その二 変態侍登場で候
「うわ〜、助けてっス」
「ちっ、もう気付くとは。おとなしくあたしに付き合えっ」
「嫌っス!まだ地獄の悪魔とランデヴーの方がマシっス!」
「ええい、どうせこれから地獄は待っているんだ!」
そんな詞子で二人が共同水道のところまでやってきた時である。手汲みポンフが数台並んでいる共同の水汲み場の所に、ちょっとした人だ
かりができているのに彼らは気が付いた。
「おい、ランヌ、あれ、なんだ?」
「さあ、生き倒れのように見えますが。おや、あれはサムライの軍服ですね」
「サムライだって?」
サムライという言葉でミリアは思い当たった。三ヶ月前の地獄の飲みくらべの時に最後の最後まで彼女に盾突き、わずか一升ビン一本の差
で破れたサムライがいた。たしかゲンブと名乗っていた。
「姐さん、サムライって、グンフの奴じゃないでしょうか。この街にサムライなんていう変な奴はあいつしかいませんよ」
首を捕まえられていたランヌがおそるおそる口を開く。ほとんどネコみたいだ。
「あれ、酒を飲まないはずのあんたがなんでグンブのことを知っているんだい?」
「なにいってんです、有名ですよ。『ガダルの街のゴミ箱は、ミリアとグンブと下水道』って」
「ほ〜う?なんだとう?」
ドスの効いた声が響き、その直後、見事な背負い投げが一閃した。かなり長い滞空時聞をもってランヌの身体は中に舞った。そしてひたすら
落ちるだけである。ランヌの体はひらひらと宙に舞って、彼は見事に頭から地面に墜落した。石畳の上に鮮血が飛び散る。
「おい、知っているか?命ってのは一つしかないんだぞ」
「ごめんなさいっス…」
ランヌは顔面を朱に染めて怯えながら命乞い。さて、二人がそんな馬鹿をやっている間に野次馬は興味をなくしたらしく次々にと去っていっ
た。
「…ところで…姐さん、行き倒れは…?」
人気の無くなった水汲み場をひょいと覗き込むと、そこには軍服姿の汚い中年が地面に突っ伏していた。ボサボサの、針のように尖った短い
髪型をしており、頭の後ろではヨレヨレのチョンマゲがゴミのように乗っかっている。
「なんだ、やっぱりゲンブですよ。しっかりするっス。なにがあったんで?」
ランヌの呼びかけにも、倒れている男はピクリとも動かない。
「どいたどいた。そんなんじゃ、こいつは起きないよ」
ミリアはランヌを片手で追い払い、グンブの横に立つ。そしてその顔面を片足で思い切り嗜みつけた。ドスドスと踏む。伺回も踏む。際限なく
踏む。
「ちょっ、ちょっと、そんなことしたらゲンブ死んでしまいますよ」
ランヌがあわててミリアを止めようとした時である。ピクリとも動かなかったゲンブの口が動いた。
「ああ…女王様…もっと嗜んでくだされ」
汚い中年面にうっとりとした表情が浮かぶ。
「なっ…なんだと!」
「うっふ〜ん〜こんどはハイヒールでグリグリがいいでござる」
「こっ…この変態!」
ミリアは激怒した。怒りにまかせ、力を込めてゲンブを踏み続ける。
「こらっ!起きんか!変態サムライ!」
「うひょよよよよ、あっは〜ん。三角木馬が欲しいでござる」
「ええい、このクソッったれ!」
「糞ならば浣腸も欲しいでござる〜」
おかしな、しかし何改かセリフに合致した寝言がゲンブの口からこぼれてくる。
「てめえ、ブッ殺す!」
ついにミリアは完璧に腹を立てた。やおら剣をすらりと抜くと、ゲンブめがけて振り下ろそうとする。
