナート「仕方がない。戦うしかないな」

 ウンディーネとの死闘が開始される。カナートのマジックミサイル、キラークのクロスボウがビ
シバシとウンディーネを傷つけていく。ウンディーネも反撃し、ACが紙のダルメに強かにダメー
ジを与える。

ダルメ「死ぬっ、死ぬっ!」
カナート「ダルメを助けるぞ!(ころころ)命中して4点!」
DM「まずい。ウンディーネは戦闘から離脱しようとする」
カナート「そうはさせんよ!」

 HPが一番低いカナート(この時点で14)が果敢にもウンディーネに突っ込む。そしてこの、水
の女は、ただの水となって消え失せたのであった。

(8)スーパーダッチの背後

DM「部屋の隅ではスレッドが、股間丸出しで呆然としています」
カナート「スレッドに私のマントをかぶせてやろう」
DM「『うわ〜、オレの…オレのウンディーネがぁ…』」
カナート「バケモンって分かっていて楽しんでいたのか!このバカ!」
DM「『だって…望めば、自分の好きな形になってくれるんだぜ』」
カナート「うむ、それはいいかも(笑)」
ダルメ「すごいダッチワイフですな(笑)」
DM「『オレの楽しみを奪うなんて…カナート、さてはお前、オレを追い出して、もう一度屋敷の
主人になるつもりだな!』」
カナート「バカぁ!私だってこんな村に帰りたくなかった。私はこの村を出ていった身だからな。
しかし、お前が井戸の手入れを怠っていると聞いたので、これは見過ごせないと思った。私は
村を出ていくから、お前は自分の仕事をきっちりやれ!」
DM「では、たいへんカナートがいい説得をしてくれました。きちんと説得できたか魅力で判定し
てもらおう」
カナート「う…いやな予感が…ここ一番で外す気が…(ころころ)あ〜!やはり!」
DM「では、せっかくのいい説得にもスレッドは耳をかそうとしない。『ちくしょう!お前らのことを
あの人にいいつけてやる!』」
カナート「ん?あの人だと?」
DM「『ふふん、聞いておどろくな。ニュースロイト軍のヘルメス様がオレにはついているんだ』」
キラーク「やはりな。しかし、なんという変態な魔術師だ」
ダルメ「しかし、こういうバカを丸め込むにはいい人材だったかもしれませんな」
カナート「いいか、スレッド。ニュースロイト軍の魔手はエルフラントにも及ぼうとしているんだ。
それに乗せられてどうするんだ」
DM「『そんなわけない。あの人はオレに女をくれたんだ。悪い人のわけがない』」
ダルメ「やれやれまったく、思い込みの激しいバカほど扱いにくいものはありませんな…」

 この後、カナートとスレッドの舌戦が繰り広げられるものの、スレッドを心服させることはでき
なかった。

カナート「仕方がない、取り押さえるんだ、ドワーフ!」
キラーク「私か!よし、では取り押さえて縛る。…スッ裸の男を縛るのか…不気味だな(苦笑)」

 一行はスレッドを取り押さえ、村長の元に引き渡す。そして、再度屋敷に戻り、色々探索す
る。二階からは、色々な女の「型」が発見された。ウンディーネは自由に形を変えられるので、
スレッドはこの「型」で、色々なタイプの女を作って楽しんでいたというわけである。とんでもない
変態エルフである。
 この後も屋敷の探索を続けるが、最後に、井戸管理用の井戸が残った。屋敷の中に設置さ
れたこの井戸は、村にある全ての井戸を管理する管理用井戸である。

キラーク「この底にヘルメスが潜んでいる?」

 まさか、井戸の底に敵が潜んでいるとは思えなかったが、調べないわけにもいかない。そし
て、スレッドが井戸の手入れをしてくれない以上、彼らでなんとかするしかない。
 もっとも、井戸の底に潜るにしても、この日はウンディーネとの戦いでボロボロになっている。
一行は屋敷の中で、井戸を監視しながら休むことにした。すると、夜中…