「ちょ、ちょっと、姐さん、それはやばいですよ。本当に死んじまいますよ」
「死ぬか死なないか試してやるっ!」
ミリアはそう言って剣をブサリとゲンブの尻に突き刺した。グサッとたしかに手ごたえがあった。たちまち道路の上に鮮血が飛び散り、あたり
が朱に染まる。
「ああ〜ケツにブっさりささって抜けないハイヒール」
いきなりゲンブはうっとりとした表情で喘いだ。嫌な寝言だ。どうも痛覚が他人と違うようである。
「こいつ、馬鹿か?」
さすがのミリアもこれには呆れた。ミリアも相当の馬鹿だが、ゲンブのレベルはそれを遥かに通り越していた。まさしく馬鹿の中の馬鹿。馬鹿
の星。馬鹿の王様、マスター馬鹿という形容詞がフィットする。
「くそっ、むかつく!」
ミリアはゲンブの尻から剣を抜くとその身体を右手でむんずと掴んだ。左手にはランヌを掴んでいる。そしてそのまま二人とも軽々と引きずっ
ていく。少しばかり歩くと市場の東側にある下水道の入り口にと出た。汚水がゴウゴウと渦巻いていて悪臭を放っている。レンガ作りの下水口
は水が流れる度に振動で大きく揺れ、今にも溢れそうなほどの不安定な様子である。
「ちょっ、ちよっと、ゲンブを放り込むつもりですか?」
青ざめた顔をしてランヌが止めた。ミリアは無言でうなずく。
「そりゃ、かわいそうすぎますよ。いくらなんでも今度は死んでしまいます」
「つべこべ言うな。死ななかったらさすがに目が覚めるだろう。そりゃ!」
気合い一発。渾身の力を込めて、下水の中に、左手に掴んでいた貧相な男をぶち込んだ。
「うぎゃあ!姐さん、間違えてまっス!」
「ありゃ?」
何ということであろう。下水の中に突っ込んでいったのはランヌであった。助けを求める声はたちまち濁流に飲み込まれ、その姿も見えなくな
ってしまう。
「しまった。しかたないな。助けにいかなきゃならない。ついでだ、こいつも投げ込んでしまえっ」
ドボンと大きな音がして、軍服姿の変態中年が汚水の中に巻き込まれていく。
「はあ…めんどっちいことになっちゃったなぁ」
ゲンブ、ランヌの二人を下水道に投げ込んだミリアはため息をつきながら二人を回収に下水遺の中に入っていくのであった。
「おーい、ランヌ〜、生きているか〜」
下水道の塞がったところでミリアはさらに奥の方向かって怒鳴った。下水道は街の地下全体にわたって流れており、街の管理人でさえもその
全貌は掌握していない。街の地下にあるもう一つの街といったが適切であろう。
ここには地上で罪を犯したもの、乞貧などが潜り込む危険な場所である。だからここに一度入った者はよほどの腕利きでない限り生還するの
は難しい。だからランヌの生存確率は限りなく低い。
しかしせめて死体くらい回収してやらないと葬式ができない。
葬式ができないと香典がもらえない。
つまりそういう利害が絡んでいるのである。ミリアが善意で動くわけがない。
「なんかもう、面倒くさくなってきちゃったな」
自分でランヌを行方不明にしたくせに何を言うかである。
「ここはひとつ腹ごしらえでもするか」
ミリアは下水道の壁に視線を向けた。そこには大きなネズミ穴がある。
「チュウ、チュウ」
突然ミリアはネズミ穴の中に向かってネズミ語で呼びかけた。頭は悪いが、こういう事はよく知っている奴である。たちまち一匹のドブネズミが
飛び出してきた。
「ヘヘっ、こいつはまた丸々太って美味そうなネズミじゃない」
ミリアはヨダレを流しながら素早くドブネズミを捕まえた。30センチ近くもある大ネズミだ。
ミリアはポケットからマッチを取り出した。そしてそのあたりに散らばっているゴミを集めるとそれに火をつけた。十分な火がつくと含度はその
中に流木を拾い集めて炭を作る。炭が十分に熱くなったところでネズミを入れて焼く。
「さてと、焼けるまでしばらくかかりそうだね」
それでもネズミはすぐに香ばしい香りを立てはじめた。実はミリアは以外と料理が上手い。どんなにまずい材料でも、おいしい科理にしたてあ
げることは出来る。
ならばどうして科理人にならないのかというと、普段使う材料がミノタウロスのしもふり肉とかオークのタンシオ、またはハーピーの肉、ドワーフ
の腕肉のような、材科を知ったら卒倒しそうな物しか使ったことがないからである。つまりは倒したモンスターを食料にしているわけだ。
「さて、もういいかな」
「まてい!」
ミリアがドブネズミを炭火の中から取り出してかじろうとしたその瞬間、突如として下水道の奥の方からでかい叫びが口こえて来た。そして、
軍服を着た汚い中年がこちらの方に向かって突進してくるのが見えた。
「その焼き肉は拙着がいただく!」
疾風怒濤のごとく迫る一人の中年。カタナを構えた格好はまさにカミカゼというにふさわしい。彼こそ究極のサムライマスターであるゲンブで
ある。
「や、き、に、くっ!」
妙に区切った発音でアピールすると、グンアはミリアの持っているドブネズミに突進する。
「おっと」
ミリアはネズミを火の中から素早く拾い上げると、変態の攻撃をサッとかわした。
「このネズミはアタシんだ。あんたみたいな奴にはやらん」
「むっ、ムムムム、拙者の食事を邪魔する貴殿は?」
ヨダレを垂らしながら詰問するゲンブ。それに対峙するのはネズミの丸焼きを庇うミリア。戦士の対決というにはあまりにもマヌケな光景であ
る。
「あたしのことは、ミリアと言ったら解るかな」
ミリアは少し、斜めにむえて格好をつけた。その名を聞いて、こくんとゲンブがうなずく。
「ああ、あの独身生活150年突破のハーフ・エルフだな」
たしかに、グンブは状況をよく理解している。
「なんだと!」
ミリアは怒鳴ってキラリとブロードソードを艘から抜く。するとザッと赤茶けた錆の粉が飛ぶ。剣がボロなためだがかなり格好悪い。
「あんた、一度死んでみるかい?」
ピタピタと剣をグンブの顔につけて脅す。普通の人間はこれでおびえてしまう。しかしゲンブはランヌと違って歴戦の強者である。その実力は
ガダルの街でも一級だ。
彼もスラッとカタナを抜く。サムライらしく手入れがされた見事なものだ。ただ、ナマズ髭の伸びたムサイ中年面には全然似合わない。
「ほおー、本気だね」
「フッ、とにかく、その焼き肉は拙者がいただく。武士の誇りにかけて拙者は焼き肉をいただく」
「しかしね、アタシにプライドがあるんだよ。だから譲れないし、あんたの意見を許す訳にもいかない」
「それは当然のことよ。拙者も貴殿の立場であったなら同じ様に思うであろうからな」
ちょっと聞くと感動的に見えるが、内容は実にいい加減な台詞である。だいたい、焼き肉にかける武士の誇りというものがよくわからない。
「しかし貴殿には甘さがある。拙者はサムライだ。サムライというものは魔法が使えるのだ」
グンブの目が不気味に光った.すると焼き肉がフワリと空中に浮いた.