DM「では、カナートの当直の時だ。ちょっと知恵チェックしてみて」
カナート「(ころころ)成功!」
DM「うん、では、何か魔法の視線が井戸から飛び出して、君たちを監視しているような気がす
る」
カナート「うわっ!秘密を見られた!しかし、これで奴が井戸の底にいる事は確定だ!あれは
ウィザード・アイの呪文だ。奴は私たちから72メートル以内(呪文の効果範囲)の近くにいる
ぞ!」

 その通りである。ヘルメスはまだ井戸の底に潜伏している。実はこのウィザード・アイは彼が
逃亡しようとして、偵察のために飛ばしたものである。一行が村長の家に帰って休息していた
ら、夜の間にヘルメスを逃がすつもりだった。しかし、井戸の周りで休まれたら逃げるに逃げら
れない。しかもご丁寧に、井戸には網までかけて逃亡できないようにされていた(笑)。

 翌朝、彼らは井戸掃除とヘルメス掃討のために井戸の底に下りる。そこは水が流れる地下
通路になっていた。バシャバシャと水の中を一行は進む。

カナート「こういう、狭い通路では、ジェラティナス・キューブが出てくるかもしれない(通路をふさ
ぐ四角いゼリー怪物)」
キラーク「このまま真っすぐいったら村の外に出てしまうのか?取りあえず今は井戸が詰まった
原因を探さないと」
カナート「いけるところまで、いこう」
DM「では、行き止まりになっている。そこで水が塞き止められているね」
カナート「なぜ、塞き止められているんだ?このゲームはエルフはセンス・オーラは使えないよ
な?」
DM「そうだね…あ、でも、考えたら全員インフラビジョンを持っているな。仕方がない。全員、
知恵にマイナス5でチェックしてみて」
ダルメ「(ころころ)成功」
カナート&キラーク「失敗」
DM「では、水が塞き止められた部分の空間だけ温度が違うことがわかる」
ダルメ「カナートの予感があたったのでは?注意してみますが、その空間では、小石が浮かん
でいないですかね?ジェラティナス・キューブの内部に取り込まれた小石が」
DM「ビンゴ!もうわかります。はい、ジェラティナス・キューブが水を堰き止めているのがわか
ります」

 正体が分かれば話は単純である。遠くから矢を射ることで、あっさりとジェラティナス・キュー
ブは滅びた。ジェラティナス・キューブが滅びることで、水の流れもよくなり、井戸の詰まりは解
決した。

ダルメ「しかし、どこかに、ヘルメスがまだ潜んでいるはずです」
カナート「隠しドアとかないか、しっかり見ておこう」
キラーク「岩とかにポリモーフしていても嫌だからな。〈構造物の罠発見〉も活用だな。そうだ、
キューブが居た所の、上の空間を見てみよう」
DM「キューブが居たところの上は井戸になっていて、地上までつづいているよ。もっとも蓋がし
てあるから、ここからは出られない。それはさておき、見上げた縦穴の途中に、なにかゴンドラ
のようなものが吊してあるのが見える」
キラーク「誰か居るとみた」
カナート「ゴンドラを降ろせ!降ろせるかな?」
DM「近くにコンドラを吊っているロープがあるよ」
ダルメ「引っ張れ!」
DM「では、『止めろ!引っ張るな!』という叫び声がしてくる」
カナート「引っ張ってやれ!」
DM「では、ロープを引っ張ると、するするとゴンドラがおりてくる。そして、中には憔悴した魔術
師が一名います」
ダルメ「こいつのローブの色は何色です?」
DM「水色だよ」
ダルメ「こいつがヘルメスですな。とっとと捕らえて縛りますか」
DM「では、ヘルメスは縛られた。なにしろ飲まず食わずで体力を使い果たしていますから」
ダルメ「ふふ、所詮人間なんかこんなものです」
カナート「おっ、その台詞いいねぇ。しかし、なぜこの魔術師はここに居たんだろう」