「念力かっ!」
「そういうことよ」
焼き肉がフワフワとグンブの方に浮いていく。
「まだまだ未熟だな。真の剣士とは常に修行を怠らず、弱点を補強し、状況の判断を誤らず、己の力をよく知り、そして技と力のバランスを保つ
ように…」
「黙れ!」
「ふぎょ!」
突如、ミリアのアッパーがゲンブの腹に決まった。見事に正面からパンチを食らったゲンブはズルズルと崩れ落ちる。そしてミリアは空中に浮
いているネズミの丸焼きをつかみ、ムシャムシャとかじりながらいう。
「アホか。自慢している暇あったらかかってこいっての」
さも美味そうにミリアはネズミをかじった。その足の下では踏みつけにされたグンブがシクシクと泣いていた。
「ほら、シッポぐらいはあげるから元気だしなって」
「婦女に負けた〜」と言っていじけているゲンブに向かってミリアはネズミの尻尾を放った。別に落ち込む必要はない。こんな奴は既に女では
ない。
「か、かたじけない」
ゲンブはネズミの尻尾に飛びつくとそれを貪った。本当にまともなものを食べちゃいない。
「さてと、食べたところでランヌ探しを手伝ってもらうよ」
「ランヌ?ああ、ランヌ・ゼーニッヒのことか?あの、腕は悪い、顔は悪い、頭は悪いという最低の盗賊のことであろう」
「そうそう。感じが悪い、要領が悪い、稼ぎも悪いっていう、どうしようもない奴だよ」
二人とも、本人が居ないと思ってムチャムチャを言う。
「じゃあ、さっきからあそこに浮かんでいるのがランヌではないか?」
ゲンブがネズミの尻尾をかじりながら下水道の一角を指さした。そこには一人の水死体モドキが浮かんでいる。不気味に口を開けて仰向け
の姿勢でランヌが漬かっていた。
「ランヌだ…なんでもっと早く言わないんだよっ!」
「あんなもの誰だって死体としか思わないであるぞ」
ごもっとも。しかしそんなくだらないコトを言っている暇はない。二人はランヌを岸に引き上げ手当を施した。そんなこんなで、ともかくランヌは
助かった。かなりいい加減に息を吹き返し、ランヌは正気に戻る。
「さて、これで丁度よくメンツも三人揃ったし、冒険に出かけるとするよ」
「冒険?」
これまでの事情を知らないゲンブが怪訝な顔。
「そっ、フルーズの洞窟の探索」
今まで寄り道をしすぎですっかり忘れていた。そういえばそういうことをやろうと思っていたのである。
「本当に…やるんですか?でも、もし何もなかったらどうするんです?」
「いや、そんなことはないはずだ」
と言ったのはゲンブである。何やら自信がありそうだ。ゲンブはムサイ中年面でニヤリと笑う。腰に手を当ててナマズヒゲを捻る姿は不気味だ
けで全然サマになっていない。
「あんた、何か情報でもあるの?」
「あの洞窟にはノーム族が住んでおってな。財宝をタンマリとため込んでいるそうだ。拙者が調べた情報によれば、金塊にして六百万ターバ
ル、つまり六千万ゴート銀貨はあるはずだ」
六千万ゴート。それだけの金があれば借金返して宿代払ってホストクラブにも行けてしまう。
「そ、そりゃあ凄い。でも、なんであんたはそれを盗りにいかなかったんだい?」
「それはな、フルーズの洞窟のノームは一匹が兵土十人に相当する強さなのだ。それが三十人もいるのだから、拙者が兵士200人程皮の実力
だからからな。失敗して大失敗をしでかしたことがあるのだ」
しかし、この時ランヌの頭にはある計算が閃いていた。彼はやおら懐より算盤を取り出してパチパチと葎き出した。
[兵士10人相当のノーム×30]=[兵士300人]
[兵士200人相当のゲンブ]+[兵士500人相当のミリア]=[兵士700人]
「なんだ、楽勝じゃないですか」
そう言ってランヌは先ほどの計算結果をミリアの前に出す。
「なんだよ、これ。まるでアタシだけで戦力を支えているようなもんじゃないか」
「結構当たっていると思うんスけど…」
「うむ、拙者もこれで正解と思う」
ゲンブがうまい具合にフォローしたのでミリアは頭をかかえて苦しんだ。しかし、それも僅か。すぐに立直ってミリアはランヌに対して向き直る。
「いっておくが、洞窟探索にシーフは必要だから逃げさせてやんないよ」
ミリアがランヌの衿をむんずと掴んで逃げられないようにする。ランヌは藻掻くがミリアの怪力につかまれては逃げることは不可能である。一
度ミリアは小屋を持ち上げて放り投げるという荒業をやったことがあった。そんな力に対抗できる奴なんているわけがない。
「…に、逃げませんから離してください」
何度も哀願してやっとのことで離してもらえる。
「な、なんという力ですか。普遍、ハーフ・エルフという種族は非カなのに」
「そうだな。拙者もそう聞いている。だいたい拙者はジャポネ族の中ではかなり力がある方だが、その拙者がかなわないとは…」
ランヌとゲンブの二人が感心したような、恐れ入ったような様子でミリアに視線を向けた。なぜかしら結構冷たい。
「う〜ん、そりゃ、アタシの親父がハイパワーだから、多分その血のせいだね」
「どのような方であった?」.