 そんなにむつかしい疑問ではない。このヘルメスがウンディーネを操って、井戸職人のスレッ
ドを堕落させていたのである。ウンディーネが倒されたので逃げようとしたのだが、一行が井戸
の周りにキャンプを張ったので逃げられなかったのだ。

キラーク「なるほど。ローブが水色だから、水を操る魔術師なわけだな」

 その通りです。名前を出した時点で分かるかと思ったんですが。ヘルメスは惑星で言えば水
星を表すので、水というワードに関連があるのです。

(9)促成栽培

ダメル「では、キリキリとヘルメスを引き連れて首都に戻りましょうか」
キラーク「しかし、カナート、この村はどうするんだ?井戸の継続的な管理ができないぞ」
カナート「私のオヤジがやってくれるよ。まだオヤジにも何年かは生きるだろう。スレッドの再教
育はオヤジにまかせます(笑)」
DM「スレッドは『くそう!カナートめ!お前はそうやっていつも高いところからオレを見下ろして
いるんだ!』と大騒ぎです」
カナート「お前のそんな根性をオヤジに叩き治してもらいます。一応、置き手紙は置いていこう」
キラーク「では首都に向かおう。お二方、安心されい。捕虜の扱いにはなれている(笑)」
DM「ヘルメスは『ひ、ひぃ!』と言って怯えています」
ダルメ「そういや、このヘルメス、外見は年寄りですかね?」
DM「いや、若いけれど」
ダルメ「ヘルメスがエルフラントで用済みなようなら、帰りにドライアードにくれてやるのもよろし
くないですか?」
カナート「それもいい!くれてやれ、くれてやれ!」
DM「(悪魔みたいな連中だな…)」

 帰り道一日。特にエンカウントも発生せず、彼らは首都のグロース・パディーへ帰ってきた。

キラーク「長老に報告しよう」
カナート「ニュースロイト軍がエルフラントを狙っているという我々の憶測を交えて説明しよう」
DM「では、長老は『なぜニュースロイト軍が我々を狙う?我々は何もしていないぞ』と困惑して
いる」
ダルメ「奴らは所詮人間。身勝手な連中ですから」
キラーク「ここの土地はこの近隣で一番肥沃。人間たちが目をつけてもおかしくありません」
DM「『な…なんということだ…わかった。君たちの働きには感謝しよう。今後は我々も、ニュー
スロイト軍の動静に気を配らねばならん』」
キラーク「ここにいる魔術師が、ニュースロイト軍の犯罪を全て知っております」
DM「『では、彼の身柄はこちらに引き渡してくれ。君たちは本当によくやってくれた』」
キラーク「いえ、当然のことをしたまででございます。もし、できれば米を幾らか余分に…」
カナート「キラーク!米なんてどうでもいい。何か魔法の品物をねだるんだぁ!」
DM「なんと、利己的な(笑)」

 しかし、彼らの活躍からすれば魔法の品を出すのも悪くない。一人が一つ、ランダムに魔法
の品物を貰うという条件で、今回の冒険の報酬を妥結した。魔法の品物を貰わないものは三
千Gp。つまり、魔法の品物をもらうと、その分経験点が目減りする。しかし、挑戦者である彼ら
は全員魔法の品物を選んだ。出てきたのはロングボウ+1、メイジスクロール、トラベリングブ
ーツとまずまずの品物が登場。

キラーク「帰る途中で見てみるが、疏水の水量はどうなっている?」
DM「次第に増えているよ。回復しつつあります」
ダルメ「長老、これで私たちに、米を譲ってくれますね」
DM「『もちろんだ。米が出来るまでしばらく待っていてくれ』」
ダルメ「しばらく?」
DM「うん、長老が言うには、ここの米は特殊な品種で、気候と水さえよければ、一週間で発芽
し収穫できるそうです」
カナート「モヤシみたいな稲だ(笑)」
DM「と、いうわけで、君たちは米が出来るまでの数日、引き続きエルフラントにとどまることに
なりました。しかし、その間にもう一つ事件が起きます。取りあえず今回のシナリオはここまで
です」
(つづく)