「アタシはお袋がエルフでね。親父が人間なんだが、もう凄いったらありゃしない。戦士、つまりウォリアーってやつで、もうムッチャクチャ強い。
グレートアクスを二刀流で使えるなんて親父くらいしかいないね」
グレートアクスは両手で使うタイプの斧でたいへん重い。それを二刀流で使うとは、どんな親父だ。
「ったく、この親父は酷いもんだよ。親父は15歳の時に親父の親父と、つまりアタシのジジイと、アタシのお袋を取りあって三日三晩の大喧嘩し
て、街ひとつが壊滅したらしいからねえ」
いったい、どんな喧嘩だ。
「で?どうなったのだ?」
「結局ジジイが親父に脳天カチ割られてそれでオシマイだよ。わっはは」
これほど凄い親父が父ならミリアの豪快さも理解できそう、いや、絶対に理解できる。
「あたしのジジイも凄かったよ。12歳でガキつくって、17歳の時に街をひとつ潰して、24歳で大陸ひとつ焦土化させて、剣も魔法も化け物みたい
に使いこなせたんだってさ。案外、どっかで生きているのかもしれないね」
これはもう種族がどうとかの問題ではない。血族の問題である。
「でも、おじいさんは親父さんに殺されたんでしょう?」
「そりゃ、確かに親父はジジイの脳天をグレートアクスでカチ割ったけど、そんなものでジジイが死ぬわけないからね。逆にグレートアクスが曲
がっちまった。しかしさすがにジジイも気絶して一週間はそのままだった。その隙に親父はお袋をかっぱらってハネムーンに出かけちまったと
いうわけなんだね、これが」
もはやランヌとグンブはあっけにとられていた。そりゃそうである。
「結局ジジイは冒険に出たまま行方不明になっちまった。だからヤードじいさんは今でも生きているのかもしんないんね」
「でも、行方不明になったのって100年以上も昔なんでしょう?人間はそんなに生きませんよ」
「別に。アタシの親父だって人間だけれど170歳近いよ」
普遍の人間の寿命というのはあくまでも普通の人間にのみ適用されるもので、カジネット一家には無縁のもののようだ。
「むむ、確か貴殿、ヤードじいさんといったな。まさか、黒博士と呼ばれたヤード・アルのことか?」
再びゲンブの血相は変わっている。彼は変態だが知識はある。そのせいで、嫌なことに思い当ってしまった。知らない方が幸福とはこのことで
ある。
「そういや、ジイさんはヤード・アルって呼ばれてたね」
「き…貴殿はヤード・アルの孫かっ!」
唾を飛び散らせてグンブは絶叫した。ヤード・アル・カジネット。その名は多少でも歴史をかじったことがある人間には有名な名前である。
今より150年前に起こった闇魔術師戦争でフィルデ・ル・ウという魔法使いが起こしたこの戦争は世界のほぼ全土を焦土と化し、三勇者と呼
ばれる王達によってようやく鎮圧されたのである。世界に大きな傷跡を残した悲惨な戦争であった。
このフィルデの盟友であったのがヤード・アルであり、三勇者の一人であるガルメシア王と一ヶ月にわたる激戦を繰り広げたのであった。
伝承によれば、この両者の戦いで大陸が沈み、ガルメシア国王は落命した。その他にも数しれぬほどの死者を出してヤードはやっと退治され
たという。
「…あああ…」
おもいっきりため息をつきながらもグンブはミリアに従ってフルーズの洞窟に向かったのであった。
(続く)その三へ